文献情報
文献番号
202108032A
報告書区分
総括
研究課題名
学会連携を通じた希少癌の適切な医療の質向上と次世代を担う希少がん領域の人材育成に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20EA1021
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小寺 泰弘(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 室 圭(愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部)
- 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
- 小田 義直(九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学)
- 杉山 一彦(広島大学病院 がん化学療法科)
- 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
- 神波 大己(熊本大学 大学院生命科学研究部泌尿器科学講座)
- 安藤 雄一(名古屋大学医学部附属病院 化学療法部)
- 西田 佳弘(名古屋大学 医学部附属病院 リハビリテーション科)
- 廣田 誠一(兵庫医科大学 病院病理)
- 橋口 陽二郎(帝京大学 医学部 外科学講座)
- 庄 雅之(奈良県立医科大学 消化器・総合外科学教室)
- 本間 明宏(北海道大学 大学院医学研究院 )
- 吉野 孝之(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科)
- 馬場 英司(九州大学大学院医学研究院社会環境医学講座連携社会医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
臓器横断的にがんを扱う学術団体や各臓器を専門的に扱う学術団体に所属する医療従事者等を支援し、臨床現場におけるニーズの高い希少がんについて可能な限りMinds診療ガイドライン作成マニュアルの方針に沿ってガイドラインを作成するよう促す。また、ガイドライン作成委員会の開催や文献検索に必要な費用を支弁する。これらの学術団体の協力を得て、当該希少がんのガイドラインを持続的に改訂していく体制の構築を促す。さらに、ガイドライン作成のために当該希少がんの診療及び研究に携わる医療従事者が集う機会を利用して、Clinical Questionを解決しうる新たなエビデンスの創出につながる多施設共同の調査や観察研究、さらには特定臨床研究を行う体制を構築することを目指す。以上の活動を通じて、希少がんの診療に習熟しているという観点と希少がんのガイドライン作成に習熟しているという観点での人材育成につなげる。
研究方法
先行研究であるがん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」(H29-がん対策-一般-013)および本研究で開始したガイドライン作成作業は粛々と進められた。この作業に付随して行った研究の論文化を進めた。また、脳腫瘍、頭頸部癌、GIST、そして「成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン」のガイドラインの改定作業も継続された。ゲノム診療に伴う希少フラクションへの対応の1つとして、EGFR遺伝子増幅要請進行上部消化管がん患者22例を対象とした抗EGFR抗体薬ネシツムバムの有効性、安全性を検証する第Ⅱ相バスケット試験の準備を進めた。
ガイドライン作成作業は、新型コロナウィルス感染拡大を受けて専らwebで開催されるようになった。そこで、日本癌治療学会の力も借りて希少がんのガイドライン、5大がん等のガイドラインを含めたガイドライン作成委員にアンケート調査を行い、ガイドライン作成における開催形式の影響について意見を収集した。
Medical Note社と相談をしながら希少がんについての啓蒙活動の一環としてウェビナーを開催し、また、本厚労研究のホームページの充実を図った。
ガイドライン作成作業は、新型コロナウィルス感染拡大を受けて専らwebで開催されるようになった。そこで、日本癌治療学会の力も借りて希少がんのガイドライン、5大がん等のガイドラインを含めたガイドライン作成委員にアンケート調査を行い、ガイドライン作成における開催形式の影響について意見を収集した。
Medical Note社と相談をしながら希少がんについての啓蒙活動の一環としてウェビナーを開催し、また、本厚労研究のホームページの充実を図った。
結果と考察
評価委員会での意見収集やパブリックコメントの収集などを経た修正を経て、十二指腸癌診療ガイドライン初版が金原出版から、陰茎癌診療ガイドライン初版が医学図書出版から、後腹膜肉腫診療ガイドライン初版が医学図書出版から出版された。また、成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン第3版が金原出版から、GIST診療ガイドライン第4版が金原出版から出版されるなど、本研究年度はこれまでの研究成果が形になる年度であり、多くのガイドライン作成・改定におけるラストスパートに相当する時期となった。
EGFR遺伝子増幅要請進行上部消化管がん患者22例を対象とした抗EGFR抗体薬ネシツムバムの有効性、安全性を検証する第Ⅱ相バスケット試験については臨床研究中核病院である名古屋大学の先端医療開発センターにARO業務を委託し、施設倫理委員会申請に加え、PMDAとの事前相談をはじめ先進医療Bで行うための準備を進めた。
ガイドライン作成には費用がかかるとともに、多くの作成委員の時間を委員会のために拘束しなければならない。しかし、今回のアンケート調査の結果を見る限り、希少がんのガイドライン作成においては対面による作成委員会の開催の需要も看過できないと思われ、今後のガイドライン作成に際しては対面開催とリモート開催を適切に使い分けることが求められる。また、ハイブリッド開催の体制を整えることが重要で、一般の会議室以外にハイブリッド開催の設備の整った学会の事務局を利用することも考慮に値する。
希少がんやがんゲノム診療に関わるウェビナーには多くのアクセスをいただくことができた。
EGFR遺伝子増幅要請進行上部消化管がん患者22例を対象とした抗EGFR抗体薬ネシツムバムの有効性、安全性を検証する第Ⅱ相バスケット試験については臨床研究中核病院である名古屋大学の先端医療開発センターにARO業務を委託し、施設倫理委員会申請に加え、PMDAとの事前相談をはじめ先進医療Bで行うための準備を進めた。
ガイドライン作成には費用がかかるとともに、多くの作成委員の時間を委員会のために拘束しなければならない。しかし、今回のアンケート調査の結果を見る限り、希少がんのガイドライン作成においては対面による作成委員会の開催の需要も看過できないと思われ、今後のガイドライン作成に際しては対面開催とリモート開催を適切に使い分けることが求められる。また、ハイブリッド開催の体制を整えることが重要で、一般の会議室以外にハイブリッド開催の設備の整った学会の事務局を利用することも考慮に値する。
希少がんやがんゲノム診療に関わるウェビナーには多くのアクセスをいただくことができた。
結論
希少がんの診療ガイドラインの作成には臓器別のガイドライン作成に関わっている関係各学会の関与が不可欠である。疾患によっては複数の学会の関与を要し、調整が必要である。今回は本研究費で作成費用の相当な部分を負担しているが、今後こうしたガイドラインがどの程度購入され収入に繋がるかが冊子体としてのガイドラインのsustainabilityに関わってくると思われ、注視している。がんゲノム診療による臓器横断的な薬物療法のあり方は希少がんの治療に資するものと期待されるが、バスケット試験として新規分子標的薬の臨床試験を増やすことは喫急の改題であるものの、医師主導治験として先進医療を活用して行うためには準備に時間がかかる点は否めない。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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