文献情報
文献番号
202108019A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づくがん情報の迅速な作成と提供のための体制整備のあり方に関する研究
課題番号
20EA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所)
研究分担者(所属機関)
- 河野 浩二(公立大学法人 福島県立医科大学 消化管外科学講座)
- 下井 辰徳(国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科)
- 中島 信久(琉球大学病院 地域・国際医療部)
- 田村 和夫(一般社団法人日本がんサポーティブケア学会)
- 藤 也寸志(九州がんセンター 消化管外科)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 奥村 晃子(公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM医療情報部)
- 早川 雅代(国立がん研究センター がん対策研究所がん情報提供部)
- 大西 丈二(名古屋大学 医学部附属病院)
- 高山 智子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部)
- 花出 正美(がん研究会有明病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
科学的根拠に基づく情報を迅速に国民に提供し、適切な活用につなげるには、持続可能な作成体制、情報の質を担保したどり着きやすくする仕組み、正しい情報の適切な活用を促す支援環境の整備が必要であり、一部のみではなし得ない。本研究では、がんを心配して情報を探し始める場面から適切にがん拠点病院等につながり、患者らが必要に応じて正しい情報を入手できるよう、1)正しい情報の持続可能な作成・提供体制、2)情報の質を担保し、たどり着きやすくする仕組み、3)相談員らによる正しい情報の活用を促す支援環境の整備の3つの観点から(1)持続可能ながん情報提供体制とそれに関わる諸要件の検討、(2)国内外の情報の質を担保する規制を含めた諸要件の整理、(3)情報検索会社とともに実施するがん情報サービスの情報検索パターンや特性による実態把握、(4)相談員用がん情報データベース基盤のがん種の拡張の4つの側面から検討し、結果を統合して提言書をまとめることを目的とした。
研究方法
(1)先行研究班(H29-がん対策-一般-005)で立ち上げられたAll Japanがん情報コンソーシアム体制のもと、パイロット事業として立ち上げられた『患者本位の「がん情報サイト」』を通して、持続可能な情報作成方法とそれに関わる諸要件の検討を行った。(2)自由診療等で行われている保険適応外のがん免疫療法を取り上げ、診療ガイドラインへの掲載を目指してシステマティックレビューを行った。(3)インターネットを介する情報の利用の観点から、「がんの免疫療法」の啓発資料の構成と盛り込むべき要素の抽出、地域の高齢者の健康に関する情報源とインターネットから得る情報に対する信頼性に関する調査、一般市民およびがん情報サービスの利用者のインターネット上での健康や医療の情報検索時の評価や判断基準に関する調査を実施した。(4)相談支援に携わる者の診療ガイドラインの活用実態を把握する調査を実施した。
結果と考察
(1)パイロット事業による開設サイトの検討を通して、患者にわかりやすい情報とするための課題やポイント等が具体的に可視化された。可視化された課題の克服に向けて各組織で担える役割の整理等をAll Japanがん情報コンソーシアム内で情報共有しながら検討を進めていく。(2)今回のシステマティックレビューにより、造血器腫瘍やメラノーマなど一部のがんでエフェクターT細胞療法やワクチン療法の有効性が示された。実際に巷で実施されている自由診療下での免疫療法のエビデンスについて評価を進め、患者や家族等ががん免疫療法を判断する際の手がかりとなる情報の整理を目指す必要がある。(3)科学的根拠が不十分な免疫療法については、標準治療を実施する医師が診療場面でこれらの情報を否定しきれないために生じるミスコミュニケーションが起きている可能性が示唆された。また高齢者を対象とした調査結果からは、健康に関する情報入手時の情報機器利用率は高くはなく、インターネットを介した情報の信頼性も低かったことが示された。一般市民の情報検索時の評価に関する調査結果からは、情報検索はスマートフォンの利用割合が高いこと、情報の信頼性を評価する際の判断基準としてサイトの組織名や複数情報との比較等の重要性は認識されつつあることが示されたが、実際の確認割合は依然低い状況であった。このことから具体的な行動への働きかけを行う必要があることが示唆された。(4)相談員の診療ガイドライン活用に関する実態調査の結果から、相談員の診療ガイドライン活用状況は高くはなく、教育や研修の提供をはじめとする支援環境の整備が求められると考えられた。
結論
各側面から見えてきている実態やパイロット事業等で実施する過程で可視化される課題等をさらに整理し、3年目に向けて提言書の作成を行っていく予定である。
公開日・更新日
公開日
2022-05-27
更新日
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