がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査研究

文献情報

文献番号
202108017A
報告書区分
総括
研究課題名
がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査研究
課題番号
20EA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 織田 克利(東京大学大学院医学系研究科統合ゲノム学分野)
  • 宮川 清(東京大学大学院医学系研究科)
  • 大江 和彦(東京大学 医学部附属病院 企画情報運営部)
  • 牛久 哲男(東京大学)
  • 田辺 真彦(東京大学大学院 医学系研究科 乳腺内分泌外科学)
  • 鹿毛 秀宣(東京大学 医学部附属病院)
  • 河添 悦昌(東京大学大学院 医学系研究科 医療AI開発学講座)
  • 牛久 綾(篠崎 綾)(東京大学 医学部附属病院ゲノム診療部)
  • 武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 高阪 真路(国立がん研究センター 研究所 細胞情報学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんゲノム医療中核拠点病院等を中心に行われている保険収載された遺伝子パネル検査の診療実態を調査し、がんゲノム医療の推進にむけた課題を抽出することを目的とする。
令和3年度においては、患者アンケート調査を全国の主要医療機関に拡充し、検査実施時の登録情報や説明に関する理解度、結果に基づいた治療検討が行われた割合、実際に治療に結び付いた割合、遺伝カウンセリングの実施の有無
等、患者満足度等について、アンケート結果の中間解析を行い、課題点の抽出を進める。また、全国のがんゲノム医療中核拠点病院、拠点病院、連携病院を対象に施設アンケートを実施し、がんゲノム医療提供体制における調査を開始するとともに、C-CAT利活用検索ポータルの利用申請を行い、統合的な解析を可能とする基盤を整備する。
研究方法
・患者アンケートの実施
研究計画書、患者用アンケート調査票の改訂を行い、実施体制を全国規模で拡充した。
回答率の向上、属性によるバイアス低減を目的に、紙アン
ケートでも回答できるように研究計画書の改訂を行った。さらに、追跡調査(3ヵ月後、6ヵ月後)を実施可能とした。患者アンケート実施施設を78施設(がんゲノム医療中核拠点病院全12施設、拠点病院23施設、検査実績が豊富な連携病院43施設)に拡充した。
・施設アンケートの実施
①施設アンケート-1 (がんゲノム医療実施体制)について、調査依頼実施(2022年1月)時点でがんゲノム医療中核拠点、拠点、連携病院に指定されていた施設全230施設を対象に配布した。
②施設アンケート-2 (推奨治療)
各施設におけるエキスパートパネル実施数、推奨治療に至った症例数、推奨治療に非到達の理由、遺伝カウンセリングが行われた症例数等について、令和 3 年度の「がんゲノム医療中核拠点病院に係る現況報告書」をもとに調査を行う。
結果と考察
Webアンケート、紙アンケートをあわせ、320例以上の回答があり、中間解析を行った。
検査の説明において、CGMCの関与は限定的であるものの、「説明が分かりやすかった」の回答率は高かった。講習等で得られた知識をCGMCが自ら患者・家族への説明に生かせている施設があることが示唆された。
検査に際しての不安として、治療到達性、費用、検査期間がそれぞれ高頻度であった。提案された治療に到達できなかった理由には、国内治験がないというのみでなく、適格基準を満たさないこと、全身状態の悪化も含まれており、検査タイミングの遅れが治療到達性を低下させる要因となっている可能性がある。現時点で治療到達度は7.4%にとどまっており、C-CAT公開データや既報とも同様であった。
二次的所見の開示を希望しない例が12.7%存在しており、その理由は、がん治療に直接関わらないと思ったのが最多であった。検査タイミングの遅れ等により、結果として、血縁者が得られる有益な情報が開示されない、もしくは適切な遺伝カウンセリングにつながっていないことが懸念される。
病院の受け入れ体制についての満足度も65.6%に達していたが、相談窓口がわかりにくかったという回答が多かった。事務職員を含め、幅広くがんゲノム医療を病院職員に知ってもらうことが重要と考えられる。
検査に対する全体の満足度(0~10の11段階でスコア7以上)は65.9%と高く、治療到達性のみが満足度を規定しているものではないことが明らかとなった。がんのゲノム診断、病態の把握、患者の抱えるがんの病状の正確な理解、将来的な治療方針について考える機会を作れたこと等、がん遺伝子パネル検査の意義が画一的でないことが示された。
結論
1. 現状では、検査前説明、検査結果説明ともに、医師の負担が非常に大きい。CGMCをはじめとした人材育成を推進しつつ、講習を受けゲノムに精通したCGMCが活躍できる場が各施設で整備されることが望まれる。
2. 患者側の不安の要因は、新規治療法につながるか、経済的に問題ないかという点も重要ではあるが、がんの進行に伴う全身状態の悪化等、治験を受ける時間的な猶予があるのかも大きな比重を占めている。検査時期による不利益が検査を受けた患者側に生じないようにしていく必要がある。
3. 二次的所見の十分な説明が行われていない課題が存在することが示された。詳細な遺伝カウンセリングや確定診断のための遺伝学的検査、血縁者への遺伝カウンセリングは、原則自費であり、血縁者の健康管理まで含めた二次的所見の開示のあり方について検討する必要がある。
4. 治療到達性の有無が患者満足度に直結することから、治験等の拡充が望まれる。また、治療到達の有無以外に、診断、予後予測、がんの生物学的特性、遺伝との関連等、検査の意義を多面的にとらえることも重要である。

公開日・更新日

公開日
2022-08-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-08-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 45,716円
人件費・謝金 1,836,892円
旅費 0円
その他 5,810,392円
間接経費 2,307,000円
合計 10,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
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