進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究

文献情報

文献番号
202108021A
報告書区分
総括
研究課題名
進行がん患者に対する効果的かつ効率的な意思決定支援に向けた研究
課題番号
20EA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 支持療法開発部門)
研究分担者(所属機関)
  • 明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 上野 太郎(サスメド株式会社)
  • 森 雅紀(聖隷三方原病院 放射線治療科)
  • 山口 拓洋(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科医学統計学分野)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 支持・サバイバーシップTR研究部 支持・緩和・心のケア研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人生の最終段階をどのように迎えるか、自らの価値観、今後の目標や意向を明確にし、事前に家族や医療者と話し合うプロセス(アドバンス・ケア・プランニング)は国策として進められているが、標準的な介入手順は提示されていない。患者が治療選択や今後の方針を医師と話し合う際、自らの考えや医師に聞きたいことを整理し、質問や理解を促すための具体的質問集(Question asking Prompt List: QPL)を用いることで、話し合いが促進されることが示されている。我が国においても、難治がんの初診患者への治療選択に関するQPLの有用性が無作為化比較試験により示されているが、患者から医師への質問は欧米(平均5-10)と比べ少なく(平均1)、より高強度の支援が必要であると考えられる。我々は予備的無作為化比較試験により、進行・再発がん患者に対して抗がん剤治療中の早い段階から医療従事者がQPLによる質問支援を行うことで、望ましいコミュニケーション行動(患者が望む情報提供、共感的対話)が増加し、心理的苦痛を改善することを示した。一方で標準がん治療として経口抗がん剤を処方されている患者は、病院内での介入が困難となってきた。そのため場所を問わない介入方法の確立が必要であると考えた。
本研究の目的は、進行がん患者に対する、個別の価値観や意向に添った協働意思決定支援プログラムを開発し、モバイル端末のアプリに実装し、患者‐医師間のコミュニケーション改善への有効性を検証することである。
研究方法
標準がん治療終了後の療養に関する患者と医師のコミュニケーションを促進するための協働意思決定支援プログラムを開発しアプリに搭載する。協働意思決定支援プログラムにはQPLを用いた医師への質問選択、患者の価値観の整理、標準がん治療後の療養の場や希望するケアの選択が含まれる。
予備試験を実施し、意思決定支援プログラムとアプリ内での表現方法を評価・改善する。並行して、介入手順書に基づき介入者を養成する。アプリと症例管理システムを本番環境に移行し、患者登録を開始する。有効性検証試験の開始後、患者登録を継続しつつ、研究成果の活用をスムーズに進めるため、並行して実装可能性の評価のための関係者ヒアリングと、プログラムの評価について検討を開始する。
結果と考察
研究分担者らとともに開発した協働意思決定支援プログラムをアプリ内に表現するため、含まれる介入プログラムの実施項目、実施スケジュール、入力期間、表示名、入力説明文、アラートの設定内容を整理し、アプリ開発用の仕様書に起こしアプリを構築した。研究協力者である患者団体代表より、患者にとってわかりにくい文言、生活リズムに合わせたプログラム実施について助言をもらい、各項目の修正を重ねた。プログラムのアプリ内への実装と並行し、体制を構築し、介入者養成、必要な資材の作成を行った。患者登録を開始し、令和3年度内に進行がん患者88名が参加した。
症例集積の完了と分析が待たれるが、並行して実施可能性評価を行い、早い段階から研究協力者に実装科学研究者を含めて議論を開始したことで、社会実装の検討に取り組むことが出来ている。今後は成果を踏まえた社会実装につながるよう検討を進めていく必要がある。
結論
本年度はモバイル端末上のアプリケーションを用いた協働意思決定プログラムの検証に向けて、プログラム開発とアプリケーション開発を行った。症例登録は順調に進んでおり、今後は有効性検証と実装可能性の評価に取り組む。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,984,000円
差引額 [(1)-(2)]
16,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 716,266円
人件費・謝金 6,836,252円
旅費 0円
その他 1,664,042円
間接経費 2,769,000円
合計 11,985,560円

備考

備考
研究代表者と厚生労働省から直接交付を受ける研究分担者の支出のうち1000円に満たない端数1560円は自己負担した

公開日・更新日

公開日
2023-11-02
更新日
-