がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究

文献情報

文献番号
202108014A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等の実態把握とがん医療提供体制における均てん化と集約化のバランスに関する研究
課題番号
20EA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター  がん対策研究所 がん登録センター)
  • 谷水 正人(独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター 統括診療部、臨床研究センター)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 吉田 輝彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 遺伝子診療部門 )
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 医学研究支援センター医療統計室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
・所属機関名変更  研究分担者 東尚弘  がん対策情報センター がん臨床情報部(令和2年4月1日~令和3年8月31日)  →がん対策研究所 医療政策部(令和3年9月1日以降)  研究分担者 伊藤ゆり  大阪医科大学 研究支援センター(令和2年4月1日~令和3年3月31日)  →大阪医科薬科大学 医学研究支援センター(令和3年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策基本法第2条で定められた基本理念の一つとしてがん医療の均てん化が定められているが、実態としては専門医の偏在など地域差が繰り返し指摘されている。均てん化の推進のためには、空白二次医療圏を連携により無くし、また、通常の二次医療圏よりも実態に即したがん医療圏を設定することを促すなどの工夫が絶えず検討されている。一方で資源は有限であるため、第3期のがん対策推進基本計画では均てん化の推進とともに、一部集約化すべき事項があると指摘された。これらのバランスをとってがん診療連携拠点病院の整備を進めていくことが必要である。
研究方法
1.現況把握
<がん診療連携拠点病院の調査>
全部の都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、特定領域がん診療連携拠点病院・地域がん診療病院に対し、指定要件に関する調査を行った。調査方法は質問紙とエクセル票から回答者が選択できるようにし、回答者は原則として施設管理者、ただし、施設内の担当部署の回答も可として依頼した。調査は5月から7月まで行った。この結果のまとめとともに、特に苦痛のスクリーニングの実施状況等についても併せて解析を行った。
2.データによる検討
<現状の把握>
 2018年のがん診療連携拠点病院現況報告と、院内がん登録、DPCデータを使って、以下解析を行った。
①2018年当時の現況報告による満たしていない指定要件に関する解析
②院内がん登録の件数と手術件数などの比較
③治療実績に関する公開状況
④がん診療連携拠点病院の標準治療実施割合
<全国がん登録>
全国がん登録のデータ利用の申出を行い、募集要項で要求されている二次医療圏における拠点のカバー率など必要な指標について算出する準備を進めた。この結果については今年度終了しなかったため、結果には含めていない。
3.意見聴取
<厚労省ワーキンググループ(成人)の構成員による意見交換>
後半からがん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループの構成員と、研究班班員を交えて意見交換を数回行った。
<小児がん拠点病院の検討>
小児がん拠点病院の指定要件ワーキンググループに対応するために、研究班やその他の調査結果や資料をまとめて検討することで、現状の論点・課題を整理した。
<がんゲノム拠点病院の指定要件検討>
 がんゲノム拠点病院の指定要件の検討に資する他の研究班との連携などの情報交換を行った。
結果と考察
本年はがん診療連携拠点病院の意見・状況調査を行うとともに、現況報告その他のデータから実態の記述を行い、拠点病院などの指定に関する基礎資料を提供することとした。意見調査からは、小児がん長期フォローアップやAYA世代患者のサポートに、成人拠点が困難を感じていることや、相談支援、苦痛のスクリーニング、セカンドオピニオンの確保に関する体制など、様々な実態が明らかになった。

1.現状把握
調査によりがん診療連携拠点病院が指定要件について持っている意見を伺うことができた。現況報告で状況の把握は行われているが、「充足を継続可能と考えるか」といった質問をすることでその困難性について知ることができるとともに、具体的な指定要件の充足のさせ方や、その内容を実態調査で知ることができるのは改定に向けた検討に役立つと考えられた。一方で意見は勘案しつつ代替案を検討すべきか、それとも困難を乗り越えて整備を進めるべきかは、今後の検討による。コロナ禍による影響については、会議・研修のあり方について検討の余地がある。
2.データからの検討
 データの解析から院内がん登録の特性など様々なことが判明したと考えられ、何を使うべきかなどは検討の余地がある。情報公開のあり方についても、現状が今の時代で十分といえるのか検討しなければならない。また、今回の調査では特に検討していないが、個別の施設での情報公開は医療機関の広告制限に留意すべきなことや、他施設との比較がしづらい、あるいは、集計条件が異なってしまうことがある。これらも実際の情報公開の要件を考えるときには検討しなければならない。
3.意見交換会
 成人の拠点病院の指定要件については制度の開始から時間も経過しており様々な改善点や検討すべき論点があることから、公式なワーキンググループに資する整理を、研究班で行うことは一定の成果があったと考えられる。公式な検討の場というのはどうしても不足しがちであるため、非公式な検討を適宜付加しながら今回のような形で検討するのは、指定要件のように直接、全国の施設に影響のあるものを検討する際の手法として非常に有用であると考えられる。
結論
がん診療連携拠点病院等の指定要件の検討に向けた基礎的なデータや意見収集を研究班によって提供する新しい試みであるが、特に成人拠点において、多様な意見やデータを集約して検討を円滑に進めるモデルとなっていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,700,000円
(2)補助金確定額
22,216,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,484,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,913,658円
人件費・謝金 6,532,594円
旅費 0円
その他 5,070,877円
間接経費 5,700,000円
合計 22,217,129円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症の影響により旅費がゼロになり、研究計画も変更したため、返金が発生した。支出合計金額について、若尾文彦は17,672,856円、伊藤ゆりは4,544,273円であったが、それぞれ856円と273円が自己資金となるため、収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」に1,129円の差異が出た。

公開日・更新日

公開日
2023-08-30
更新日
-