がん登録等の推進に関する法律の改正に向けた課題解決に関する研究

文献情報

文献番号
202108055A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録等の推進に関する法律の改正に向けた課題解決に関する研究
課題番号
21EA2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 亜希子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所がん登録センター)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所国際連携研究部)
  • 奥山 絢子(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センター院内がん登録分析室)
  • 塚田 庸一郎(国立がん研究センター がん対策研究所がん登録センター院内がん登録室)
  • 藤下 真奈美(国立がん研究センター がん対策研究所がん登録センター全国がん登録室)
  • 藤 也寸志(九州がんセンター 消化管外科)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
  • 西野 善一(金沢医科大学 医学部)
  • 石井 夏生利(中央大学 国際情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
「がん登録等の推進に関する法律(がん登録推進法)」の施行から約5年が経過し、同法に基づく全国がん登録及び院内がん登録の実施において、情報の収集や情報の取扱い、審査やデータの提供、他のデータとの連携等において、運用における課題が明らかになってきている。本研究では、がん登録推進法の見直しに当たり、これらの課題について、個人情報保護の観点を踏まえた検討を行い、改正案の方向性について提案することを目的としている。
研究方法
2020年度 厚生労働行政推進調査事業費「がん登録等の推進に関する法律の改正に向けての課題に関する研究(前回の研究)」において抽出した課題の検証が可能な、個人情報保護、データの匿名化処理、データ利用等のそれぞれの専門家からなるワーキンググループを構成した。その上で、これらの課題について、法改正により対応可能かどうかを検証・整理した。また、改正個人情報保護法等、他の法律との整合性やプライバシー保護の技術を考慮しながら、データの利活用についても検討し、改正案の方向性等について議論を行った。
①現状の課題の検証
前回の研究で抽出された、全国がん登録情報の収集や利用と提供、院内がん登録の位置づけ等に関する課題について、ワーキンググループにおいて個人情報保護の観点を踏まえた検討を行い、改正案の方向性について整理した。
②他のデータとの連携等についての検討
将来的に、全国がん登録情報とその他の医療・介護等の公的データベースとを連結することも想定し、法改正の方向性及びこれらのデータの具体的な利活用の方法等について検討した。
③改正案の方向性の提案
前項1、2における検討結果を踏まえ、これまでのがん登録推進法における課題解決に向けた法改正の方向性についての提案をまとめた。また、今後のビックデータ活用等の動きを見据え、全国がん登録及び院内がん登録の今後のあり方について、整理・検討を行った。
結果と考察
①現状の課題の検証
・情報の収集における課題の検討では、がん登録情報の特性から、個人情報保護法よりも高いレベルの規律が必要となる可能性が示唆された。また、住所の異動確認や生死の判定に係る調査に住基ネットを利用し、登録作業の効率化とデータの精度向上を図ることは、全国がん登録の円滑な運用において重要である。
・利用と提供における課題の検討では、法第20条に基づき提供された情報(生存確認情報等)の適切な管理や利用、保有等における法改正の方向性として、「院内がん登録」と「その他がんに係る調査研究」それぞれの目的に応じて書き分けることや、提供後は個人情報保護法の規制が適用されるという整理をすることも考えられた。
・がん登録推進法では、院内がん登録情報の具体的な利用・提供に係る規定は設けられていない。院内がん登録情報の提供についても、全国がん登録情報と同様に、がん登録推進法において利用・提供に係る規定を設けて対応することが望ましいと考えられた。
②他のデータとの連携等についての検討
全国がん登録情報と他のデータベースとの連携は、法律の趣旨及びデータ連携による個人の特定リスクの増大などから、現時点では難しいと考えられるが、政策的な観点からデータ連携を行うこととされた場合には、連携することの必要性についての周知、全国がん登録データベースと同じレベルのセキュリティの確保が必要と考えられた。
③報告書の作成
前項①~②について、ワーキンググループでの議論を踏まえ、がん登録推進法の改正に向けた検討において、個人情報保護の観点を踏まえた論点集約ができるよう、「がん登録推進法と個人情報保護法との関係性整理検討会議 報告書」としてまとめた。
結論
本研究では、がん登録推進法の見直しに当たり、前回の研究で抽出された、全国がん登録情報の収集や利用と提供、院内がん登録の位置づけ等に関する課題について、個人情報保護の観点を踏まえた検討を行い、改正案の方向性について整理した。これらの課題解決を図ることが、今後の全国がん登録及び院内がん登録の円滑な実施や登録情報の利活用の促進にもつながると考えられる。がん対策の施策立案、がん研究、国民への情報提供を一層推進するためにも、個人情報保護法や他のデータ利用に関する法律等との整合性を図りつつ、これらの課題解決につながるような法改正の方向性について検討・見直しを行い、全国がん登録情報等の利活用促進を図っていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202108055C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん登録の運営上の様々な課題についてまとめて厚生労働省に報告した。方向の内容は厚生科学審議会がん登録部会の資料としてまとめられて活用された。
臨床的観点からの成果
本研究は制度としてのがん登録を論ずるもので、臨床的な成果を期待された研究ではない。
ガイドライン等の開発
がん登録の運営上の様々な課題についてまとめて厚生労働省に報告した。方向の内容は厚生科学審議会がん登録部会の資料としてまとめられて活用された。(第20回厚生科学審議会がん登録部会。令和4年8月5日)
その他行政的観点からの成果
院内がん登録の活用に関しても法的課題を整理した。
その他のインパクト
上記をもとに、国立がん研究センターにおいて、院内がん登録全国集計データの活用体制が開始され、提供も開始された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
202108055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,640,000円
(2)補助金確定額
3,469,760円
差引額 [(1)-(2)]
170,240円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,760円
人件費・謝金 380,000円
旅費 0円
その他 2,248,000円
間接経費 840,000円
合計 3,469,760円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の影響により、国内旅費がゼロになり、研究計画も変更したため、返金が発生した。

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-