がん患者に対する質の高いアピアランスケアの実装に資する研究

文献情報

文献番号
202108027A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者に対する質の高いアピアランスケアの実装に資する研究
課題番号
20EA1016
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
藤間 勝子(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野澤 桂子(目白大学看護学部看護学科 国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター)
  • 全田 貞幹(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 放射線治療科)
  • 飯野 京子(国立看護大学校)
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 島津 太一(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター行動科学研究部)
  • 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者に対する質の高いアピアランスケアが提供されるために,アピアランスケアの均てん化に向けた手法と課題を整理する(研究Ⅲ・Ⅳ)とともに,拠点病院における効果的かつ効率的な介入方法の実践と検証を行う(研究Ⅰ・Ⅱ)ことである。
最終的には,より具体的な地域連携・院内連携も含めたアピアランスケアの提供体制モデルを提案し,がん患者が尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築に資することを目指す。
研究目的を達成するために,3年間で主たる研究Ⅰと副次的な研究Ⅱ・Ⅲ・Ⅳを行う。

研究方法
研究Ⅰは,ケア提供モデルの中核となるアピアランスケア教育体制の構築に向けた「アピアランスケアに関するe-learning研修が医療者に与える効果と患者への影響」である。1年目までに研究班が開発したアピアランスケアe-learningプログラムについて,2年目に当たる本年度はその研修効果の検証として,組織的にアピアランスケアが導入されていない施設の看護師を対象にウエイティング・リスト・コントロール・デザインを用いたランダム化比較試験を実施した。
研究Ⅱでは,医療機関内にアピアランスケアを導入する際の阻害・促進要因を明らかにする調査を行う。本年度は,既にアピアランスケアを組織的に導入している施設のスタッフへのインタビューを行い,次年度はその結果を元に全国がん診療連携拠点病院を対象としたウエブ調査を実施する。
また,研究Ⅲは,アピアランスケアの基盤となる情報のエビデンスを見直す「アピアランスケアのガイドライン2021改訂版作成研究」である。「アピアランスケアの手引き2016年版」をベースに,Minds診療ガイドライン作成2017年版の手法に則り改訂作業を行う。
研究Ⅳ「院内・地域連携モデルの提案に向けた患者による外見ケア時の課題研究」では,がん患者を対象としたウエブ調査から,患者がアピアランスケアや関連サービスを提供される際の課題を明らかにするとともに,心的変化に焦点を置いて患者集団をセグメント分類しその特徴から必要な支援について検討した。
結果と考察
研究Ⅰでは,e-learning研修プログラムの視聴により,アピアランスケアに関する知識が向上し,患者に対するケアの実践回数・頻度も有意に上昇した。また,患者がケアに満足するとの自信も向上しており,e-learning研修は,受講者のアピアランスケアについての能力・意欲・自信の向上に寄与し,患者へのケア提供の実践も増加させることが確認できた。なお,本研究では,患者向けの効果測定も実施の予定であったが,COVID-19感染拡大の状況を鑑み,実施は困難であると判断し医療者のみを対象とした 
研究Ⅱについては2施設2名のインタビュー調査を終了した。アピアランスケア導入時の重要な促進要因としては,意欲をもって関わる人材が,個別のケア提供に終始せず,組織導入に向け周囲に働きかけることが挙げられた。阻害要因としては,先行研究同様マンパワーやハード面の問題,幹部や周囲の理解が挙げられた。また,部門設置など組織的にケアを導入するには,国の施策やガイドラインの周知も大きな要因であることが示唆された。
研究Ⅲとなる「アピアランスケアのガイドライン2021改訂版作成研究」については,本年度は外部評価・パブリックコメントの募集を経て最終的な修正を行い,10月21日に「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年度版」として発刊した。
研究Ⅳについては,前年までに行った調査結果について,心的変化に焦点を置いた分析を行い,変化の誘因として,パーソナリティ,経済状況,人間関係などが関連することを明らかにした。アピアランス支援においては単にケアの方法を伝えるだけでなく,対人コミュニケーショントレーニングが必要であることも示唆された。これは外見の問題が単なる身体的な問題ではなく,対人関係が影響する社会関係性の問題であることを表しており,アピアランスケアでは社会関係性へ支援が必要であることを改めて示している。
結論
がん患者に対する質の高いアピアランスケアを提供するために,本研究では,情報のエビデンスを整理し(研究Ⅲ),全国の医療者がアピアランスケアを学ぶ機会となるe-learningプログラムについてその有用性を確認(研究Ⅰ)した。ケア提供の均てん化に向けた手法の整理が行えた。併せて,医療機関内でアピアランスケアを導入するための要因の検討にも着手し,より効果的なケア提供にむけ,ケアが必要な患者の特性についての整理も行った(研究Ⅳ)。今後それぞれの研究成果を統合し,医療者から始まる,より具体的な地域連携・院内連携も含めたアピアランスケアの提供体制モデルを提案し,がん患者が尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築に資することを目指す。 

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,080,839円
人件費・謝金 1,930,732円
旅費 37,780円
その他 5,181,388円
間接経費 2,769,000円
合計 11,999,739円

備考

備考
自己資金739円

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
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