文献情報
文献番号
202108015A
報告書区分
総括
研究課題名
小児・AYA世代がん患者に対する生殖機能温存に関わる心理支援体制の均てん化と安全な長期検体保管体制の確立を志向した研究-患者本位のがん医療の実現を目指して
課題番号
20EA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 小泉 智恵(獨協医科大学 医学部)
- 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学 外科学 乳腺・内分泌外科)
- 杉本 公平(獨協医科大学越谷病院 リプロダクションセンター)
- 川井 清考(高木 清考)(亀田総合病院 生殖医療科)
- 福間 英祐(亀田総合病院乳腺科)
- 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
- 二村 学(岐阜大学大学院医学系研究科・腫瘍制御学講座 腫瘍外科学分野)
- 高井 泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)
- 松本 広志(埼玉県立がんセンター乳腺外科)
- 大野 真司(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター)
- 山内 英子(聖路加国際大学 聖路加国際病院 ブレストセンター 乳腺外科)
- 木村 文則(奈良県立医科大学 医学部 )
- 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
- 根来 宏光(筑波大学 医学医療系)
- 湯村 寧(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
- 高江 正道(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 杉下 陽堂(聖マリアンナ医科大学 医学研究科)
- 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
- 大須賀 穣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
- 杉山 隆(愛媛大学医学部)
- 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
- 太田 邦明(東京労災病院 産婦人科)
- 平山 雅浩(三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座小児科学分野)
- 滝田 順子(京都大学 医学部 小児科)
- 渡邊 知映(昭和大学 保健医療学部)
- 堀江 昭史(京都大学 産科婦人科)
- 小野 政徳(東京医科大学 医学部)
- 宮地 充(京都府立医科大学大学院医学研究科小児発達医学)
- 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
- 慶野 大(神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科)
- 岩端 秀之(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 加藤 雅志(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援部)
- 原田 美由紀(東京大学 医学部附属病院)
- 鈴木 達也(自治医科大学 医学部)
- 前沢 忠志(三重大学 医学部)
- 竹中 基記(岐阜大学 医学部)
- 奈良 和子(亀田総合病院 臨床心理室)
- 北野 敦子(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
- 片桐 由起子(東邦大学 医学部産科婦人科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がんサバイバーシップ(生殖機能)に主眼をおいて、「小児・AYA世代がん患者に対する生殖機能温存に関わる心理体制の均てん化と安全な長期保管体制の確立」目指した6つの研究を行い、成果による政策提言を行う。
研究方法
研究① がん・生殖医療における心理教育プログラムの開発と介入の効果検証:若年成人未婚男性がん患者における精子凍結後の心理教育プログラムの開発並びに若年乳がん患者(未婚)における妊孕性温存の心理教育プログラムの開発を継続した。又、一定水準の専門性の質を担保できるような研修プログラムを開発し、がん・生殖医療専門心理士が活動するそれぞれの地域において、がん患者・家族への心理社会的援助の質の均てん化を図ることを目的とした、がん・生殖医療専門心理士の質的向上を志向した研究を計画した。研究② 認定がん・生殖医療ナビゲーターの教育プログラムと啓発による心理支援強化を目指した研究:がん・生殖医療に関する基礎知識および支援方法に関するe-learning教材を作成し効果検証研究のプラットフォームを完成させた。小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存療法の支援体制構築を志向して、認定遺伝カウンセラー®が、がん・生殖医療のカウンセリングや情報提供に係っていくことを目指し、認定遺伝カウンセラー®のがん・生殖医療へのかかわりの現状把握を目的とした実態調査を施行した。研究③ 小児・AYA 世代がん患者ならびに家族に対するインフォームドコンセントおよびインフォームドアセントの方法の検証に関する研究:動画(幼少期編と思春期編)に関する評価並びに検証を行った。さらに、小児がん患者の移行医療における産婦人科医の関わりの現状を把握し、がんサバイバーシップ向上に資する‟産婦人科への移行医療システム構築”を目的とした実態調査を施行した。研究④ 生殖機能温存を選択できなかった患者の心理支援のあり方に関する研究:生殖機能を温存できなかった・しなかった患者の心理支援のあり方に関する研究を計画立案し実行に移した。一方、小児・AYA世代がんサバイバーを対象とした、がん・生殖医療に関する経済負担に関する実態調査を施行した。研究⑤ 安全で適切な長期検体温存方法および運用体制の構築を志向した研究:本邦における小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存における長期検体保管体制に関する実態調査並びに本邦における胚培養士を対象とした妊孕性温存療法の実施状況調査を行った。研究⑥ がん・生殖医療における里親制度・特別養子縁組制度の普及に向けた研究:がん・生殖医療における里親制度・特別養子縁組制度の普及に資することを目的として、「がんサバイバーに血縁に依らない家族形成のカタチがあることを伝え、豊かな人生設計の選択肢を増やし、これからの歩みを共に考える」ことを目指し、そのために必要な資材作成などを行うための実態調査を施行した。
結果と考察
患者本位のがん医療の実現を目指して、小児・AYA世代がん患者に対する生殖機能温存に関わる心理支援体制の均てん化と安全な長期検体保管体制の確立を志向した研究6つを予定通り進めることができた。
結論
がん・生殖医療に精通する医療従事者(認定がん・生殖医療ナビゲーター、がん・生殖医療専門心理士並びに心理士、薬剤師、看護師、がん相談員等)を育成することで、本領域の啓発並びに均てん化が進み、様々な心理社会的状況下の小児・AYA世代がん患者に対して、個々の状況に応じた多様なニーズへの対応が期待できる。人材育成が進むことによって、平成30年に発布された「がん診療連携拠点病院等の整備について」における「生殖機能の温存に関しては、患者の希望を確認し、院内または地域の生殖医療に関する診療科についての情報を提供するとともに、当該診療科と治療に関する情報を共有する体制を整備すること」が可能になる。また、小児がん拠点病院等において妊孕性温存の情報提供に関する研究成果物が広く使用されることで、がん治療医による意思決定支援拡充の促進が期待される。一方、生殖機能温存を選択できなかった患者に対する心理支援や里親制度・養子縁組制度の普及・啓発が進むことで、質の高い心理社会的支援体制の提供が期待できる。さらに、がんサバイバーに対する女性ヘルスケア管理体制の構築に繋がる成果は、小児・AYA世代がん患者等に対する長期フォローアップの質向上に繋げることができる。また、本研究成果によって本邦おける適切な長期保存運用体制の提案(拠点化の可能性)が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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