ハンチントン病の根本的治療の実現をめざした最新RNAi誘導技術を基盤とする先端的治療法の開発と確立

文献情報

文献番号
200833020A
報告書区分
総括
研究課題名
ハンチントン病の根本的治療の実現をめざした最新RNAi誘導技術を基盤とする先端的治療法の開発と確立
課題番号
H18-こころ・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
北條 浩彦(国立精神・神経センター 神経研究所 遺伝子工学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第4部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、難治性の神経変性疾患であるハンチントン病について、次世代の先端医療技術として注目されているRNAiを用いてハンチントン病原因遺伝子(ハンチンチン遺伝子)の発現を抑制し、ハンチントン病の根本的治療を目指す。そして、そのための基盤となる方法論の確立を行う。H20年度は、H19年度に引続き安全なRNAi治療の実現に向けた研究開発に取組んだ。
研究方法
1) 対立遺伝子特異的RNAi誘導
対立遺伝子特異的RNAiノックダウンの評価システムを用いて、ハンチンチン遺伝子内の多型部位をターゲットとする対立遺伝子特異的RNAi誘導の評価を行なった。また、患者ゲノムDNAを用いて多型部位のタイピングも行なった。

2) コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子解析
霊長類実験動物であるコモンマーモセットを用いて、コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子のクローニングと塩基配列決定を行なった。

3) 異常型ハンチンチンと結合するタンパク質の探索
伸長したポリグルタミン鎖を持つ異常型ハンチンチンタンパク質に結合するタンパク質のスクリーニングを行なった。
結果と考察
1) 対立遺伝子特異的RNAi誘導
ハンチンチン遺伝子内の多型部位に対して、それぞれの対立遺伝子を識別し、ノックダウンすることができるsiRNAを設計し、選定した。さらに患者群において、その多型部位をヘテロで保有する方がいることも分かった。

2) コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子解析
コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子の全タンパク質をコードする(ORF)領域のクローニングに成功し、その塩基配列を決定した。さらに、コモンマーモセット・ハンチンチンを検出するためのツールを選定した。

3) 異常型ハンチンチンタンパク質と結合するするタンパク質の探索
オートファジーと関連するLC3-Iが、異常型ハンチンチンタンパク質と結合することを見出した。
結論
1)対立遺伝子特異的RNAi誘導技術によって、正常型遺伝子を抑制しないで異常型遺伝子だけを特異的にノックダウンさせるRNAi治療の実現の可能性を示すことができた。

2)霊長類実験動物であるコモンマーモセットのハンチンチン遺伝子の単離と塩基配列決定に成功し、霊長類疾患モデル動物作出に向けた有用なツールを選定することができた。

3)オートファジーと関連するLC3-Iが、異常型ハンチンチンタンパク質と結合することを見出した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200833020B
報告書区分
総合
研究課題名
ハンチントン病の根本的治療の実現をめざした最新RNAi誘導技術を基盤とする先端的治療法の開発と確立
課題番号
H18-こころ・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
北條 浩彦(国立精神・神経センター 神経研究所 遺伝子工学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第4部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、難治性の神経変性疾患であるハンチントン病の根本的治療を目指し、次世代の医療技術として期待されているRNA interference (RNAi)法を用いた新しい治療法の開発、そしてその実現のための研究開発を行なった。
研究方法
1) 最新RNAi誘導技術を用いたターゲット遺伝子の発現抑制
Pol IIプロモーター搭載のshRNA発現ベクターによるRNAi誘導系の開発と対立遺伝子特異的RNAiノックダウンの評価システムを用いた異常型ハンチンチン遺伝子の対立遺伝子特異的な発現抑制技術の開発。

2) 霊長類実験動物コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子の解析
霊長類実験動物コモンマーモセットを用いたコモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子のクローニングと塩基配列決定。

3) 異常型ハンチンチンタンパク質とタンパク質品質管理機構の関連についての研究
生化学的手法を用いた異常型ハンチンチンタンパク質と細胞内タンパク質品質管理システムとの関連解析。
結果と考察
1) 最新RNAi誘導技術を用いたターゲット遺伝子の発現抑制
発現制御可能なPol IIプロモーターによるRNAi誘導システムの構築に成功し、さらにハンチンチン遺伝子内の多型部位に対して、それぞれの対立遺伝子を識別し、発現抑制することができるsiRNAを選定した。

2) コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子解析
コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子の全タンパク質をコードする領域のクローニングに成功し、その塩基配列を決定した。さらにそのデータを基に、コモンマーモセット・ハンチンチン遺伝子、遺伝子産物を検出するためのツールを選定した。

3) 異常型ハンチンチンタンパク質と結合するタンパク質の探索
オートファジーと関連するLC3-Iが、異常型ハンチンチンタンパク質と結合することを見出した。
結論
1)Pol IIプロモーターによるRNAi誘導システムを構築し、それを用いてハンチンチン遺伝子の発現を抑制する新しいRNAi誘導システムを完成させた。

2)対立遺伝子特異的RNAi誘導の結果から、正常型遺伝子を抑制しないで異常型遺伝子だけを特異的に発現抑制させるRNAi治療戦略の可能性を示した。

2)霊長類実験動物コモンマーモセットのハンチンチン遺伝子の単離・同定に成功し、霊長類疾患モデル動物作出に向けた有用なツールを選定した。

3)オートファジーと関連するLC3-Iが、異常型ハンチンチンタンパク質と結合することを見出した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200833020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一般的に困難とされ、研究が殆ど進んでいない対立遺伝子特異的(疾患原因遺伝子特異的)RNAi誘導について、そのポテンシャルを持ったsiRNAを設計し、正確な評価によって、その高度なRNAi誘導を実現できることを示すことができた点は大きな成果であると考える。そして、コモンマーモセット・ハンチンチン(Htt)遺伝子を世界で初めて単離し、その構造を明らかにしたことも学術的に大きな成果である。
臨床的観点からの成果
RNAiを取り入れた新しい治療戦略の有用性を示し、さらに安全性の高い対立遺伝子特異的RNAi誘導による(正常遺伝子はそのままで)疾患原因遺伝子だけを特異的にノックダウンする新しい治療法の可能性を示した。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
対立遺伝子特異的RNAiは、副作用の少ない安全な治療法の道を開くものであり、その実現は治療を受ける患者さまの負担を大きく軽減し、さらに医療費の削減にも通ずると考えられる。よって、本研究の成果は、医療行政にも貢献すると考える。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohnishi Y., Tokunaga K., Kaneko K., et al.
Assessment of allele-specific gene silencing by RNA interference with mutant and wild-type reporter alleles.
J. RNAi Gene silencing , 2 , 154-160  (2006)
原著論文2
Sakai T. and Hohjoh H.
Gene silencing analyses against amyloid precursor protein (APP) gene family by RNA interference.
Cell Biol Int , 30 , 952-956  (2006)
原著論文3
Sano, Y., Furuta, A., Setsuie, R., et al.
Photoreceptor cell apoptosis in the retinal degeneration of Uchl3 deficient mice.
Am. J. Pathol. , 169 , 132-141  (2006)
原著論文4
Sun, Y.J., Nishikawa, K., Yuda, H., et al
Solo/Trio8, a membrane-associated short isoform of Trio, modulates endosome dynamics and neurite elongation.
Mol. Cell. Biol. , 26 , 6923-6935  (2006)
原著論文5
Sato, A., Arimura, Y., Manago, Y., et al.
Parkin potentiates ATP-induced currents due to activation of P2X receptors in PC12 cells.
J. Cell. Physiol. , 209 , 172-182  (2006)
原著論文6
Kabuta, T., Suzuki, Y, Wada, K.
Your manuscript entitled "Degradation of amyotrophic lateral sclerosis-linked mutant SOD1 proteins by macroautophagy and the proteasome.
J. Biol. Chem. , 281 , 30524-30533  (2006)
原著論文7
Setsuie, R., Wang, Y.L., Mochizuki, H., et al.
Dopaminergic neuronal loss in transgenic mice expressing the Parkinson’s disease–associated UCH-L1 I93M mutant.
Neurochem. Int. , 50 , 119-129  (2007)
原著論文8
Nishimoto, M., Furuta, A., Aoki, S., et al.
PACAP/PAC1 autocrine system promotes proliferation and astrogenesis in neural progenitor cells.
Glia , 55 , 317-327  (2007)
原著論文9
Tamura Y., Kunugi H., Ohashi J., et al.
Epigenetic aberration of the human REELIN gene in psychiatric disorders.
Mol Psychiatry , 12 , 593-600  (2007)
原著論文10
Hohjoh H. and Fukushima T.
Expression profile analysis of microRNA (miRNA) in mouse central nervous system using a new miRNA detection system that examines hybridization signals at every step of washing.
Gene , 391 , 39-44  (2007)
原著論文11
Hohjoh H. and Fukushima T.
Marked change in microRNA expression during neuronal differentiation of human teratocarcinoma NTera2D1 and mouse embryonal carcinoma P19 cells.
BBRC , 362 , 360-367  (2007)
原著論文12
Yamauchi, R., Wada, E., Kamichi, S., et al.
Neurotensin type2 receptor is involved in fear memory in mice.
J. Neurochem , 102 , 1669-1676  (2007)
原著論文13
Hirayama, K., Aoki, S., Nishikawa, K., et al.
Identification of novel chemical inhibitors for ubiquitin C-terminal hydrolase-L3 by virtual screening.
Bioorgan. Med. Chem , 15 , 6810-6818  (2007)
原著論文14
Ohashi, H., Nishikawa, K., Ayukawa, K., et al.
Alpha 1-adrenoceptor agonists protect against stress-induced death of neural progenitor cells.
Eur. J. Pharmacol. , 573 , 20-28  (2007)
原著論文15
Sakurai, M., Sekiguchi, M., Zushida, K., et al.
Reduction of memory in passive avoidance l;earning, exploratory behavior and synaptic plasticity in mice with a spontaneous deletion in the ubiquitin C-terminal hydrolase L1 gene.
Eur. J. Neurosci , 27 , 691-701  (2008)
原著論文16
Kabuta, T., Setsuie, R., Mitsui, T., et al.
Aberrant molecular properties shared by carbonyl-modified UCH-L1 and familial Parkinson's disease-aasociated mutant UCH-L1.
Hum. Mol. Genet. , 17 , 1482-1496  (2008)
原著論文17
Ohnishi Y., Tamura Y., Yoshida M., et al.
Enhancement of allele discrimination by introduction of nucleotide mismatches into siRNA in allele-specific gene silencing by RNAi.
PLoS ONE , 3 (5) , 2248-  (2008)
原著論文18
Kabuta, T., Furuta, A., Aoki, S., et al.
Aberrant interaction between Parkinson's disease-associated mutant UCH-L1 and the lysosomal receptor for chaperone-mediated autophagy.
J. Biol. Chem. , 283 , 23731-23738  (2008)
原著論文19
Kabuta, T., Wada, K.
Insights into links between familial and sporadic Parkinson's disease: Physical relationship between UCH-L1 variants and chaperone-mediated autophagy.
Autophagy , 4 , 827-829  (2008)
原著論文20
Hohjoh H., Akari H., Fujiwara Y., et al.
Molecular cloning and characterization of the common marmoset huntingtin gene.
Gene , 432 , 60-66  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-