文献情報
文献番号
202107026A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルスの小児への影響の解明のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21DA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
- 勝田 友博(聖マリアンナ医科大学 小児科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)症例は成人と比べて軽症であり、外来診療で治癒した小児症例の把握は困難であることから、入院・外来症例も含めて国内で発症した小児COVID-19症例における患者背景、臨床経過、検査結果、重症度、治療内容、長期予後、後遺症に関するデータベースを作成し、評価することを目的とする。
研究方法
研究デザインは観察研究(一部後方視的研究を含む)で、研究期間中における小児COVID-19症例の臨床経過を経時的、または後方視的に評価する。1)日本小児科学会会員に対しHPやML、学会雑誌郵送時に説明文書を添付して本研究の実施を周知し、自院で研究対象症例が発生または既に診療実績がある場合、速やかに専用DBへ入力していただくように依頼する。入力に際しては研究協力施設毎に専用のアカウントが提供され、自施設以外の個別の入力内容は閲覧できない。2) 研究協力施設は、研究対象患者および保護者に対し、本研究が自施設で行われていること、匿名化された情報が日本小児科学会を通じて公開される可能性があることを自施設のHPや院内掲示等により伝えるとともに、情報を公開することを拒否する機会を常に提供する。3)入院中で同意取得が可能な場合は個別患者およびその保護者からICを受けた後に、退院後で同意取得が困難な場合はオプトアウト方式により参加拒否をしていないことを確認した後に、別記の通りの①初回調査項目及び②事後調査項目を専用のDBに入力する。4) 収集されたDBを解析し、国内発症小児COVID-19症例の臨床経過を検討する。5) 本研究で得られた情報は匿名化された後にDB化され、迅速にグラフ化などの可視化がなされ、日本小児科学会HP等で公開されるとともに、WHOやISARICの国際共同DBにおいても二次利用される。登録にあたっては、回答者に他のレジストリへの参加状況を事前に確認する。6)国内で発生した小児重症例を迅速に把握することを目的として、抗ウイルス薬の使用、ICU入院、挿管・ECMOなどの補助療法の導入など、重症症例の基準を満たした症例に対してのみ、重症患者追加調査を主治医に依頼する。7)COVID-19罹患後の後遺症の存在が懸念されている。最終調査に回答していただいた主治医を対象として、長期予後と後遺症に関する追加調査依頼を行う。追加調査は、電子診療録または必要に応じて電話等による保護者へのインタビューにより得られた情報を用いて行う。
結果と考察
本調査結果は、日本小児科学会HPで速報として公開中である。2020年2月1日〜2022年2月20日に登録された 5,129 例のCOVID-19 症例を調査対象とした。調査対象の年齢中央値は 6 歳 5 か月 (IQR: 2歳3か月-10歳9か月) であり、年齢分布は1歳未満:677例(13.2%)、1-4歳:1,435 例 (28.0%),5−11歳:2,072 例 (40.4%),12−15歳:945例 (18.4%) であった。2,419例 (47.2%)が女児で、3,213例 (62.6%) に入院管理がなされていた。多くの症例が、2次・3次医療機関からの報告であり、62.6%は入院を要した症例である。また、レジストリ登録例は国内小児 COVID-19 症例の 0.5%と少ないため、国内症例の全体像をつかめているわけではなく、登録されていない軽症外来患者が多数存在すると推定される。一方、COVID-19発症後6か月以上経過した症例について、COVID-19罹患後症状(long COVID)の発生状況を検討した。1,370例の小児COVID-19症例(年齢中央値:6歳1か月、男性52.5%)が登録され、そのうち3.2%に味覚・嗅覚障害、発熱、咳嗽、倦怠感などの症状が確認された。さらに、long COVIDを認めた小児の一部においては、外来定期通院や、通所・登園・登校の中断を要するなど、日常生活への影響も確認された.小児COVID-19は一般的に軽症であるとされているが、小児へのワクチン接種適応を検討する際には、長期後遺症も考慮する必要がある。特にオミクロン株流行後は臨床的な特徴に変化が見られ、咽頭痛、クループ、嘔吐、痙攣が増えた。継続的な調査を行うことによって、臨床的特徴の変化を捉え、又遷延する症状の実態を明らかにすることが期待される。
結論
小児COVID-19の症状、感染経路、長期に持続する症状について調査し、小児COVID-19の実態について明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2022-08-02
更新日
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