精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究

文献情報

文献番号
200833037A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 尚登(滋賀医科大学精神医学講座)
  • 清水 徹男(秋田大学医学部 精神科学講座)
  • 兼板 佳孝(日本大学医学部 公衆衛生学教室)
  • 内山 真(日本大学医学部 精神医学講座)
  • 井上 雄一(神経研究 所附属睡眠学セ ンター研究部)
  • 内村 直尚(久留米大学医学 部神経精神科)
  • 亀井 雄一(国立国際医療センター国府台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神疾患に合併する睡眠障害の実態と治療内容の妥当性を検証し、今後改善すべき課題を抽出する。睡眠障害の適切な診断と対処が精神医療に資する効果とその機序を解明し、得られた成果をもとに精神科診療における実効性の高い睡眠医療ガイドラインと応用指針を作成することをめざす。
研究方法
1)不眠・抑うつ患者の受療実態と臨床転帰に関する調査のため、約32万人が加入する健保団体の診療報酬データの処方動向解析を行った。2)滋賀県および福岡県において精神科入院患者を対象に睡眠時無呼吸症候群の併存実態に関する調査を行った。3)総合病院の児童精神科初診患者を対象に児童精神疾患に併存する睡眠障害の実態調査を行った。4)不眠症の有病率を明らかにするため一般人口から抽出した2614人を対象に調査を行った。5)睡眠時無呼吸症候群を合併するパニック障害に対する鼻腔持続陽圧呼吸療法の効果を確認するための無作為割り付け試験を行った。6)睡眠対処行動とうつ病との関連を明らかにするための調査を行った。7)薬剤抵抗性のうつ病性障害・双極性障害を対象とした断眠療法、睡眠位相前進、高照度光療法の併用療法(時間療法)の有用性を検証した。
結果と考察
1)日本人における向精神薬処方率は睡眠薬2.90%、抗不安薬3.81%、抗うつ薬1.64%、抗精神病薬0.55%と推定され、北欧に比較して抗うつ薬、睡眠薬の処方率がきわめて低かった。睡眠薬服用者の約4割、抗うつ薬服用者の約半数が両薬剤を併用し、睡眠薬+抗うつ薬の併用群では薬物使用力価が有意に高かった。2)統合失調症患者、気分障害患者ともに睡眠時無呼吸症候群が高率に併存していた。肥満、加齢、高用量のベンゾジアゼピン系睡眠薬使用がリスク要因であった。3)児童精神疾患に睡眠問題が高率で併存していることが明らかになった。睡眠問題を患者・家族が自覚しておらず十分に対処されないままに経過していた。4)日本人における狭義の不眠症有病率は13.5%であった。5)睡眠時無呼吸症候群を合併するパニック障害に対して鼻腔持続陽圧呼吸療法が有効であることが示された。6)睡眠を確保するための対処行動がうつ病のリスクに関連していることが示唆された。7)薬剤抵抗性のうつ病に対して時間療法が有効であり、有用な非薬物的補完療法となることが期待された。
結論
精神疾患に合併する睡眠障害の罹患頻度、臨床特徴、向精神薬処方動向、新規治療ストラテジーに関する基盤データが得られた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-