パートナーシップでつくるがん統計情報の国民への還元方法に関する研究

文献情報

文献番号
202108002A
報告書区分
総括
研究課題名
パートナーシップでつくるがん統計情報の国民への還元方法に関する研究
課題番号
19EA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
研究分担者(所属機関)
  • 猿木 信裕(群馬県立がんセンター)
  • 片山 佳代子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター (臨 床研究所)がん予防・情報学部)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター  がん情報・対策研究分野)
  • 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所 予防検診政策研究部)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国がん登録が2016年に開始し、がん登録情報の活用がますます求められている。本研究ではがん情報における社会のニーズを把握し、がん登録情報を中心としたがん情報ビッグデータを各種活用し、正しくわかりやすい情報を発信することを目的とする。その際、患者・家族や臨床現場とがん統計やコミュニケーションの専門家がパートナーシップを構築し、国民へのがん情報を還元するために都道府県や医療機関のがん情報発信の支援を行う。
研究方法
① 患者・家族、臨床医・相談支援員のニーズ把握
ニーズの総とりまとめ:がん情報発信をとりまく関係者とともに、がん登録に対する社会のニーズをまとめ、情報発信に関するあり方について検討する会を市民公開講座という形式で開催した。
男性がん患者対象のFGIの実施:
男性特有のアンメットメディカルニーズを捉えるためのフォーカスグループインタビューの音源をデータ化しテキストマイニングすることで、相談行動に結びつきにくい男性患者の本音の可視化を試みた。

② がん登録+臨床情報データセットの作成・解析
 1995-2015年診断患者の6府県の住民ベースのがん登録情報を詳細に分析し、がん種ごとに治療内容の分布や年齢・進行度別生存率のトレンドを分析するとともに、全体のがん患者の生存率の推移に関して、サバイバー生存率の算出を行い、公開の準備を行った。

③ わかりやすい情報コンテンツ作成
グラフツールTableauを使用して、がん死亡率の格差などの視覚的表現を既存の研究結果から引用し、グラフを作成した。国立がん研究センター「がん情報サービス」に追加された「がん種別統計情報」を例として、将来的ながん統計情報の提供方法の課題と展望を考察した。
④地域密着型情報発信(群馬・神奈川)
群馬県:J-CIP群馬のWebサイトを群馬県がん診療連携協議会の承認を得て、更新した。群馬県内のがん診療連携拠点病院等の院内がん登録データを統一したフォーマットで集計して公開する。

神奈川県:J-CIP神奈川のwebサイト開発と運用を行った。地域密着型のがん情報発信の1つとして神奈川県での取り組み「J-CIP神奈川」の支え合える仲間たちというコンテンツに関する運用、更新に関する体制づくり、他地域での拡大を試みた。

⑤がん情報教育コンテンツ開発
行政のがん対策担当者などが、がん統計を視覚化し、評価できるFunnel Plotを使った教育コンテンツの充実を図った。がん情報のコンテンツのわかりにくさを補完するために、がん情報を見る人、作る人を対象としたがんリテラシー向上を目的とした教育コンテンツの作成を行った。一般向けにがん登録について学べるトーク形式の動画を作成した。

結果と考察
令和3年度は患者、行政、臨床医、企業、研究者など様々な立場からがん登録による情報発信について、議論する場を持ち、改めて、がん登録データのあり方や発信の仕方についてまとめることができた。それをふまえて、ニーズに寄せられたより詳細のがん情報として、がん登録とDPCやレセプトなど各種情報を組み合わせて、診療情報と連携し、情報を収集・発信できる方策を検討する必要がある。引き続き、臨床医や各種関連団体との協働を通じて検討していく。
 わかりやすい情報発信は国立がん研究センターのがん情報サービスなど公的な信頼性の高いサイトにいかに誘導し、理解してもらうかが重要となる。がん情報サービス自体の使い方や、その統計データが算出される仕組みなど、国民に分かりやすく伝えるための動画番組などをYouTubeで配信し、信頼できるデータにたどり着ける人を増やす努力を行った。今後もコンテンツを増やし、正しくがん情報を見てもらえるような内容を検討したい。
 地域密着型の情報発信は行政・専門家・患者団体・市民と協働し、また他地域との連携により、発展した。これらの地域の取り組みを参考に他県にも広く展開するような支援が、引き続き重要である。
 がん情報教育コンテンツとして、行政担当者への支援として、がん対策に活用される手法などを中心にツールの紹介および使用方法の動画を作成した。各種がん統計情報を正しく理解し活用することは、今後議論が始まる第四期がん対策推進基本計画の企画・立案において、行政担当者のみならず、委員や省庁メンバー・専門家などすべての関係者に必要となる。そこで、本研究班で作成した情報やツールは、今後、国・地域のがん対策を検討する上でも役立ててもらえることを願う。
結論
がん統計情報を正しくかつ分かりやすく情報発信するために、がん患者や治療・支援を行う者、行政担当者、医療従事者、研究者、一般市民などすべての関係者間で協働して、さらにコンテンツを充実させるとともに、フィードバックをもらい、改善していく必要がある。それにより、正しいデータに基づいたがん対策の企画・立案・評価が実施できる。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202108002B
報告書区分
総合
研究課題名
パートナーシップでつくるがん統計情報の国民への還元方法に関する研究
課題番号
19EA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
研究分担者(所属機関)
  • 猿木 信裕(群馬県立がんセンター)
  • 片山 佳代子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター (臨 床研究所)がん予防・情報学部)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター  がん情報・対策研究分野)
  • 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所 予防検診政策研究部)
  • 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国がん登録が2016年に開始し、がん登録情報の活用がますます求められている。本研究ではがん情報における社会のニーズを把握し、がん登録情報を中心としたがん情報ビッグデータを各種活用し、正しくわかりやすい情報を発信することを目的とする。その際、患者・家族や臨床現場とがん統計やコミュニケーションの専門家がパートナーシップを構築し、国民へのがん情報を還元するために都道府県や医療機関のがん情報発信の支援を行う。
研究方法
①患者・家族、臨床医・相談支援員のニーズ把握
がん情報を必要とする関係者に聞き取り調査を行い、ニーズの把握を行った。がん相談支援内容の詳細分析およびその結果の視覚化を行うことで、がん患者のアンメットニーズを探った。相談支援員への情報提供として、さらに情報をわかりやすく整理した。
 最終年度には、患者、臨床医、相談支援員、企業、行政担当者、研究者とがん統計に関わる様々な立場の視点からがん登録データの社会への期待についてのディスカッションの場を持った。

②がん登録+臨床情報データセットの作成・解析
1995-2015年診断患者の6府県の住民ベースのがん登録情報を詳細に分析し、コンテンツに掲載する生存率の算出を行った。特に、がん種ごとに治療内容の分布や年齢・進行度別生存率のトレンドを分析するとともに、最新の情報に基づく長期生存率の推計や、サバイバー生存率の算出を行った。

③わかりやすい情報コンテンツ作成
 令和元年度に試作したサバイバー生存率を紹介する動画は、②で分析したサバイバー生存率の最新版の公表ともに公開を行う。②で作成している各種統計情報をWeb上で表現するインタラクティブなInfographicツールについて、各種ソフトウェアの情報収集を行った。
また、国内外の既存のがん情報に関するウェブサイトを調査し、人口集団ベースのがん種別統計情報のリストを作成した。海外の事例を参考に、国立がん研究センターのがん情報サービスの統計情報へのアクセスに関して、更新が行われた。

④地域密着型情報発信(群馬・神奈川)
群馬県:群馬県がん診療連携協議会の承認を得て、J-CIP群馬のデータを掲載・更新した。群馬県内のがん診療連携拠点病院等の院内がん登録データを統一したフォーマットで集計して公開した。

神奈川県:J-CIP神奈川のwebサイト制作と運営管理について、一つの事例として、地域密着型のがん情報発信のための組織づくりや患者の体験を共有するコンテンツについてまとめた。

⑤がん情報教育コンテンツ開発
 患者さんやご家族、行政担当者、医療従事者などがん情報を見る人、作る人を対象とした、がんやがん情報に関する教育コンテンツ(動画)を作成し、あるいは、がんやがん情報に関するセミナーや講演の内容を主催者や演者の了解を得た上で、教育コンテンツ(動画)を配信した。作成したコンテンツは、Japan Cancer Information Partnership (J-CIP)のホームページ上の、Empowermentサイトを通じて一般に公開した。



結果と考察
がん情報を活用する様々な立場の方からのニーズ把握に始まり、各種コンテンツや解析ツールなどをWeb上に公開した。実際に、視聴して、使用してみてからのフィードバックに基づく改善ができていないため、今後、フィードバックをもらう機会を設定し、反映させていく。
 がん情報に関するニーズ把握を行うためにがん電話相談の内容を詳細に検討し、確定診断のない者からの相談が多いことが明らかとなった。これまでのがん情報提供サイトではがん予防やがん診断後に関する情報が多かったが、「がん疑い」の方向けの情報提供を行う必要性が示唆された。
 コンテンツの項目の吟味やわかりやすさの確認など作成時において、がん患者・家族の視点が重要であり、開発段階から協働する必要がある。地域密着型のがん情報サイトでは、行政、研究者、患者支援団体が一体となってサイト運営にかかわるスタイルが取られつつある。
 また、行政のがん対策担当者や相談支援者など、がん情報を発信する・伝える側への教育コンテンツも充実を図った。がん統計資料についてその提示方法や限界などを知った上で発信する必要があるため、研修会の機会や動画による講義コンテンツの充実を図っていく必要がある。実際にがん対策推進基本計画の企画・実施・評価を念頭に置いたコンテンツの構成も検討していく。
結論
がん統計情報を正しくかつ分かりやすく情報発信するために、がん患者や治療・支援を行う者、行政担当者、医療従事者、研究者、一般市民などすべての関係者間で協働して、コンテンツを作成し発信を行った。内容のわかりやすさやアクセスしやすさなど、対象者からフィードバックを受けて今後も改善していく必要がある。それによりデータに基づいたがん対策の企画・立案・評価が実施できる。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202108002C

収支報告書

文献番号
202108002Z