がん検診における‘Shared Decision Making’推進と利益不利益バランスに基づく受診意思決定支援ツール開発のための研究

文献情報

文献番号
202108035A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診における‘Shared Decision Making’推進と利益不利益バランスに基づく受診意思決定支援ツール開発のための研究
課題番号
20EA1024
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
濱島 ちさと(帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 清高(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 寺澤 晃彦(藤田医科大学医学部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 山崎 恭子(帝京大学 医療技術学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
科学的根拠に基づく利益と不利益を個人の価値観に照らし合わせ、最良の方法が選択できる‘Shared Decision Making’が、がん検診において適切に利用されることが求められている。本研究では、我が国においても、がん検診の利益・不利益を勘案して受診選択を可能とするためのDecision Aids(意思決定支援ツール)開発を目標とする。
研究方法
①諸外国における利益・不利益の情報提供の系統的文献レビュー、大腸がん検診勧奨試行調査、質的調査等を行う。大腸がん検診勧奨試行調査、質的調査は帝京大学倫理審査承認済。
②行動経済学における受診者選択(慶應義塾大学倫理審査承認済)について調査し、科学的根拠と現場のギャップ解消を検討する。
③国立がん研究センターの「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」の科学的根拠と研究班の研究成果を参照し、我が国で利用可能なDecision Aids案を作成する。
④医療者と受診者がDecision Aidsを共有し活用するための‘Shared Decision Making’を進めるためのマニュアル案を作成する。
結果と考察
【結果】
1. 情報提供に関する文献レビュー
①Decision Aidsの利用、効果検証の調査のシステマティックレビューの簡易レビューを実施、これに基づき、正式なアンブレラレビューを計画した。計画書を国際レジストリーに登録、学術雑誌に投稿した。新たな計画書に基づき正式な文献検索、フルテキストスクリーニングを実施した。
②IARCと連携して行った、細胞診による子宮頸がん検診の不利益、子宮頸がん検診の新技術に関するレビュー論文を公表した。
2. がん検診の適切な情報提供
がん検診における情報提供と啓発、Decision Aidsとしての情報発信の現状を把握し、都道府県におけるがん検診の効果的な実施に資する取り組みと今後の方向性を明らかにするため、2018年3月に取りまとめられた都道府県がん対策推進計画のレビュー計画を策定した。実施体制に加え、普及啓発・Decision Aids、個別勧奨、精度管理・事業評価、職域検診との協業の領域において新たな項目を作成した。
3. 医療経済学的調査
がん検診の利益と不利益のバランスに関する人々の選好を定量的に明らかにすることを目的とし、公的ながん検診の対象者である40~60代の男女の一般市民に対してオンラインのアンケート調査を行った。方法として、人々の選好を定量的に明らかにするため離散選択実験(DCE: Discrete Choice Experiment)を用いた。約4,000名のデータ分析により、がん死亡率が低くなり、偽陽性者数の少ない、集団検診より個別検診、郵送検診の方が、検診陽性者に対するサポートの厚い検診が有意に好まれる結果が得られた。
4. がん検診の受診率解析
2018年度地域保健・健康増進事業報告と市区町村におけるがん検診の実施状況調査データを用いて、個別受診勧奨の有無とがん検診受診率との相関を検討した。いずれのがん種でも相関は弱く、引き続き個別勧奨方法別・実施機関別の検討を行っている。
5. 受診支援対策
①大腸がん検診未受診者を対象とした受診勧奨:地域の大腸がん検診未受診者に便潜血検査キットの郵送、回収による支援と未受診の理由を把握した。
②大腸がん検診精密検査受診支援:職域で実施された大腸がん検診で便潜血が陽性となった者に対し、精検受診支援を行い、あわせて受診に関する知識、態度、障壁を把握した。

【考察】
受診者ががん検診の利益だけでなく、不利益を理解し、個人の価値観に基づいた選択を行うことは、がん検診の継続受診には不可欠のプロセスである。しかし、コロナ禍を経て、がん検診を始め医療サービスの情報提供のあり方が変化しつつあり、‘Shared Decision Making’の必要性がより重視されつつある。諸外国におけるがん検診の情報提供も科学的根拠に偏った形式から、対象者の身近な課題として認識し受診の判断に結び付きやすい形式に変化してきている。がん検診における‘Shared Decision Making’を定着させていくためには、科学的根拠と患者中心主義の考え方のバランスをとりつつ検討することが必要である。
結論
文献レビューにより先行研究におけるDecision Aidsの有効性評価や都道府県におけるがん検診対策の検討と共に、患者の語りの質的研究、地域・職域における受診勧奨対策の検討を行った。これらの成果をもとに、我が国おけるがん検診の受診率対策に活用できるDecision Aidsを開発する。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,999,000円
(2)補助金確定額
9,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,833,821円
人件費・謝金 1,016,455円
旅費 63,260円
その他 3,778,464円
間接経費 2,307,000円
合計 9,999,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
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