片頭痛に対する画期的治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200833019A
報告書区分
総括
研究課題名
片頭痛に対する画期的治療法の開発に関する研究
課題番号
H18-こころ・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
坂井 文彦(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福内 靖男(福内ペインクリニック)
  • 橋本しをり(東京女子医科大学)
  • 中島 健二(鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設・脳神経内科)
  • 平田 幸一(獨協医科大学内科学(神経))
  • 辻 省次(東京大学大学院医学系研究科神経内科)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学医学部神経内科)
  • 福山 秀直(京都大学医学研究科附属高次脳機能総合センター)
  • 寺山 靖夫(岩手医科大学内科学講座 神経内科・老年科分野)
  • 濱田 潤一(北里大学医学部神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は①片頭痛の病因と病態を分子遺伝学をはじめとした脳科学の先端的アプローチにより解明し、②病態に対する治療薬を開発することである。病態に作用する治療薬の開発には病態の解明が不可欠であるが、片頭痛の病態の理解には近年飛躍的な進歩が見られる。家族性片麻痺性片頭痛では三種類の遺伝子異常が確認され、脳細胞イオンチャンネルの関与がわかった。本研究では分子生物学的手法を中心として片頭痛の素因、誘因から始まる片頭痛の一連の病態を解明し、メカニズムに作用する治療薬の開発を行う。
研究方法
研究方法は、①分子遺伝学的研究、②片頭痛の家族性因子の疫学調査、③臨床的面からの病態と治療法開発の研究、④動物実験モデルによる病態と治療薬の研究、⑤客観的尺度による治療効果評価法の開発、などである。 動物実験モデルは皮質拡延抑制、三叉神経刺激、TRPV1 受容体阻害による脳血管の拡張と炎症の発現を中心に検討する。
結果と考察
第3年度の研究成果としては(1)片頭痛の典型像と考えられる家族性片麻痺性片頭痛発作時における脳内の病態の解明、(2)前兆と頭痛のそれぞれの病態を連結する物質としてMMP9の役割の明確化、(3)現在の治療薬の再評価、(4)痛み伝達を評価しうる片頭痛動物モデルの開発、(5)サイトカインなどの炎症物質の役割の研究、などである。ATP1A2遺伝子exon 20にH916Lのアミノ置換を伴う新規のヘテロ接合性塩基置換を認めたFHM2の日本人家系が確認された。
結論
3年計画の最終年度は、計画された研究が順調に進められた。その成果は片頭痛の今後の研究と新しい治療法の開発にひきつがれるのに充分なものと考えられる。とくに分子遺伝学的研究の進歩は最終的には画期的治療薬の開発への道筋が得られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200833019B
報告書区分
総合
研究課題名
片頭痛に対する画期的治療法の開発に関する研究
課題番号
H18-こころ・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
坂井 文彦(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福内 靖男(福内ペインクリニック)
  • 岩田 誠(東京女子医科大学)
  • 橋本しをり(東京女子医科大学)
  • 中島 健二(鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設・脳神経内科)
  • 平田 幸一(獨協医科大学内科学(神経))
  • 辻 省次(東京大学大学院医学系研究科神経内科)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学医学部神経内科)
  • 福山 秀直(京都大学医学研究科附属高次脳機能総合センター)
  • 寺山 靖夫(岩手医科大学内科学講座 神経内科・老年科分野)
  • 濱田 潤一(北里大学医学部神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
片頭痛に対する画期的治療法を開発することが本研究の目的である。片頭痛治療薬の開発には病態の解明が必須である。新たな病態の理解には分子生物学的アプローチが不可欠であるため、本研究も分子生物学的アプローチを中心として片頭痛の研究を行う。
研究方法
研究方法は、基礎的、臨床的研究により、①家族性片麻痺性片頭痛の病態の研究、②分子遺伝学的研究では片頭痛を多遺伝子脳疾患と捉える。動物実験モデルは、CSD、三叉神経刺激、TRPV1 受容体阻害による脳血管の拡張と炎症の発現を中心に検討する。片頭痛治療候補薬として5HT1D/1F、CGRP、グルタメート、NOS、アデノシンA、ソマトスタチン等のレセプター関連薬、CSD抑制作用薬、イオンチャンネル関連薬などを検討する。
結果と考察
片頭痛では発作間歇期にも血中OrexinAの低値が測定された。発作発現のジェネレータとして視床下部のOrexinが役割を担っていることが示唆された。Orexinは各種ニュートランスシッターの活性をコントロールしている。前兆と頭痛のメカニズムを連結する物質としてMMP9がもっとも重要であることが明らかとなった。頭痛患者では発作間歇期にも血中MMP9の上昇がみられた。片頭痛の痛み発現と伝達にカプサイシン受容体TPRV1がする事が明らかになった。片頭痛の慢性化を予防するためには頭痛体操が有効なことが確認された。後頸部の筋硬結・圧痛をストレッチすることによる効果と考えられている。
結論
分子生物学的手法により、片頭痛の病態に多くの新知見を得ることができた。片頭痛は発作発現様式や症状が多様であることが臨床的に指摘されている。病態の解明により臨床的に多様な症状のそれぞれのメカニズムが明らかとなった。本研究の成果は治療薬の開発にとって極めて重要なステップであったと考えられる。研究の成果は今後の片頭痛治療薬の開発、研究に大きな意味をもつと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200833019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
片頭痛の病態と治療薬の作用機序につき研究し、発作のジェネレターとして視床下部オレキシン、前兆と頭痛を連結するMMP9の役割、痛みの伝達にTRPV1の作用を明らかにした。メカニズムに基づいた治療薬の開発が期待され、Brain Research 誌に掲載された。
臨床的観点からの成果
片頭痛慢性化の予防法に有効な治療法として頭痛体操を考案した。後頸部筋群のストレッチが痛み調節障害を改善し、片頭痛慢性化を予防した。海外でも痛み調節系の研究が行われており、国際頭痛学会で評価された。
ガイドライン等の開発
本研究の分担研究者の多くが参加し平成14年から3年間行った「こころの健康科学研究事業(慢性頭痛の診療ガイドライン作成に関する研究)」班の分担研究者である。ガイドライン作成の期間中に国内外の多くのエビデンス収集され体系化されている。頭痛診療ガイドラインはMINDSから公開されている。本研究の成果にもとづき病態の追記、スマトリプタン自己注射、頭痛体操の項目の追加が必要である。
その他行政的観点からの成果
本研究により片頭痛の疾患概念がより明確となった。片頭痛が治療すべき疾患であることの認識を広める上で、本研究の成果は有用な資料となる。
欧米と比較し、頭痛診療に関する行政の支援体制は必ずしも十分ではない。欧州では頭痛の診療報酬は治療のアウトカムにより支払われる制度も導入されている。エビデンスに基づいた診療システムの構築が必要であり、。
本研究の成果が貢献できる。
その他のインパクト
片頭痛により相当の支障をこうむっている人が多いにもかかわらず、片頭痛が疾患であることの社会的認知度は低い。本研究で明らかとなった片頭痛についての新知見は市民講座、インターネット、メディアを通じて広く普及する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
95件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
87件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-