がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202108049A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究
課題番号
21EA1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本におけるがん検診は、実施主体により地域住民検診(住民検診)および職域検診に大別されるが、その精度管理の状況は異なる。健康増進法のもとに、精度管理が整備されてきた住民検診と異なり、職域検診においては根拠となる法令がなく、多くの場合保険者や事業主により福利厚生の一環として提供されており、精度管理はされていないのが現状である。がん検診を行うことにより利益と不利益が生じるが、精度管理を適切に行うことで、利益を最大化し不利益を最小化することが可能となるため、がん検診のプログラムのいずれにおいても精度管理体制が整備され、検診の質を高めることが、国全体のがんの死亡率減少につながる。
本研究では、住民検診においては、これまでの住民検診の精度管理体制を見直し、チェックリストおよびプロセス指標の改定を検討する。また、地域保健・健康増進事業報告の項目や利活用法をわかりやすく整理する。職域検診においては、平成30年にとりまとめられた「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する指標を見直し、実施主体である保険者や事業者の実情を踏まえた改定を提案する。さらに、レセプト情報を用いたこれまでの検討をもとに、がん検診に関するデータの利活用を検討する。
研究方法
〇住民検診
1.住民検診における精度管理体制の検討
本研究では、精度管理に関するこれまでの検討を継続しつつ、実施主体となる自治体が受診者に対してより適切な受診行動を提供できる方策を、また不利益よりも利益が上回る検診を提供できるような方策を検討する。
2. 地域保健・健康増進事業報告の項目および利活用法の検討
地域保健・健康増進事業報告は、項目が多く複雑であるなど問題点が指摘されていることから、簡素化することが求められており、自治体における利活用が進んでいないことから、わかりやすい利活用法が望まれている。本研究では、これらに対する解決策を検討し、自治体の精度管理機能の向上を目指す。

〇職域検診
1.「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の精度管理に関する検討
職域検診における指針として、平成30年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が示されたが、解釈が難しく利活用は進んでいない。これらの改善点を検討することにより、実施主体となる保険者や事業主の利活用を促し、職域における精度管理の水準が向上するよう検討する。
2.レセプト情報を用いたがん検診に関するデータの利活用に関する検討
がん検診データは主にそれぞれの実施主体が管理していることに加え、個人情報保護の観点などからその運用は限定的である。一方で、レセプト情報によるがん患者の特定などにより、職域におけるがん検診の精度管理への応用が期待されている。本研究では、レセプト情報のがん検診への活用に関するこれまでの検討を踏まえ、妥当性の評価や具体的な利用法を協力保険者において実施し、実装化に向けた検討を行う。
結果と考察
令和3年度は、班会議を2回開催し、住民検診および職域検診に関する問題点や対策について議論を行った。本年度の結果を以下にまとめる。

〇住民検診における精度管理体制の検討
胃内視鏡検診においては、適切でない生検の増加による要精検率の増加が各地より報告されており、実施者に対する理解向上策が検討された。

〇プロセス指標の新基準値ついて
望ましい状況におけるプロセス指標を算出し各がん種の状況に合わせて算出方法の修正を行った。胃・大腸・子宮頸がん検診における基準値は、おおむね検診の現場が受け入れることのできる範囲内であったが、肺については、検査感度が想定よりも低いことが想定されること、検査間隔が推奨される1年よりも短い可能性があること、乳がんについては、検査間隔が推奨される2年よりも短い可能性があることなどの理由により、されなる見直しの必要性が議論された。

〇レセプト情報を用いたがん検診に関するデータの利活用に関する検討
レセプト情報のがん検診への活用に関するこれまでの検討を踏まえ、妥当性の評価や具体的な利用法を協力保険者において実施し、実装化に向けた検討を行った。がん罹患者の抽出方法に加え、精密検査受診者の抽出ロジックが整いつつあり、今後より適切な抽出方法について検討を続ける。
結論
班会議の議論において、がん検診の精度管理の課題については、胃内視鏡検診における適切な生検の実施を自治体に再度周知すること、肺がん検診における判定を人間ドック学会などの基準と統一すること、職域検診の実施者に対して精度管理の考え方を提供することなどが取り上げられた。また、乳がん検診におけるブレスト・アウェアネスの啓蒙、子宮頸がん検診におけるHPV検査の導入に向けた問題点の整理、レセプトを用いた新たな精度管理手法の開発については、関連する厚生労働科学研究班などと協力し、齟齬のないよう効果的な情報提供を引き続き検討する。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,693,000円
(2)補助金確定額
6,848,000円
差引額 [(1)-(2)]
845,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,297,983円
人件費・謝金 764,220円
旅費 659,276円
その他 820,180円
間接経費 2,307,000円
合計 6,848,659円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
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