新規リードスルー惹起物質によるナンセンス変異型筋疾患治療のための前臨床試験

文献情報

文献番号
200833044A
報告書区分
総括
研究課題名
新規リードスルー惹起物質によるナンセンス変異型筋疾患治療のための前臨床試験
課題番号
H19-こころ・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(国立大学法人東京大学大学院 総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 茂(国立大学法人東京大学大学院 総合文化研究科)
  • 池田 大四郎((財)微生物化学研究会 微生物化学研究センター)
  • 高橋 良和((財)微生物化学研究会 微生物化学研究センター)
  • 松尾 雅文(神戸大学大学院 医学系研究科)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,ナンセンス変異型筋疾患治療のためにリードスルー惹起物質を見出し,安全性試験と機能回復試験から新薬を提案することにある。
研究方法
リードスルー活性の定量的検出系として,βガラクトシダーゼとルシフェラーゼの2つのレポーター遺伝子をもつトランスジェニック(Tg)マウスや,同様のベクターを一過的に導入したHela細胞を作出し,薬効評価を効率化した。疾患モデルとしてmdxマウスを用い,生化学的・免疫組織化学的に評価すると同時に運動機能回復試験を行った。またナンセンス変異を有するDMD患者から,インフォームドコンセントを得て筋生検により樹立した筋細胞株も用いた。
結果と考察
ネガマイシンの立体構造に類似した低分子RD2およびRD3は,Tgマウスへの経口投与によってもゲンタマイシンより高いリードスルー効率を示すこと,HeLa細胞の培養系ではAtalurenよりも高いリードスルー活性を示し,ヒト由来細胞においても活性を示すこと,3週間連日投与したmdxマウスでは16-18%の筋線維でのジストロフィン蓄積と血清クレアチンキナーゼ活性の低下を確認し治療効果が認められたこと,体重変化や血清生化学検査では異常は認められないこと等を確認した。SPF施設におけるRD1の単回・反復投与/回復安全性試験では良好な結果を示し,自発的運動量と握力測定では対照マウスとほぼ同等のレベルまでの筋力回復を確認した。また患者由来培養細胞を用いた効果検定においてもリードスルー誘導効果がみられた。未承認アミノグリコシド系抗生物質群からリードスルー惹起物質として疑似二糖類5種を,ネガマイシンの化学構造に立脚した探索から顕著な抗菌活性を示す2種を特定した。これらの構造は毒性を回避する新規ネガマイシン誘導体創製の可能性を開いた。
結論
リードスルー惹起薬物はナンセンス変異の種類とその周辺配列に対する特異性や副作用が異なることが知られており,候補物質は数多く存在した方が治療戦略上有利と考えられるため,今後RD2やRD3の安全性試験を含む有効性についての詳細な検討を進めながらリードスルー惹起薬物候補物質を可能な限り増やすつもりである。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-