がん検診の有効性評価に関する死亡率減少につながる頑健性の高い代替指標に関する研究

文献情報

文献番号
202108013A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診の有効性評価に関する死亡率減少につながる頑健性の高い代替指標に関する研究
課題番号
20EA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 濱島 ちさと(帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策分野)
  • 片山 貴文(兵庫県立大学 看護学部)
  • 寺澤 晃彦(藤田医科大学医学部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん検診の有効性評価の指標として、死亡率減少効果が世界標準として用いられてきたが、その成果が得られるのに長い年数を要することから、代替指標がありうるのかを検討する。世界のがん検診ガイドラインで、実際に代替指標での検討があるのか、また代替え指標を用いる条件、課題を文献レビューの手法を用いて検討し、「がん検診の有効性評価のための指標と研究手法に関する手引」を作成することを目的とする。
研究方法
諸外国での先行事例を各国の検診ガイドライン(Cochran共同計画、USPSTF、WEO、IARCなど)での文献検索を元に行った。臓器として子宮頸がん・大腸がん・乳がんを対象とした。これらの活用状況と、実際の使用例、活用できる条件について検討した。
結果と考察
対象となるガイドラインで、死亡率減少効果以外のエンドポイントを評価対象として検討されたものがないかを検索した。子宮頸がん・大腸がんでは代替指標での検討スキームが整理されていたが、乳がんでは検討されていなかった。特に整理の進んでいるWEO-IARCでは新しい検査法を既存の有効性評価が確立した研究手法として比較する場合、第一段階(ラボレベル)は症例群と対照群の判別能(感度・特異度)を比較、第二段階(横断/コホート研究)は同一集団に新しい検査法と既存の検査法を行い感度・特異度を比較。第3段階は無作為比較で既存の検査法と新しい検査法のtest performance(発見率)と中間期がんの比較、第4段階は導入を前提としたpilot 研究として新しい検査法がreal worldで第4段階と同じtest performanceを達成できるか、中間期がんの大きさを評価指標とする。このようなスキームとなった。比較対象となる既存の死亡率減少効果が確認された方法と新しい検査法を比較する場合、発見されるがんの生物学的特徴(悪性度)が大幅に異なる場合は、test performanceの比較だけでは過剰診断の影響を大きく受けてしまう。このため中間期がんの評価を重要視したが、1回検診だけではなく、複数回の検診を行った場合の累積中間期がんの評価を必須条件とした。
結論
検診の有効性評価としての代替指標を用いた評価は一部の臓器で試みられつつある。ただし過剰診断の評価がこれだけでは不十分な評価になるため、比較する既存の検診手法と新しい検査手法との間で発見がんの生物学的悪性度に大きな差がないことが必要である。また比較する既存の検査手法がない臓器に関してはこの指標を用いることはできないので注意が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202108013B
報告書区分
総合
研究課題名
がん検診の有効性評価に関する死亡率減少につながる頑健性の高い代替指標に関する研究
課題番号
20EA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中山 富雄(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 濱島 ちさと(帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策分野)
  • 片山 貴文(兵庫県立大学 看護学部)
  • 寺澤 晃彦(藤田医科大学医学部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん検診の有効性評価の指標として、死亡率減少効果が世界標準として用いられてきたが、その成果が得られるのに長い年数を要することから、代替え指標がありうるのかを検討する。世界のがん検診ガイドラインで、実際に代替え指標での検討があるのか、また代替え指標を用いる条件、課題を文献レビューの手法を用いて検討し、「がん検診の有効性評価のための指標と研究手法に関する手引」を作成することを目的とする。
研究方法
国外の常設ガイドラインであるCochrane共同計画、USPSTF、英国のNational Screening Comittee、カナダのCanadian Task Forceの他、IARC、WEOのガイドラインおよび関連論文を検索し、死亡率減少効果以外の代替指標の利用状況、考え方を整理した。検討臓器は子宮頸・大腸・乳房について検討した。また代替指標の頑健性について死亡率減少効果との一致性があるか、バイアスが混入しうるかについて検討した。
結果と考察
子宮頸がん・大腸がんでは代替指標での検討スキームが整理されていたが、乳がんでは検討されていなかった。特に整理の進んでいるWEO-IARCが採用しているスキームを中心に検討した。新しい検査法を既存の有効性評価が確立した研究手法として比較する場合、第一段階(ラボレベル)は症例群と対照群の判別能(感度・特異度)を比較、第二段階(横断/コホート研究)は同一集団に新しい検査法と既存の検査法を行い感度・特異度を比較。第3段階は無作為比較で既存の検査法と新しい検査法のtest performance(発見率)と中間期がんの比較、第4段階は導入を前提としたpilot 研究として新しい検査法がreal worldで第4段階と同じtest performanceを達成できるか、中間期がんの大きさを評価指標とする。代替指標の頑健性については、比較対象となる既存の死亡率減少効果が確認された方法と新しい検査法を比較する場合、発見されるがんの生物学的特徴(悪性度)が大幅に異なる場合は、test performanceの比較だけでは発見がんに過剰診断が含まれることから、その影響を大きく受けてしまう。このため中間期がんの評価を重要視すべきだが、1回検診での中間期がんの評価だけではなく、複数回の検診を行った場合の累積中間期がんの評価が必須と考えられた。代替指標の利用はあくまで死亡率減少効果が確認された既存の検診手法との間で代替指標の比較が基本であり、既存の検診手法自体がないあるいは死亡率減少効果が確認されていない臓器については、活用できない点に注意が必要である。
結論
がん検診の有効性評価のための代替指標の利用については、一部の臓器で活用のルールが整備されている。死亡率減少効果が確認された既存の検診手法がある場合、新しい検診手法との間で、精度比較を中心とした評価スキームが確立されており、それを用いれば研究期間の短縮は可能である。しかし既存の検診手法との間で発見がんの生物学的悪性度が異なる場合には過剰診断の影響を受けやすいということと、確立した既存の検診手法がない臓器については、適応できないということから、代替指標は制限した利用が必須である。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202108013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん検診の評価指標としてこれまで当該がん死亡率減少効果に代わりうる代替指標とその条件を検討した。子宮頸癌で用いられる浸潤がん罹患率減少効果はバイアスの混入が小さいものの追跡期間が短いと過小評価につながる。大腸がんでの精度評価の積み上げ方式では発見がんの性状が既存の検査と大幅に異なる場合、過大評価になることを示した。今後代替指標の適切な使用で、新しい検診手法の評価期間の短縮が期待できる。
臨床的観点からの成果
大腸がんでの精度評価に用いられるtest performance RCTは、既存の手法と新しい検診手法に割り付けられた群の受診率・発見率が比較されることから、導入を前提としたパイロット研究の意味合いもある。このため有効性評価と導入の課題が並行して検討できることから、開発評価・導入までの期間の大幅な短縮が期待できる。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は、「がん検診の有効性評価のための指標と研究手法に関する手引」としてまとめ、研究代表者の施設のホームページから公開する予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究で示した代替指標の考え方を活用した研究成果を積極活用することで、新しい検診手法の評価を「がん検診のあり方検討会」等で審議することが将来的に可能となる。
その他のインパクト
研究代表者の施設のホームページにおいて、成果物である「がん検診の有効性評価のための指標と研究手法に関する手引」の公開を行うとともに、解説を載せる予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
2023年1月30日に行われた第37回厚生労働省がん検診のあり方に関する検討会で、本研究班の成果をレビューした。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-08-15
更新日
2023-07-04

収支報告書

文献番号
202108013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,800,000円
(2)補助金確定額
10,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,230,846円
人件費・謝金 4,544,800円
旅費 186,760円
その他 1,346,833円
間接経費 2,492,000円
合計 10,801,239円

備考

備考
差額1239円は自己資金を用いた。

公開日・更新日

公開日
2023-10-03
更新日
-