文献情報
文献番号
202109003A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模レジストリ・大規模臨床試験の分析による合併症予防に有効な標準糖尿病診療の構築のための研究
課題番号
19FA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
植木 浩二郎(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 野田 光彦(埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科)
- 岩本 安彦(公益財団法人日本糖尿病財団)
- 大杉 満(国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
- 岡崎 由希子(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
- 笹子 敬洋(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
糖尿病の良好な管理により合併症を予防することは、寿命の延長とQOLの維持につながることが期待されるが、合併症予防による医療コスト削減と薬剤費などの医療費のバランスについても検討したうえでの標準治療の策定についての研究は、これまでなされてこなかった。
我々は、J-DOIT3試験において、ガイドラインより厳格な治療を行なうことにより、心血管イベント、脳血管イベント、腎症イベントを抑制することを報告した。診療録直結型全国糖尿病データベース事業J-DREAMSを立ち上げ、大規模レジストリを構築した。更に、他の厚労科研研究班と緊密な連携を取りNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のデータを用いた全国の糖尿病の診療実態に関する解析に着手している。
J-DOIT3のデータを解析し、得られた仮説をより多くの症例の最新の状況を横断的・縦断的に評価できるJ-DREAMSで検証し、更に非専門施設も含めた全国規模の実態を俯瞰できるNDBのデータへと外挿することで、各々の強みを活かしながらより正確な評価ができるものと期待される。
我々は、J-DOIT3試験において、ガイドラインより厳格な治療を行なうことにより、心血管イベント、脳血管イベント、腎症イベントを抑制することを報告した。診療録直結型全国糖尿病データベース事業J-DREAMSを立ち上げ、大規模レジストリを構築した。更に、他の厚労科研研究班と緊密な連携を取りNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のデータを用いた全国の糖尿病の診療実態に関する解析に着手している。
J-DOIT3のデータを解析し、得られた仮説をより多くの症例の最新の状況を横断的・縦断的に評価できるJ-DREAMSで検証し、更に非専門施設も含めた全国規模の実態を俯瞰できるNDBのデータへと外挿することで、各々の強みを活かしながらより正確な評価ができるものと期待される。
研究方法
【J-DOIT3】
腎症・網膜症の発症抑制に寄与する危険因子や薬剤の同定、厳格な多因子介入がQOL、骨折に与える影響などを明らかにする。介入終了後の追跡研究を行う。
【J-DREAMS】
患者の背景情報など、糖尿病標準診療テンプレートを用いて入力し、SS-MIX2標準データ格納システムを用いて蓄積され、多目的臨床データ登録システム(MCDRS)を使用してデータ抽出と送信が行われる。
【NDB】
特別抽出データを解析する環境を整備する。
腎症・網膜症の発症抑制に寄与する危険因子や薬剤の同定、厳格な多因子介入がQOL、骨折に与える影響などを明らかにする。介入終了後の追跡研究を行う。
【J-DREAMS】
患者の背景情報など、糖尿病標準診療テンプレートを用いて入力し、SS-MIX2標準データ格納システムを用いて蓄積され、多目的臨床データ登録システム(MCDRS)を使用してデータ抽出と送信が行われる。
【NDB】
特別抽出データを解析する環境を整備する。
結果と考察
【J-DOIT3】
介介入期間中のサブ解析として、①血糖、血圧、LDL-コレステロール、HDL-コレステロールの全てにおいて、介入期間中の平均として従来治療群の目標値を達成することで、主要評価項目などの発症が抑制されること、②介入開始後12ヶ月のうちに5%の体重減少を認めた群では、腎症・網膜症の発症が少なかった一方、低血糖や骨折などの増加は見られなかったこと、③強化療法群における低血糖は夏場に多く、夏場に改善するHbA1cと鏡面的であること、④介入期間中に低血糖を起こした症例では網膜症の発症が多かったことが示された。
加えて追跡研究では、当初予定した5年間の研究期間が終了したが、適宜住民票照会も行ないながら生死確認を徹底させ、脱落症例を大きく減らすことができた。また入力データに対するクエリも、参加施設に働きかけて多くを解消させたほか、参加施設から報告されたイベントについて、エンドポイント判定委員会による判定をほぼ完了させ、5年目までのデータを用いた統計解析の準備がほぼ整った。
【J-DREAMS】
新規参加施設も含めて全国69施設83000名以上の登録が有る。糖尿病に併存する疾患の横断観察研究を 2016年から各年2020年まで行った。特定の薬剤(GLP-1受容体作動薬)の使用を標識として、細小血管障害だけでなく大血管障害のリスクを多く有する患者を同定することが可能であることが示された。また、24,000人をこす症例から、eGFRの低下と尿アルブミン・尿タンパクの多寡を指標にして、リスク分類することで、血糖コントロールや脂質、血圧などの既存のリスク因子に加えて、慢性腎臓病が大血管障害を併存する危険因子で有ることが示された。
【NDBの整備状況】
厚労科研・山内班「糖尿病の実態把握と環境整備のための研究」と緊密に連絡を取り、取得済みの2014年度度、2015年度分に加えて令和元年度に、糖尿病に関する特別抽出NDBデータを2016年度、2017年度分を取得した。さらなるデータの取得の準備を進めている。
介介入期間中のサブ解析として、①血糖、血圧、LDL-コレステロール、HDL-コレステロールの全てにおいて、介入期間中の平均として従来治療群の目標値を達成することで、主要評価項目などの発症が抑制されること、②介入開始後12ヶ月のうちに5%の体重減少を認めた群では、腎症・網膜症の発症が少なかった一方、低血糖や骨折などの増加は見られなかったこと、③強化療法群における低血糖は夏場に多く、夏場に改善するHbA1cと鏡面的であること、④介入期間中に低血糖を起こした症例では網膜症の発症が多かったことが示された。
加えて追跡研究では、当初予定した5年間の研究期間が終了したが、適宜住民票照会も行ないながら生死確認を徹底させ、脱落症例を大きく減らすことができた。また入力データに対するクエリも、参加施設に働きかけて多くを解消させたほか、参加施設から報告されたイベントについて、エンドポイント判定委員会による判定をほぼ完了させ、5年目までのデータを用いた統計解析の準備がほぼ整った。
【J-DREAMS】
新規参加施設も含めて全国69施設83000名以上の登録が有る。糖尿病に併存する疾患の横断観察研究を 2016年から各年2020年まで行った。特定の薬剤(GLP-1受容体作動薬)の使用を標識として、細小血管障害だけでなく大血管障害のリスクを多く有する患者を同定することが可能であることが示された。また、24,000人をこす症例から、eGFRの低下と尿アルブミン・尿タンパクの多寡を指標にして、リスク分類することで、血糖コントロールや脂質、血圧などの既存のリスク因子に加えて、慢性腎臓病が大血管障害を併存する危険因子で有ることが示された。
【NDBの整備状況】
厚労科研・山内班「糖尿病の実態把握と環境整備のための研究」と緊密に連絡を取り、取得済みの2014年度度、2015年度分に加えて令和元年度に、糖尿病に関する特別抽出NDBデータを2016年度、2017年度分を取得した。さらなるデータの取得の準備を進めている。
結論
【J-DOIT3】
介入期間中のサブ解析から、血糖、血圧、脂質の全てにおいて、介入期間中の平均として従来治療群の目標値を達成することで主要評価項目などの発症が抑制される、介入初期の体重減少が重要である、低血糖と網膜症の関連が示された。
加えて追跡研究では、エンドポイント判定委員会による判定をほぼ完了させ、5年目までのデータを用いた統計解析の準備がほぼ整った。
【J-DREAMS】
合併症に関する横断観察研究の解析結果を提示した。J-DREAMSは参加施設・登録症例も増加しており、1型糖尿病患者も多く含む糖尿病症例データベースである。検査結果だけでなく、症例の背景情報が豊富に収集されていることから横断解析、縦断解析のいずれにも用いることが出来ることが示された。
今後もJ-DREAMSのデータ、さらにJ-DOIT3のデータを機械学習に供し、合併症の予測モデルの構築をすすめる。
【NDBの整備状況】
本研究でNDB特別抽出データを利用する準備を整えている。
介入期間中のサブ解析から、血糖、血圧、脂質の全てにおいて、介入期間中の平均として従来治療群の目標値を達成することで主要評価項目などの発症が抑制される、介入初期の体重減少が重要である、低血糖と網膜症の関連が示された。
加えて追跡研究では、エンドポイント判定委員会による判定をほぼ完了させ、5年目までのデータを用いた統計解析の準備がほぼ整った。
【J-DREAMS】
合併症に関する横断観察研究の解析結果を提示した。J-DREAMSは参加施設・登録症例も増加しており、1型糖尿病患者も多く含む糖尿病症例データベースである。検査結果だけでなく、症例の背景情報が豊富に収集されていることから横断解析、縦断解析のいずれにも用いることが出来ることが示された。
今後もJ-DREAMSのデータ、さらにJ-DOIT3のデータを機械学習に供し、合併症の予測モデルの構築をすすめる。
【NDBの整備状況】
本研究でNDB特別抽出データを利用する準備を整えている。
公開日・更新日
公開日
2023-08-01
更新日
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