精神科救急医療、特に身体疾患や認知症疾患合併症例の対応に関する研究

文献情報

文献番号
200833034A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科救急医療、特に身体疾患や認知症疾患合併症例の対応に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
黒澤 尚(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 豊明(静岡県立こころの医療センター)
  • 八田 耕太郎(順天堂大学医学部)
  • 小林 孝文(島根県立中央病院)
  • 上條 吉人(北里大学医学部)
  • 粟田 主一(仙台市立病院)
  • 岸 泰宏(日本医科大学武蔵小杉病院)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部)
  • 大竹 眞裕美(福島県立医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
整備の遅れている精神科救急医療体制、身体合併症医療、認知症疾患対策について、統合的視点から、都道府県の今後の精神科救急医療システム構築、身体合併症医療の診療報酬上評価すべき診療行為または補助金事業として考えられる機能、認知症対策の中での精神科医療の役割の提言を行うこと.
研究方法
精神科救急については、精神科救急入院料病棟の臨床データ集約・フィードバックシステム構築を目指した41施設調査および全国の消防本部調査を実施した。精神科救急の実証的な技術構築では、救急入院する急性精神病性障害に対して第二世代抗精神病薬4剤の無作為・盲検多施設共同試験を実施し、同時に、専門家への救急・急性期治療の調査を質問票により実施した。
身体合併症対策では、その対応が減少中の現存の総合病院型精神病床で可能かどうかを東京都の有床・無床総合病院精神科の全数調査により検証した。
認知症疾患対策では、求められる医療機能について先進的な特定地域での調査を進めた。
結果と考察
精神科救急入院料病棟群の有効性が示された一方、精神科救急に対する救急隊の批判的な評価が明らかになった。急性精神病性障害のRCTでは救急入院して8週間単剤で対応可能かどうかを指標としてKaplan-Meier法で推計したところ、olanzapine、risperidoneがquetiapine、aripiprazolに優った。
身体合併症研究では、総合病院である必要のない患者を他に誘導しても、既に総合病院型精神病床の絶対的な不足状況が明らかになった。
認知症研究では、もの忘れ外来には,専門医療相談,鑑別診断,地域連携機能の一部が求められており,認知症疾患医療センターにはさらに,高度な地域連携,周辺症状と身体合併症に対する急性期医療,地域の保健医療福祉関係職に対する研修機能が求められていた。
結論
精神科救急入院料病棟群が、わが国の精神科救急事業(マクロ救急)と急性期医療(ミクロ救急)を牽引する治療装置であることが示唆された。
RCTの成果、および質問票解析によるエキスパートコンセンサスは、相補的に、精神病性障害の救急・急性期治療に関するガイドラインの基礎となる。
総合病院型精神病床の絶対的不足状況は、数を増やす必要性、および総合病院型精神病床の機能分化を強く促す必要性が示唆される。
認知症に対する医療機能については、明らかにした因子を基に整備される必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-03-30
更新日
-