高齢者がん診療ガイドライン策定とその普及のための研究

文献情報

文献番号
202108044A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者がん診療ガイドライン策定とその普及のための研究
課題番号
21EA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
佐伯 俊昭(埼玉医科大学 国際医療センター乳腺腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 石黒 洋(埼玉医科大学 国際医療センター乳腺腫瘍科)
  • 小寺 泰弘(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 唐澤 久美子(東京女子医科大学 医学部)
  • 渡邊 清高(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
  • 二宮 貴一朗(岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター)
  • 吉田 好雄(福井大学 学術研究院医学系部門)
  • 石川 敏昭(順天堂大学 医学部)
  • 吉田 陽一郎(福岡大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者のがん診療ガイドラインの策定とその普及を目的に、次の5つの研究・事業を検討・実践する。
①高齢者のがん診療において臓器横断的ながん種共通のガイドラインを策定する。
②GLの基盤となる学問としての老年腫瘍学のテキストブックを作成する。
③作成されたGLの医療現場への周知ならびにその効果の評価のため研修会や公開討論会を開催し、紙媒体だけでなくITを利用して研究成果や新情報の提供を行う。
④高齢者のがん診療における高齢者機能評価(GA)の応用を促進するために、GAの有用性に関するエビデンスの蓄積を行う。
⑤医療と介護の適正な連携について現状を把握し連携の有り方について検討する。
これらの研究・事業を通して人材育成をはかる。
研究方法
本研究を遂行するための組織作りと関連学会・団体との共同体制を整えた。
まず、多診療科、多職種、患者代表から構成される「高齢者がん診療ガイドライン作成委員会」とそのコアメンバーからなる「運営委員会」を設置した。ガイドラインの基盤となる学問である老年腫瘍学のテキスト作成に向けて編集委員会を設置した。両者を支援する組織として高齢者がん医療協議会(以下、協議会)を関連学会・団体から新たな代表をむかえて刷新、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)とも協働する体制を作った。それぞれの委員会のもとGL、テキストブックの作成が開始された。さらに、GLの普及とその効果を評価をする「普及・評価委員会」を設置した。
重要な臨床的課題でエビデンスが少ない課題(外科領域のGA、がん医療と介護と連携)について実態調査を行う。
結果と考察
①ガイドライン作成
・臓器横断的で高齢がん者のマネジメントに重要な課題として、GA、抗がん治療の目的、予防/支持/緩和医療・臨床諸問題の3つを抽出し、CQをあげて検討中である。
・総論部分の記載は75%が完成した。
・CQ:がん治療におけるGAの有用性については、エキスパートパネル会議での議論・投票を経て推奨レベルを決定、解説を加えた。また、GLとして国際的に利用されるように英語での論文化も同時進行で進めている。
・CQ:リハビリテーション、栄養/サルコペニアについてはdraftが完成した。
・CQ:外科治療、放射線治療に関しては、エビデンスが少なく、各がん種のガイドラインの高齢者の記述をレビューすることから開始している。
・考察:今回、CQでがん治療にあたってGAを弱く推奨するという結論となった。それは、今までの研究が、背景の異なる個人差の極めて大きい患者群を対象に、統一されていないGAツールを使って無作為割り付け試験(RCT)を行った結果報告が多く、評価が難しかったのが原因である。
さらに、がん種共通の治療に関する課題では、エビデンスを明確に検討できる臨床研究が限られていた。老年腫瘍学が確立しておらず老年腫瘍医がいないうえ、老年科専門医も少なく両者の連携がなかったことが原因と考えられる。人材育成は喫緊の課題である。
②老年腫瘍学テキストは、老年医学と腫瘍学の専門家による共同作業で他の職種も参加し、研修医や若手医師を対象とした分かりやすい内容で執筆が行われている。75%の項目について入稿されており、協議会委員、JASCC教育委員会のメンバーから査読者の選定を行っている。
③GLやテキスト作成過程で抽出された課題について研修会、公開討論会を開催した。
・②に関連し、2021年11月、「老年腫瘍学の確立を目指して:老年科と腫瘍科の密接な連携」について腫瘍関連学会と老年医学会の会員が参加して議論した。
・⑤に関連し「介護とがん医療の連携についての公開討論」を2022年2月Web開催し、その内容をSNSで公開した。
④術前高齢者機能評価と術後合併症との関連解析研究が、7がん種を対象に9施設でて研究が2021年10月より開始された。
⑤脆弱な高齢がん患者の診療にあたり介護サービスとの連携について調査を開始した。
・一大学病院で介護認定を受けた外科手術患者を対象に介護度と合併症、予後について後ろ向き調査を開始した。中間報告では、介護度と合併症の間に関係がある可能性が示唆された。
・介護認定を受けたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者の対応についてアンケート調査を行った。介護度の上昇に比例して治療強度を減弱・中止する血液内科の治療方針が示された。
以上、腫瘍医と老年科専門医が協働し、さらに他の職種も参加してGLやテキスト作成にあたっていることは画期的であり、その作成過程を通し、また研修や共同研究の推進は本領域の人材育成につながることが期待される。
結論
本研究の主目的である高齢者のがん診療GL作成は、総論とGA、リハビリテーション/栄養・サルコペニアについては最終段階まできており、今後、臓器横断的に各治療法についてのCQに関する提言をまとめ2022年度内に公表する予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2023-03-25

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,490,000円
(2)補助金確定額
9,490,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,197,354円
人件費・謝金 1,400,931円
旅費 0円
その他 3,701,772円
間接経費 2,190,000円
合計 9,490,057円

備考

備考
人件費の計算がずれてしまったため自己資金を用い補填いたしました。

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-