がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討のための研究

文献情報

文献番号
202108041A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討のための研究
課題番号
21EA1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松坂 方士(国立大学法人弘前大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター国際連携研究部)
  • 高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部検診実施管理研究室)
  • 斎藤 博(青森県立中央病院)
  • 京 哲(島根大学医学部 産科婦人科)
  • 金村 政輝(宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部)
  • 柴崎 智美(埼玉医科大学 医学部医学教育学)
  • 井口 幹崇(和歌山県立医科大学 消化器内科)
  • 田中 里奈(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
青森県、和歌山県および島根県での先行事例を活用して、がん登録情報を利用したがん検診の精度管理を全国の市町村に実装する体制を整備することである。具体的には、これら先行3県の事例を基にしてがん登録情報をがん検診の精度管理に利用するために必要な項目をリストアップし、標準的な手順と信頼性のある結果を得るための基準案と精度指標案を設定する。さらに、新規にこの事業を展開する自治体でこの手順や精度管理の手法を適用し、算出された精度指標を公開する。本研究が精度管理のための重要な評価指標の算出を可能にすることで、全国で評価指標を設定してがん検診を精度管理する体制を整備することが可能になる。
研究方法
(A) がん検診の精度管理にがん登録情報を利用するための都道府県および市町村の機能強化と評価手法の標準化
令和3年度にはがん検診精度管理の手順と、これを実現するための基準・指標の案を設定した。

(B) がん登録情報とがん検診情報の照合データを用いたがん検診事業の評価手法の整理、および評価指標と解釈の提示

1) 全国の都道府県、がん登録室にアンケートを実施し、これまでにがん登録情報とがん検診情報を照合したデータをがん検診の精度管理に利用した経験がある自治体を抽出した。

2) 照合で得られた感度、特異度やその他の指標の正確な解釈を検討し、それらを含めて精度管理のフォーマットを取りまとめて公表する。

(C) がん登録情報を用いたがん検診精度管理のモデル地域での実装
1) 全国の自治体の担当者を対象に、研修会等でがん登録情報とがん検診情報の照合による精度管理を実施した自治体の事例紹介を行い、新たに事業展開を希望する地域を抽出した。

2) (B)1)で実施したアンケートで、過去にがん登録情報をがん検診の精度管理を目的として利用した経験のある自治体に本研究班の活動内容を紹介し、新たに事業展開を希望する地域を抽出した。

(A) がん検診の精度管理にがん登録情報を利用するための都道府県および市町村の機能強化と評価手法の標準化
がん登録情報を利用したがん検診の精度管理では自治体間の指標の比較が必須であり、その比較可能性を確保するためには標準的な手順を整備して照合を実施する必要がある。

(B) がん登録情報とがん検診情報の照合データを用いたがん検診事業の評価手法の整理、および評価指標と解釈の提示

1) 全国の都道府県、がん登録室へのアンケート
データ照合を実施した自治体は複数存在したが、その結果をがん検診の精度管理に利用できたのは福井県のみであることが分かった。

2) 感度、特異度やその他の指標の正確な解釈の検討と精度管理フォーマットの公表
令和3年度に算出した感度や特異度の指標は令和4年度に順次公表される。その際、各指標の解釈を併記して公表することとなった。

(C) がん登録情報を用いたがん検診精度管理のモデル地域での実装
令和3年度は宮城県が新規にデータ照合による精度管理事業を開始した。令和4年度は、東京都(2市区)と愛媛県(参加する市町村は未定)、秋田県(1市)が新たにデータ照合によるがん検診の精度管理事業を開始することとなった。
結果と考察
(A) がん検診の精度管理にがん登録情報を利用するための都道府県および市町村の機能強化と評価手法の標準化
全国がん登録情報は法制化により十分に精度が高いとみなしうるが、市町村が保有するがん検診情報の精度に関しては、今後の検討課題になると考えられた。

(B) がん登録情報とがん検診情報の照合データを用いたがん検診事業の評価手法の整理、および評価指標と解釈の提示
1) 全国の都道府県、がん登録室へのアンケート
データ照合によるがん検診の精度管理事業にはかなり専門的な知識が必要であり、普及のためには標準的な手法として確立してマニュアル等を整備する必要があると考えられた。

2) 感度、特異度やその他の指標の正確な解釈の検討と精度管理フォーマットの公表
偽陰性の定義により、同一の条件でも感度や特異度の値は異なる。令和4年度に感度などを公開する際には、これらを適切に解説したフォーマットと共に公開する必要がある。

(C) がん登録情報を用いたがん検診精度管理のモデル地域での実装
これまでにがん登録データを利用した経験がある自治体はがん検診の精度管理事業を開始する際のハードルが低い。そのため、今後もそのような経験のある自治体に対して新規に開始する自治体を募ることでさらに事業展開が期待されると考えられた。
結論
がん検診によってがん死亡率を低下させるためには、評価指標を設定して精度管理することが必要である。感度や特異度など、がん検診データとがん登録データを照合することで得られる指標は精度管理を実施する上で重要である。データ照合のための標準的な手順や指標なども整理し、一貫したプロセスの整備が進展しているものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,270,000円
(2)補助金確定額
9,590,000円
差引額 [(1)-(2)]
680,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,546,560円
人件費・謝金 1,212,093円
旅費 92,200円
その他 1,370,416円
間接経費 2,370,000円
合計 9,591,269円

備考

備考
自己資金1269円
返還680000円

公開日・更新日

公開日
2023-10-13
更新日
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