障害のあるがん患者のニーズに基づいた情報普及と医療者向け研修プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
202108025A
報告書区分
総括
研究課題名
障害のあるがん患者のニーズに基づいた情報普及と医療者向け研修プログラムの開発に関する研究
課題番号
20EA1014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
八巻 知香子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん情報提供部)
研究分担者(所属機関)
  • 河村 宏(特定非営利活動法人 支援技術開発機構 理事会)
  • 飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 石川 准(静岡県立大学 国際関係学部)
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター 放射線治療科)
  • 堀之内 秀仁(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
  • 打浪 文子(立正大学 社会福祉学部)
  • 今井 健二郎(国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,955,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害のある人ががんに罹患し、医療機関を受診する場合、がん患者やその家族、また受け入れる医療者にとってどのような困難があるのかは十分に明らかになっていない。がん治療は様々な選択が必要であり、治療の侵襲性も高いため、本人が自分の状況を理解し、納得して治療に臨むことが欠かせないが、障害のある人への情報提供の方法についても充分に確立されているとはいえない。本研究では(1)障害者および医療者双方の視点から、現状で障害のあるがん患者が受診する際の困難を把握すること、(2)障害者支援専門機関がもつ支援技術を医療機関で応用・普及させる方法を提示し、(3)様々な障害のある人が利用可能な情報資料の作成手順を定式化することを目的とする。
研究方法
初年度に実施した調査の結果、作成した資料を用いながら、主として以下のことを実施した。
1)障害者本人の視点からみた医療機関受診時の困難の把握
・障害当事者の医療機関利用にあたっての課題と好事例の収集
・手話版がん情報の評価とろう者のがん医療受診における困難についてのインタビュー調査

2)医療機関・医療者が、障害者の受診にあたって配慮すべき点についての啓発資材の作成と評価
・視覚障害者の医療機関受診において必要な合理的配慮についての啓発資料の評価
・ろう・難聴者(聴覚障害者)の医療機関受診において必要な合理的配慮についての啓発資料(試作版)の作成
3)手話版およびわかりやすい版資料作成手順の検討
・手話版医療情報作成にあたっての効率的な撮影方法の検討
・「大腸がん わかりやすい版」の評価
・「肺がん わかりやすい版」の作成
結果と考察
1)障害者本人の視点からみた医療機関受診時の困難の把握
障害当事者が医療機関で様々な困りごとを経験しており、孤独感や疎外感を抱くことも多く、検診を受けないなどの受療行動に影響を与えることが示唆された。また、初年度の福祉職や支援者への調査ではあまり指摘されなかった、アクセスの問題が顕著であることが明らかになった。
また、患者本人に対して、十分な説明と同意が確保されなかったり、自ら主体的に医療に参加できなかったというエピソードも語られた。家族からの語りの形では、家族が意思決定を代行することの負担として語られることもあった。限界はあるとしても、患者本人にできる限りの情報や説明が提供されることは必要であり、医療者が説明しやすくするための資材の作成や、手話通訳者等の活用に関する情報の周知はやはり急務であると考えられた。

2)医療機関・医療者が、障害者の受診にあたって配慮すべき点についての啓発資材の作成と評価
本研究で作成した啓発パンフレットの形式と要素は、おおむね、理解しやすかったという評価が得られた。「ろう・難聴者(聴覚障害者)の医療機関受診において必要な合理的配慮についての啓発資料(試作版)の作成」は、上記の視覚障害者への対応に関する要素を踏襲しつつ、手話通訳者およびろう・難聴当事者へのインタビュー調査の結果を参考に、医療者や医療機関が準備、認識すべき配慮事項を具体的に想起できるよう、図示や具体例を多く提示した資料を作成した。これらの結果から、障害の特性に応じた合理的配慮の提供に関して、わかりやすい啓発資料として他の障害にも発展させていくことが望ましいと考えられた

3)手話版およびわかりやすい版資料作成手順の検討
手話版については、効率的な撮影方法を見出すことができ、今後の資料作成に応用できるものと考えられた。2種類の「わかりやすい版」資料の作成を通じて、わかりやすい表現やイラストの効果的活用方法を示すことができた。日常的に知的障害のある人を支援している福祉職から、“当事者にとって「安心」が得られる冊子”と評価されたことは、上述の障害者が受診場面で十分な説明を得られにくい実態と併せ考えると、こうした資料の普及が現場の改善に役立つ可能性が示唆される。

結論
調査結果より、障害当事者が医療機関で様々な困りごとを経験しており、孤独感や疎外感を抱くことも多く、検診を受けないなどの受療行動に影響を与えていることが示唆された。障害のある患者への説明が不足している可能性は高く、限界はあるとしても、患者本人にできる限りの情報や説明が提供されることは必要であること、医療者が説明しやすくするための資材の作成や、手話通訳者等の活用に関する情報の周知はやはり急務であると考えられた。
これらの調査結果を踏まえて作成した啓発資料は好評であり、これらを活用した医療者向け研修のプログラム作成に必要な環境が整った。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,641,000円
(2)補助金確定額
11,640,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,310,877円
人件費・謝金 3,561,847円
旅費 201,730円
その他 3,880,259円
間接経費 2,686,000円
合計 11,640,713円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-