全国がん登録の円滑な運用のための検証に関する研究

文献情報

文献番号
202108018A
報告書区分
総括
研究課題名
全国がん登録の円滑な運用のための検証に関する研究
課題番号
20EA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん登録センター)
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 柴田 亜希子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所がん登録センター)
  • 南 和宏(統計数理研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2016年1月以降、全国の病院にがん診断症例の届出が義務となる全国がん登録が開始された。2019年に2016年罹患数が995,131例発表され、2015年地域がん登録の罹患数から約9万例増加していたが、2017年罹患数は977,393例と若干少ない値となった。これらは届出の義務化だけでなく届出症例と前年診断例との名寄せの成功率などに影響された結果と考えられている。
全国がん登録制度の運用の安定化と改善と信頼のためには「①データの質評価」と、全国がん登録情報の提供における「②データ匿名化の安全性評価の確立」の2点が必要である。本研究は特にデータの質と安全なデータ利用について、今後の全国がん登録制度の健全な運営を確保するために上記検証活動を行い、今後の体制に反映させることを目的としている。

研究方法
①データの質評価
a.登録数や情報内容の質、及びb.死亡情報の突合確率、の2つの焦点がある。
a登録数については、初年度に全国がん登録の制度的な安定を示す指標について検討した。
b.死亡情報については、住民票照会によって得た生死情報と全国がん登録から得た生存確認情報との差異が生じる可能性がある。初年度同様、2017年症例サンプルについて住民票照会による予後調査を行った。最終年度に、全国がん登録の予後情報と住民票情報の生死情報を突合して、その一致度を計算する予定である。
②データ匿名化の安全性評価の確立
a. 匿名化個票の提供における安全性確保、b.データ公表における秘匿性と有用性確保のバランスの2つの焦点がある。本年度は、2種類のk-匿名化アルゴリズムを実装し、特に外観識別性の高い地域情報に着目して、2つのアルゴリズムが生成するk-匿名化グループのレコード数のばらつきを比較することで、一般化処理に関する実証評価を行った。
結果と考察
3年計画の2年目であり、最終年に向けて、データの質評価のための指標の検討及びデータの収集、データ匿名化の安全性評価のための実証評価を行った。
①データの質評価
・全国がん登録は、正確な罹患数を把握するうえで重要な役割を果たしているが、地域がん登録からの制度移行の影響などもあり、少々不安定なところもある。生存率の集計の前提として、生存確認調査の信頼性の検証を行っておくことは非常に重要である。初年度の検討では、制度移行における罹患統計への影響を反映した指標として、初診届出不明例の数・割合、前届出件数、整理症例数割合などが考えられた。最終年度、これらの指標の算出についても検討する。
・予後情報の精度を検討するために、国立がん研究センター中央病院の院内がん登録2017年症例の通院継続者を除く症例に対し、住民票照会による追跡を行った。4,005人を調査、3,822人に関して住民票照会が可能であり、死亡2,340名、生存1,399名、不明83名(追跡不能77名、除票4名、その他2名)であった。この結果を3年目に2020年の死亡情報が利用可能になった後に、全国がん登録と情報と突合して検討する。
②データ匿名化の安全性評価の確立
地域レベルの一般化による匿名化アルゴリズムは、効率的に動作するものの地域の人口密度を反映した柔軟なグループ化が困難であり、都市部ではk値を大きく上回るグループが多く生成され、人口の少ない地域ではk値を満たすグループが作成されず、多くのレコードが削除される結果となった。この結果を踏まえ、GPS基準点に基づく動的な領域分割処理を行ったところ、匿名化グループのサイズが均一化について大幅な改善が実現できた。GPS位置情報を参照することで、適切な粒度の地域情報の定義が可能となった一方で、市区町村の境界を超えた地域グループも現状定義されている。このような地域情報が分析者のニーズを満たすものであるかの検討は必要であり、匿名化処理された地域情報の可視化方法を検討する予定である。
結論
全国がん登録の開始から5年が経過し、データの活用が進み始めた。今年度は、データの質評価のためのデータの収集、データ匿名化の安全性評価のための実証評価を行った。全国がん登録制度の運用の安定化とデータの精度向上について、本研究班においてその検討を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
10,659,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,341,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,390,894円
人件費・謝金 862,390円
旅費 35,000円
その他 1,602,569円
間接経費 2,769,000円
合計 10,659,853円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の影響により、学会等オンラインで開催されたため旅費がゼロになり研究計画も変更したため、返金が発生した。

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-