文献情報
文献番号
200833025A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫疾患に伴う中枢神経障害に関連する抗神経抗体の検索と抗原機能の解析:病態の解明から治療法確立に向けて
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-こころ・若手-026
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木村 暁夫(岐阜大学医学部附属病院 神経内科・老年科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
中枢神経障害を合併した全身性自己免疫疾患患者の血清・髄液検体を用いて、疾患特異的抗神経抗体の検出ならびにその認識抗原を同定し、得られた抗原情報をもとに新たな診断および治療法の開発を行う。
研究方法
①広範な大脳白質病変を合併したCNSループス患者の血清中より同定した抗Hsp60抗体と大脳白質病変との関連性につき検討した。ELISA法により計215名の各種神経疾患患者、健常者の抗Hsp60抗体価を測定した。このうち高血圧・糖尿病・高脂血症を合併しない109名につき頭部MRI FLAIR画像での大脳白質病変をFazekas'rating scale(FRS)を用いて評価した。また抗Hsp60抗体産生免疫マウスを作製した。作製したマウスにLPSを尾静注することにより大脳血管内皮細胞膜表面にHsp60を発現させ、エバンスブルーを心腔内に注入した後の大脳切片につき、組織学的な検討を行った。
②精神症状を呈したCNSループス患者の血清中より抗αGDI抗体を同定した。その血清を用いてラット大脳切片に対し免疫組織学的な検討を行った。
②精神症状を呈したCNSループス患者の血清中より抗αGDI抗体を同定した。その血清を用いてラット大脳切片に対し免疫組織学的な検討を行った。
結果と考察
①Hsp60は、ストレス下に大動脈およびその分枝の血管内皮細胞膜表面に発現することが報告されており、今回の検討で大脳微小血管内皮にも発現することを確認した。大脳白質病変との検討では、高度白質病変合併群(FRSがDWMH2, 3もしくはPVH3)は非合併群と比較し、有意な抗Hsp60抗体価の上昇がみられた。免疫マウスを用いた検討では、抗Hsp60抗体産生マウスでは線条体の血管を中心に血液脳関門の破綻をしめすエバンスブルーの漏出が認められた。Hsp60が誘導する免疫応答が大脳微小血管障害をもたらすことにより大脳白質病変と関連する可能性が示唆された。
②抗αGDI抗体陽性患者血清を用いた免疫染色の結果、ラット大脳神経細胞に対し反応性を示した。とりわけ海馬の顆粒細胞および錐体細胞に対する著明な反応性が確認された。αGDIはプレシナプスにおける神経伝達物質の放出に関与することが知られており、同抗体と、CNSループス患者にみられるpsychosisと関連する可能性が考えられた。
②抗αGDI抗体陽性患者血清を用いた免疫染色の結果、ラット大脳神経細胞に対し反応性を示した。とりわけ海馬の顆粒細胞および錐体細胞に対する著明な反応性が確認された。αGDIはプレシナプスにおける神経伝達物質の放出に関与することが知られており、同抗体と、CNSループス患者にみられるpsychosisと関連する可能性が考えられた。
結論
①Hsp60が誘導する免疫現象は大脳微小血管内皮細胞障害をもたらし、大脳白質病変の形成に関与する可能性がある。
②抗αGDI抗体はCNSループス患者にみられるpsychosisと関連する可能性がある。
②抗αGDI抗体はCNSループス患者にみられるpsychosisと関連する可能性がある。
公開日・更新日
公開日
2009-04-07
更新日
-