循環器病の医療体制構築に資する自治体が利活用可能な指標等を作成するための研究

文献情報

文献番号
202109002A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病の医療体制構築に資する自治体が利活用可能な指標等を作成するための研究
課題番号
19FA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 糖尿病学講座)
  • 金岡 幸嗣朗(国立循環器病研究センター OIC 循環器病統合情報センター)
  • 坂田 泰史(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院 循環器内科)
  • 岡田 佳築(大阪大学大学院医学系研究科 変革的医療情報システム開発学寄附講座/循環器内科学)
  • 添田 恒有(奈良県立医科大学 医学部)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 中瀬 裕之(奈良県立医科大学脳神経外科)
  • 山田 修一(奈良県立医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
  • 鴨打 正浩(九州大学大学院医学研究院 医療経営・管理学講座)
  • 宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科 脳神経外科)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
23,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
都道府県が地域の実情に応じて医療体制の確保を図るために策定する医療計画の進捗評価は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等のデータを集計・指標化したデータに基づき行う事が求められている。また、医療計画に記載する事とされている、疾病・事業ごとの医療提供体制には、循環器病として「脳卒中」と「心筋梗塞等の心血管疾患」が含まれている。本研究では医療政策的な視点と、循環器病の学術的・臨床的な視点双方の視点を踏まえた、都道府県での実用性の高い指標の作成を目的とする。
研究方法
本研究班は疾患に関する「心血管疾患班」、「脳卒中班」の2つの分担班に分けて研究を進めた。「医療政策・NDB技術班」では研究に必要なNDBデータベースの構築から各段階におけるNDB利用に関するサポートやNDBデータを利用する際の問題点・改善方法の検証を行った。

1. 指標の作成と信頼性・妥当性の検証(令和元~2年度)
ストラクチャー・プロセス指標とアウトカム指標間の関連性、学会・研究者等のデータからの結果と比較した実臨床の視点からの検証。
2. 指標の有効性の検証(~令和3年度)
指標群を用いたアウトカムの予測モデルを作成し、他年度のNDBデータや学会等のデータベースを用いて、予測モデルの外的妥当性の評価。
3. 医療費に関する資料の作成(~令和3年度)
研究過程で検証される指標に関連した医療費(治療手技や再入院等を想定)をNDBデータベースから抽出し解析。NDBデータを利用する際の問題点・改善方法の検証。
4. NDBデータ以外のデータ活用の検証(~令和3年度)
NDBデータが利用困難な指標については、NDB以外のデータ(J-ROAD等の学会等のデータ)を通じた自治体における活用可能性につき検証。
結果と考察
本年度は、心血管疾患班は、NDB上で心血管疾患を有する患者を特定するためのアルゴリズムを作成し、そのアルゴリズムを用いて先行研究や前年度までの検証から候補となった指標について、都道府県単位での予後との関連性について評価を行い自治体における利活用の観点からの有効性の評価を行った。
脳卒中班はすでに検討されてきた指標案に対するエビデンスを示すことに注力した。エビデンスとしては各自治体間での比較が容易でNDBより算出可能である点から標準化死亡比(SMR)を採用し、各指標案、算出方法、SMRの結果をまとめた。
また、医療・介護突合レセプトデータを活用し、脳梗塞に対するt-PAによる血栓溶解療法の実施件数を分析することで、脳梗塞患者治療の評価指標の検討に向けて地域差を把握するための基礎となるデータが得られた。
結論
1.心血管疾患班
心血管疾患の医療体制構築に資する自治体が利活用可能なNDBを用いた指標として、現在の第7次医療計画における心血管疾患の医療体制構築に係る現状把握のための指標例として記載がない新規指標の追加や、重要指標への変更の検討が望ましいと考えられる指標を提案した。
2.脳卒中班
新たな指標として「脳神経内科医師数・脳神経外科医師数」など7つを提案することとなった。
医療・介護突合レセプトデータである奈良県KDB様データ(2013~19年度)の分析により脳梗塞発症後の生活期における在宅医療や介護の状況を地域別に示す指標が作成できる可能性があると考えられた。
3.医療政策・NDB技術班
脳卒中および虚血性心疾患に関して、NDBによるエビデンスに基づき、指標の有用性についての検討を行った。また心血管班、脳卒中班から提案された新しい指標案についてNDB等によるエビデンスを示した。
本研究班より示した心血管班、脳卒中班の新しい指標案については、自治体が利用可能な指標となり得るため、実際に都道府県に使っていただく際には、医療計画作成用に医政局から配布されているデータブックに実際の都道府県別データを載せることにより、各都道府県の利用の便宜を図るなどの配慮が今後、望まれると考える。

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109002B
報告書区分
総合
研究課題名
循環器病の医療体制構築に資する自治体が利活用可能な指標等を作成するための研究
課題番号
19FA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 糖尿病学講座)
  • 金岡 幸嗣朗(国立循環器病研究センター OIC 循環器病統合情報センター)
  • 坂田 泰史(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院 循環器内科)
  • 岡田 佳築(大阪大学大学院医学系研究科 変革的医療情報システム開発学寄附講座/循環器内科学)
  • 添田 恒有(奈良県立医科大学 医学部)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 循環器内科学分野)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
  • 山田 修一(奈良県立医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
  • 鴨打 正浩(九州大学大学院医学研究院 医療経営・管理学講座)
  • 宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科 脳神経外科)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
都道府県が地域の実情に応じて医療体制の確保を図るために策定する医療計画の進捗評価は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等のデータを集計・指標化したデータに基づき行う事が求められている。また、医療計画に記載する事とされている、疾病・事業ごとの医療提供体制には、循環器病として「脳卒中」と「心筋梗塞等の心血管疾患」が含まれている。本研究では医療政策的な視点と、循環器病の学術的・臨床的な視点双方の視点を踏まえた、都道府県での実用性の高い指標の作成を目的とする。
研究方法
本研究班は疾患に関する「心血管疾患班」、「脳卒中班」の2つの分担班に分けて研究を進めた。「医療政策・NDB技術班」では研究に必要なNDBデータベースの構築から各段階におけるNDB利用に関するサポートやNDBデータを利用する際の問題点・改善方法の検証を行った。

1. 指標の作成と信頼性・妥当性の検証(令和元~2年度)
ストラクチャー・プロセス指標とアウトカム指標間の関連性、学会・研究者等のデータからの結果と比較した実臨床の視点からの検証。
2. 指標の有効性の検証(~令和3年度)
指標群を用いたアウトカムの予測モデルを作成し、他年度のNDBデータや学会等のデータベースを用いて、予測モデルの外的妥当性の評価。
3. 医療費に関する資料の作成(~令和3年度)
研究過程で検証される指標に関連した医療費(治療手技や再入院等を想定)をNDBデータベースから抽出し解析。NDBデータを利用する際の問題点・改善方法の検証。
4. NDBデータ以外のデータ活用の検証(~令和3年度)
NDBデータが利用困難な指標については、NDB以外のデータ(J-ROAD等の学会等のデータ)を通じた自治体における活用可能性につき検証。
結果と考察
心血管疾患の医療体制構築に資する自治体が利活用可能なNDBを用いた指標として、「急性心筋梗塞に対する経皮的冠動脈インターベンション実施率」および「大動脈疾患患者に対する手術件数」は、現在の第7次医療計画における心血管疾患の医療体制構築に係る現状把握のための指標例として記載がなく、新規の指標としての追加が、「入院・外来心血管疾患リハビリテーションの実施件数」は、重要指標への変更の検討が望ましいと考えられた。
脳卒中班では、新たな指標として以下を提案することとなった。「脳神経内科医師数・脳神経外科医師数」「脳梗塞に対するtPAによる血栓溶解療法の実施可能施設数」「脳梗塞に対する血管内治療による血栓回収療法の実施可能施設数」「脳梗塞に対する血管内治療による血栓回収療法の実施件数」「くも膜下出血に対する脳動脈瘤クリッピング術の実施件数」「くも膜下出血に対する脳動脈瘤コイル塞栓術の実施件数」「脳卒中リハビリテーションが実施可能な医療機関数」
医療・介護突合レセプトデータである奈良県KDB様データ(2013~19年度)の分析により脳梗塞発症後の生活期における在宅医療や介護の状況を地域別に示す指標が作成できる可能性があると考えられた。
脳卒中および虚血性心疾患に関して、NDBによるエビデンスに基づき、指標の有用性についての検討を行った。また心血管班、脳卒中班から提案された新しい指標案についてNDB等によるエビデンスを示した。
結論
本研究班より示した心血管班、脳卒中班の新しい指標案については、自治体が利用可能な指標となり得るため、実際に都道府県に使っていただく際には、医療計画作成用に医政局から配布されているデータブックに実際の都道府県別データを載せることにより、各都道府県の利用の便宜を図るなどの配慮が今後、望まれると考える。

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班ではNDB8年分を連続データとして名寄せしコホートデータ化した。医療管理下での死亡については95%程度をレセプトから死亡情報を拾うことに成功した。この活用により心血管疾患班は心大血管疾患リハビリテーションについて、NDBデータによる集計上の定義検討とNDBデータからの病名抽出の妥当性を検証した。脳卒中班は急性期脳梗塞に対するtPAによる血栓溶解療法に対するNDB集計、脳梗塞症例についてのNDB集計を行い、日本脳卒中学会の公表値との比較によるNDB集計値の妥当性の検討を行った。
臨床的観点からの成果
心血管疾患班は、NDB上で心血管疾患を有する患者を特定するためのアルゴリズムを作成し、そのアルゴリズムを用いて先行研究や前年度までの検証から候補となった指標について、都道府県単位での予後との関連性について評価を行い自治体における利活用の観点からの有効性の評価を行った。
脳卒中班はすでに検討されてきた指標案に対するエビデンスを示すことに注力した。エビデンスとしては各自治体間での比較が容易でNDBより算出可能である点から標準化死亡比(SMR)を採用し、各指標案、算出方法、SMRの結果をまとめた。
ガイドライン等の開発
・第7回循環器病対策推進協議会(令和4年3月30日開催)において、研究代表者 今村知明が参考人として研究班の成果「循環器病の指標を作成するための研究班での結果概要について」の説明を行った。
・第8回第8次医療計画等に関する検討会(令和4年5月25日開催)について、研究代表者 今村知明が委員として研究班の成果「医療計画での指標を作成するための研究班での取り組みと「指標」作成の留意点について」の説明を行った。
その他行政的観点からの成果
NDB等によるエビデンス検討結果に基づき、心血管班3つ、脳卒中班7つの新しい指標案を示した。心血管班:急性心筋梗塞に対する経皮的冠動脈インターベンション実施率、大動脈疾患患者に対する手術件数 他、 脳卒中班:脳神経内科医師数・脳神経外科医師数、脳梗塞に対するtPAによる血栓溶解療法の実施可能施設数、脳梗塞に対する血管内治療による血栓回収療法の実施可能施設数、脳梗塞に対する血管内治療による血栓回収療法の実施件数、くも膜下出血に対する脳動脈瘤クリッピング術の実施件数 他(詳細は報告書に記す)
その他のインパクト
下記学会のシンポジウムにて発表を行った
①2020年08月09日~2020年08月12日(石川県、立音楽堂) 第40回日本脳神経外科コングレス総会 人口構成の変化へ対応するための医療界の動向と課題~地域医療構想や医療計画、地域包括ケアシステム~ 今村知明.
②2021年03月26日~2021年03月28日(神奈川県、パシフィコ横浜/WEB) 第85回日本循環器学会学術総会 リアルワールド・データの臨床活用への現状と課題 今村知明.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
第7回循環器病対策推進協議会(令和4年3月30日開催)において、研究代表者 今村知明が参考人として研究班の成果「循環器病の指標を作成するための研究班での結果概要について」の説明を行った。
その他成果(普及・啓発活動)
2件
2020年8月9日~8月12日(石川県、立音楽堂) 第40回日本脳神経外科コングレス総会 人口構成の変化へ対応するための医療界の動向と課題~地域医療構想や医療計画、地域包括ケアシステム~ 今村知明.

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Koshiro Kanaoka, Tsunenari Soeda, Satoshi Terasaki,et al
Current Status and Effect of Outpatient Cardiac Rehabilitation After Percutaneous Coronary Intervention in Japan.
Circulation Reports. , 3 (3) , 121-130  (2021)

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
2024-05-24

収支報告書

文献番号
202109002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
22,851,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,149,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,729,884円
人件費・謝金 7,984,711円
旅費 153,058円
その他 11,065,131円
間接経費 920,000円
合計 22,852,784円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差額は、自己資金1,784円です。

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-