思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200833035A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立国際医療センター国府台病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中島豊爾(岡山県精神科医療センター)
  • 伊藤順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所 社会復帰相談部)
  • 皆川邦直(法政大学 現代福祉学部)
  • 弘中正美(明治大学 文学部)
  • 近藤直司(山梨県立精神保健福祉センター)
  • 水田一郎(神戸女学院大学人間科学部)
  • 奥村雄介(府中刑務所)
  • 清田晃生(大分大学医学部付属病院)
  • 渡部京太(国立国際医療センター国府台病院)
  • 原田豊(鳥取県立精神保健福祉センター)
  • 斎藤環(爽風会佐々木病院)
  • 堀口逸子(順天堂大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、医療・保健・福祉・教育の領域が連携してひきこもり支援にあたるために、各領域が共有できる評価・支援システムの開発が緊急に求められている。本研究は10代を中心とする思春期ひきこもりを対象として、その実態把握とともに、医療的治療を含む包括的社会的支援システムの開発を目指すものである。
研究方法
三年計画の本研究は、実態把握のための研究、治療・援助システムの開発ならびに標準化のための研究、総括研究の三領域から構成されており、分担研究者は前二者の一方もしくは両方の分野の調査研究に取り組み、主任研究者は総括研究ワーキンググループを組んで広範な調査研究やガイドライン作成の取りまとめを行っている。
結果と考察
今年度の主な研究結果は以下の通りである。急性期精神科医療を担う地域中核病院での30歳以下の初診患者の22%がひきこもりの青少年であり、そのひきこもり開始年齢は半数以上が18歳以下であり、その72%はF2統合失調症、F4神経症性障害、F8心理的発達の障害のいずれかであった。精神保健機関におけるひきこもり相談来談事例152例で、診断保留の27名を除いた125例に精神障害の診断が可能であったことと考えあわせると、ひきこもり支援においては精神障害の関与を常に考慮すべきであることがわかる。精神保健福祉機関での来談事例における就労、就学等の社会参加者は来談者152例中24例(16%)に過ぎず、さらに全国の就労相談・支援機関の調査から499機関中61%がひきこもり相談におけるコミュニケーションの難しさや就労能力の低さなどの問題の存在を認めており、単に機会を提供するだけでは展開しない困難さがひきこもりの就労支援にはあることを示唆している。児童精神科領域のひきこもり症例に対するアウトリーチ型地域生活支援プログラムや地域連携システムのような新たな支援法の開発や、思春期の不登校・ひきこもりの親ガイダンス、児童思春期事例での入院治療等の支援法の標準的実施法をめぐる調査および指針作りが続けられている。本年度は「思春期ひきこもりに対する評価・援助のためのガイドライン」ドラフト版を作成した。
結論
青少年の社会性発達の障害をもたらすひきこもりは、発達障害を含む精神障害の事例が多く、不登校段階からひきこもりは存在しており、保健・福祉・医療・教育等の地域機関が連携して関与する思春期年代での早期対応の意義は大きい。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-