現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究

文献情報

文献番号
202108020A
報告書区分
総括
研究課題名
現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケアの実装の推進に関する研究
課題番号
20EA1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 島津 太一(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター行動科学研究部)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 中島 貴子(京都大学 医学部附属病院 次世代医療・iPS細胞治療研究センター (Ki-CONNECT))
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 堀江 良樹(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座)
  • 井上 彰(東北大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、①「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」モデルの実装に係わる方策・実装戦略の開発、②このモデルを実践し、実装・患者・公衆衛生アウトカムの測定、③「現場や地域の実情に即したがん治療と並行する緩和ケア」の均てん化手法の確立を目的としている。
 前年度の調査により、がん患者の生活の質を向上させるケア提供方法について、新たな革新的な技術を用い、①患者自身の問題解決能力を高め、②患者の苦痛を適切にモニタリングし、医療者の負担の軽減と、患者の適切な行動変容の推進等を目指すケア提供体制が望ましいと考えた。また、③厚生労働行政が推進する「がんと診断された時からの緩和ケア」に関する政策とアウトカムとの関係を明らかにし、望まれる施策を明らかにする。さらに、④「進行がん患者に対するスクリーニングを組み合わせた看護師主導による治療早期からの専門的緩和ケア介入プログラムの臨床的有用性を検証するランダム化比較試験」の二次解析を行い、専門的緩和ケアの望ましい提供体制を明らかにする。⑤がん治療後期の意思決定支援のためのプログラム策定、すなわちUnfinished business(UB)概念を中心にすえて、がん患者のUB(いわゆるこころ残り)を最小化するためのプログラムを開発する。
研究方法
①がん薬物療法のために外来通院中の進行・再発性がん患者のコーピングを支援するチャットボットスマホアプリの開発
Step1 相談内容のカテゴリー化、Step2. 解答の作成、Step3 チャットボットの作成、Step4 動作テスト、Step5 患者へのテスト、評価の手順で研究を進める。
② ePROシステム実装における阻害・促進因子の同定
ePROによる症状モニタリング・スクリーニング手法を開発・実装し、実装前・実装後に適切な実装戦略を採用した。実装アウトカムの評価および研究参加者・医療従事者を対象とした調査を実施する。
③「診断時からの緩和ケア」のロジックモデル開発
ロジックモデルと施策案を策定し、施策案に対して独立した外部専門家パネルがデルファイ調査で評価し、合意形成を行った。
④「専門的緩和ケア介入ランダム化比較試験」の二次解析
ランダム化比較試験の二次解析として、介入内容や患者に対するインタビュー調査も分析する。
④がん患者のUB最小化のためのプログラム開発
令和3年度は、UBに関する遺族調査をもとにUBを軽減するプログラムの開発を行った。
結果と考察
各プロジェクトについて、まとめて結論に記述する。
結論
①看護師4,210名、医師499名、薬剤師432名、メディカルソーシャルーカー77名から「進行・再発性がん患者で、診断を受けてからの緩和目的の1次がん薬物療法が不応・不耐となるまで」によく受ける質問・回答が得られた。現在、質問・回答のカテゴリー分類等の作業を遂行中である。本研究により将来的な患者の自己解決・コーピング支援による生活の質の向上、適切な病院受診行動等の行動変容、医療者の負担軽減などに貢献することが期待される。
②令和4年6月まで研究参加者を募集し、8月末まで追跡予定である。本研究により、本邦で実施経験がまだ乏しいePROシステムにおいて、本邦の医療環境での患者や医療従事者が継続して利用する上での課題や方策が明らかになる
③令和3年度総括研究報告書に添付の別紙1-3にて、ロジックモデルの全体像、施策の概念図、デルファイ調査の結果を示した。18の大分類および45の小分類施策草案があり、これらの施策案は64人の外部専門家パネルによって独立して評価された。47の政策提案が合意に到達し、施策の優先度についても評価された。本研究を通して、「がんと診断された時からの緩和ケア」の推進において重要な施策とその評価指標とその因果構造が明らかになり、今後の我が国における厚生労働行政における、がん緩和ケア政策の立案・評価への寄与が期待できる。
④令和3年度は、フォローアップを引き続き行い、研究登録から2年後の生存調査を完了し、量的データの固定および解析を行った。並行して、二次解析や質的分析を行うことで、臨床現場の実情に即したがん治療と並行する専門的緩和ケアの望ましい提供体制を明らかにする。
⑤遺族調査で明らかになった介入の要点は、①医師から余命や具体的にできなくなる見込みについて具体的に説明する、②何か考えるきっかけとなる言葉やきっかけを作る、③してあげたっかたことがあるかどうかを判断してタイミングを逃さないであった。医師が生命予後について説明すること、家族にきっかけとなるパンフレットを提示すること、看護師が日々のケアの中で患者と家族のしたいことのタイミングをはかることを強化する構造化した介入プログラムを作成し、実装した。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,100,000円
(2)補助金確定額
9,099,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 140,316円
人件費・謝金 1,350,192円
旅費 0円
その他 5,509,312円
間接経費 2,100,000円
合計 9,099,820円

備考

備考
分担研究者:国立がん研究センター東病院 松本 禎久先生の分担金残額返還のため。

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-