遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の標的治療に関する患者申出療養

文献情報

文献番号
202108006A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の標的治療に関する患者申出療養
課題番号
19EA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山本 昇(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 先端医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 角南 久仁子(関原 久仁子)(国立がん研究センター 中央病院 臨床検査科)
  • 柴田 大朗(国立がん研究センター 多施設臨床試験支援センター)
  • 中村 健一(国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門)
  • 沖田 南都子(国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門研究企画推進部)
  • 森 幹雄(国立がん研究センター 中央病院 臨床研究支援部門 データ管理部 データ管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国で薬事承認済み、あるいは評価療養として実施されている遺伝子パネル検査を受け、臨床的有用性が明確な遺伝子異常を有することが判明した患者を対象として、それぞれの遺伝子異常に対応する適応外医薬品を患者申出療養制度に基づいて投与するバスケット型研究を実施し、治療経過についてのデータを収集することとした。今回の研究期間内に、適応外医薬品の対象となる患者がどれほど存在するかを把握するとともに、それらの患者が有するバイオマーカーの種類や頻度を把握し、適応外医薬品を投与した際の有効性、安全性を収集する。一定の有効性が確認された適応外医薬品については本研究とは別の治験に導出する将来の保険収載に向けた標的なロードマップを整備する。
研究方法
わが国で保険適用済み、あるいは評価療養として実施された遺伝子パネル検査を受け、actionableな遺伝子異常を有することが判明した患者を対象に、それぞれの遺伝子異常に対応する適応外薬を患者申出療養制度に基づいて投与し、治療経過についてのデータを収集することを目的として行う。本研究では保険適用が得られていない適応外医薬品が用いられる。そのため、患者申出療養制度に基づき、臨床研究法下で実施する特定臨床研究に該当する。医薬品は契約に基づき製造販売業者から無償提供を受けることを原則としている。医薬品の無償提供を受けた場合、本研究で収集された患者背景や治療効果、安全性のデータを、契約に基づき薬剤提供企業に提供することを想定している。また、本研究の対象は治験対象外の患者集団であり、これらに対する各医薬品のまとまった治療効果や予後のデータは存在しない。よって、本研究では、がん種別、バイオマーカー別、医薬品別に様々な角度から対象集団の背景因子、治療経過、有効性等を検討することに意義がある。そのため、本研究のエンドポイントは以下とする。
Primary endpoint:各医薬品コホートにおける、測定可能病変を有する患者の治療開始後16週までの最良総合効果に基づく奏効割合
Secondary endpoints:全生存期間、無増悪生存期間、病勢制御割合、有害事象発現割合
登録された患者数に応じて、がん種別、遺伝子異常別、医薬品別にサブグループ解析を行う。また、探索的にがん種別/遺伝子異常やバイオマーカー別の治療レジメンの種類と使用頻度についても検討する。特に各医薬品について一定程度の有効性が期待される結果で終了した場合は、その後の企業治験や医師主導治験につなげることや、関連学会等から、厚生労働省医薬生活衛生局が実施している医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議へ申請し、製薬企業に開発要請を検討する将来的な方向性を勘案する。
結果と考察
令和3年度においては、参加12施設(がんゲノム医療中核拠点病院)から210例の登録が得られ、総登録症例数は343例に至った。また、参加12施設(がんゲノム医療中核拠点病院)で実施されるがんゲノムプロファイリング検査およびエキスパートパネルで浮上した不明点の問い合わせに対応し、治療提案に関する助言を実施した。
試験開始当初から製造販売業者と医薬品提供に関して相談を継続、提供薬剤候補は準備中も含めて20コホート(22薬剤)に達した。また、6施設・4コホートにおいて、対象を小児にまで拡大した。
製薬企業は、試験開始当初、1社のみであったが、登録実績等をみて、本試験の目的に協賛する企業が増え、令和3年度は1社追加、令和4年度にも新たに参画を予定している製薬企業と調整中である。EDC等のデータ登録体制及びがんゲノム情報管理センター(C-CAT)との連携体制構築を進めた。
参加12施設(がんゲノム医療中核拠点病院)とのWeb会議を通じて、安全性情報、症例登録状況、追加薬剤候補情報などの共有を実施した。またSAE情報については、当該施設と密に情報共有を行い、他の参加施設への共有と注意喚起を実施した。
2つのコホートにおいて、症例集積(測定可能病変を有する症例 50例)が完遂、有効性評価のためのデータ解析を開始した
結論
患者申出療養制度を用いた本試験は、がんゲノム医療において遺伝子異常にマッチした治療選択肢を増やすことにおいて一役買っていると期待されると同時に、本試験で得られたsignal findingsが、その後の開発のきっかけになりうる重要な試験である。保険適用される遺伝子パネル検査数の増加や、新規分子標的治療薬の承認に連動して、わが国のがんゲノム医療はますます拡大し、本試験の継続が期待される反面、その実施における経済的基盤の確保も不可避の課題といえる。

公開日・更新日

公開日
2022-08-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202108006B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の標的治療に関する患者申出療養
課題番号
19EA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山本 昇(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 先端医療科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国で薬事承認済み、あるいは評価療養として実施されている遺伝子パネル検査を受け、臨床的有用性が明確な遺伝子異常を有することが判明した患者を対象として、それぞれの遺伝子異常に対応する適応外医薬品を患者申出療養制度に基づいて投与するバスケット型研究を実施し、治療経過についてのデータを収集する。今回の研究期間内に、適応外医薬品の対象となる患者がどれほど存在するかを把握するとともに、それらの患者が有するバイオマーカーの種類や頻度を把握し、適応外医薬品を投与した際の有効性、安全性を収集する。さらに一定の有効性が確認された適応外医薬品については本研究とは別の治験に導出する将来の保険収載に向けた標的なロードマップを整備する。
研究方法
患者申出療養制度下において、全国のがんゲノム医療中核拠点病院11施設(後に静岡がんセンターを追加して12施設へ)から症例登録を実施。治療選択肢となる医薬品については、製造販売業者等から無償提供を受ける。また、参加12施設(がんゲノム医療中核拠点病院)で実施されるがんゲノムプロファイリング検査およびエキスパートパネルで浮上した不明点の問い合わせに対応し、治療提案に関する助言を実施するとともに、EDC等のデータ登録体制及びがんゲノム情報管理センター(C-CAT)との連携体制構築,Web会議を通じた、安全性情報、症例登録状況、追加薬剤候補情報などの共有,SAE情報における密な情報共有、および他の参加施設への注意喚起などを実施する。
また、がん全ゲノム解析等実行計画のための体制構築として、付随するELSI(倫理的・法的・社会的課題)について検討しICF(説明同意文書)案作成、収集臨床情報の内容・収集方法・現場負担軽減策の検討、検体処理・収集・保管等のワークフローの作成、全ゲノム解析における適切なシークエンス解析条件の検討、データ共有・患者還元に関する課題点抽出、解析パイプラインの開発・実装と運用開始を行う
結果と考察
2019年10月に患者申出療養評価会議の承認を得て患者申出療養として告示された。治療選択肢としての医薬品は、試験開始当初は9コホート10薬剤であったが、2021年度には19コホート21薬剤へ拡大、さらに、4コホートにおいては、対象を小児にまで拡大した。2019年10月に1例目が登録されたが、その後、2019年度2例、2020年度131例、2021年度210例、合計343例の登録を得た。製薬企業は、試験開始当初は1社のみであったが、登録実績等をみて、本試験の目的に協賛する企業が増え、令和3年度は1社追加、令和4年度にも追加を予定している。さらに、2021年度には、2つのコホートにおいて、症例集積(測定可能病変を有する症例 50例)が完遂、有効性評価のためのデータ解析を開始した。
結論
患者申出療養制度を用いたバスケット型の前向き臨床研究において、治験・先進医療などへの参加が難しい患者に対して、遺伝子異常にマッチした分子標的治療薬および免疫チェックポイント阻害薬による治療を実施した。全国12のがんゲノム医療中核拠点病院から総計343例の症例登録が得られ、2つのコホートにおいては、症例登録が完了、有効性評価のデータ解析に進めるに至った。治療選択肢となる医薬品については、製造販売業者等から無償提供を受け、試験開始当初は9コホート10薬剤であったが、2021年度には19コホート21薬剤へ拡大、一部は対象を小児にまで拡大した。
このように、わが国のがんゲノム医療における治療機会の提供に大きな役割を担っており、今後も本試験の継続が期待されているところである。

公開日・更新日

公開日
2022-08-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202108006C

収支報告書

文献番号
202108006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
6,066,000円
差引額 [(1)-(2)]
934,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 4,451,557円
間接経費 1,615,000円
合計 6,066,557円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-10-10
更新日
-