低出生体重児の成長・発達評価手法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202107023A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の成長・発達評価手法の確立のための研究
課題番号
21DA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
河野 由美(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 水野 克己(昭和大学 医学部小児科学講座)
  • 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域)
  • 長 和俊(北海道大学病院周産母子センター)
  • 豊島 勝昭(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 新生児科)
  • 木本 裕香(大阪母子医療センター 新生児科)
  • 九島 令子(東京都立墨東病院 新生児科)
  • 石井 のぞみ(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院 新生児科)
  • 山口 健史(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
  • 橋本 圭司(昭和大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
低出生体重児は、乳幼児期には、小柄なこと、発達の遅れ、発達障害等のリスクが高いことが知られているが、それらの最適な評価法は確立されていない。家族は成長や発達への不安が強く、その支援には地域の医療従事者の関与が必須である。しかし、自治体の乳幼児健診やかかりつけ医の受診時に活用できる、低出生体重児の退院後の成長・発達を適切に評価できるツールがないため評価や対応が十分できていない。本研究は、1)低出生体重児の発育調査により出生後から5歳までの発育の目安となる出生体重群別の身体発育曲線を作成し、2)質問紙による低出生体重児の発達水準のスクリーニングの妥当性の検証を行って、作成した発育曲線および発達評価ツールの検証結果をもとに、低出生体重児の成長・発達のフォローアップ手法を提案することを目的とした。
研究方法
1)発育調査の対象は2012年~2016年に出生した出生体重2500g未満の低出生体重児。出生体重500g毎の5グループに層別化し、各グループ200名以上を目標対象数として男女別に発育曲線を作成する。成長に影響する要因(在胎期間、SGAの有無、合併症)による解析も行う。特性となる基本データ、発育・発達に影響する既往症の有無、合併症の有無の臨床情報と退院後から5歳までの外来受診毎の日付と体重・身長・頭囲の計測値を診療録から後方視的に収集する。最終外来受診が3歳未満の対象は、保護者に依頼して電磁的同意を得た上で、母子手帳の出産の状態、1か月から5歳までの計測値の記載があるページの写真を撮影し専用WEBサイトにアップロードしてもらい、その画像を収集するフォトサーベイを追加する。2)発達スクリーニングツールの妥当性の検証の対象は2017年~2020年に出生し、新版K式発達検査を実施する低出生体重児。発育調査と同様に出生体重500g 毎の5グループに層別化する。新版K式発達検査の結果とASQ-3日本語版のスコア・総合評価、子どもの発達に関する質問票の結果、SDQのスコアとの相関、発達水準の判定との関係から質問紙の妥当性を検証し、影響要因を解析する。
結果と考察
1)発育調査の対象の除外基準を定め、臨床情報、発育値を収集するための調査票を作成した。研究者らの8機関の対象数は全体で約1500人、グループ別では出生体重500g未満が58人、他の4グループは300人以上となった。該当対象の3歳以降の受診率は、出生体重1500g未満のグループはいずれも94%以上であったが、1500~2000gのグループは41%、2000~2500gのグループは23%であった。低出生体重児であっても、出生体重1500g以上では高次医療機関での3歳以降のフォローアップ受診率は低いことが明らかとなった。3歳以降の受診がない例を対象とするフォトサーベイためのWEBサイトを構築し、その運用を確認した。日本新生児成育医学会に研究協力を依頼し、学会会員の所属する76施設から研究協力の回答が得られ、対象数の増加が見込まれた。2)質問紙による発達水準スクリーニングツールの妥当性の検証のための質問紙のうち、日本語版ASQ-3の対象年齢は、すべての年月齢に対応していないため、対応可能な年齢を対象とした。質問紙は、極低出生体重児の新版K式発達検査の評価方法どおり、3歳未満は修正年齢を、3歳以上は暦年齢を用いて選択した。基本情報の収集項目は発育調査の調査票と同じものを用い、新版K式発達検査の結果は、全領域と運動・姿勢、認定・適応、言語・社会の3領域の精密発達年齢と検査実施日を記入し、DQ値は計算されるように作成した。各研究機関で数名に研究協力を依頼した結果、研究の説明、同意取得は、新版K式発達検査予約時や結果説明時に問題無く実施できた。質問紙の記入にかかる時間は10~15分で、保護者に大きな負担は生じなかった。
結論
低出生体重児の90%以上を占める出生体重1500g~2500gの児の多くは医療機関でのフォローアップは比較的短期間で終了していたことから、自治体の乳幼児健診や一次医療機関での成長発達の評価が主体となっていることが明らかとなった。出生体重1500g未満の児であっても、転居等の理由で医療機関でのフォローアップ率は十分とはいえない。本研究で作成する低出生体重児の成長の目安となる発育曲線、発達水準スクリーニングとして妥当性の検証された質問紙を健診などでの成長・発達の評価ツールとして活用することにより、低出生体重児を適切に評価し、必要に応じて専門家への紹介や精密検査などの早期介入が可能となり、低出生体重児と家族への支援につながる。

公開日・更新日

公開日
2022-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202107023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,537,000円
(2)補助金確定額
4,537,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,210,163円
人件費・謝金 429,624円
旅費 0円
その他 850,213円
間接経費 1,047,000円
合計 4,537,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-29
更新日
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