出生前診断の提供等に係る体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
202107018A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前診断の提供等に係る体制の構築に関する研究
課題番号
20DA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学 大学院医学研究科 器官外科学講座 婦人科学産科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 崇弘(京都大学医学部附属病院)
  • 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 基幹研究院)
  • 西垣 昌和(国際医療保健大学大学院)
  • 山田 重人(京都大学大学院 医学研究科)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 病院 臨床検査部)
  • 倉橋 浩樹(藤田医科大学 総合医科学研究所・分子遺伝学)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 佐々木 規子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 左合 治彦(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 浜之上 はるか(横浜市立大学附属病院 遺伝子診療科)
  • 増崎 英明(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座(産科婦人科))
  • 三上 幹男(東海大学医学部)
  • 山本 俊至(東京女子医科大学大学院医学研究科先端生命医科学専攻遺伝子医学分野(遺伝子医療センターゲノム診療科))
  • 久具 宏司(東京大学医学部附属病院)
  • 金井 誠(信州大学医学部附属病院)
  • 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
  • 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科 産科婦人科)
  • 中込 さと子(信州大学医学部保健学科)
  • 福島 明宗(岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科)
  • 福嶋 義光(信州大学 医学部)
  • 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部 病院遺伝子診療カウンセリング室)
  • 三浦 清徳(長崎大学 医学部・歯学部附属病院)
  • 吉田 雅幸(国立大学法人東京医科歯科大学 統合研究機構)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 江川 真希子(東京医科歯科大学 血管代謝探索講座)
  • 大磯 義一郎(浜松医科大学 医学部法学教室)
  • 小門 穂(神戸薬科大学 薬学部)
  • 小林 真紀(愛知大学 法学部)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学 医学部)
  • 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産科婦人科学講座)
  • 竹内 千仙(東京都立北療育医療センター 脳神経内科)
  • 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
  • 渡部 沙織(東京大学 医科学研究所 公共政策研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(Non-Invasive Prenatal Testing: NIPT)が平成25年度より臨床研究として開始されたことにより、出生前診断に関する遺伝カウンセリングの重要性に焦点が当たっている。しかし、出生前診断に関する遺伝カウンセリングの全てに臨床遺伝の専門家が対応するには限界があり、さらに本邦の産婦人科医は減少傾向にあるため、有効な人材活用に向けた教育体制の構築が必要である。一方で、出生前診断の受け手側である妊婦自身が、自律的な判断が出来るようなリテラシーの醸成を含めて、社会体制を整備することも、出生前診断のシステム構築を効率よく行う上で極めて重要な課題である。本研究班は、前身となる久具班(平成25年度)、第1期小西班(平成26〜28年度)、第2期小西班(平成29〜令和元年度)を通じて、一貫してこの問題の解決に取り組んできた。今回は第3期となり、(1)出生前遺伝学的検査ネットワークの構築、(2) 遺伝カウンセリング研修プログラムの評価と改善、(3) NIPTを巡る海外事情の調査 を目的とした。
研究方法
研究班全体を3グループに分け、それぞれ第1〜第3分科会として、以下のテーマに分かれて研究を行った。第1分科会:出生前遺伝学的検査ネットワークの構築、第2分科会:遺伝カウンセリング研修プログラムの評価と改善、第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討
結果と考察
各分科会に分かれて研究を実施し、年2回の全体会議で方向性の統一を図った。主にオンラインで打ち合わせを行った。(1) 出生前遺伝学的検査ネットワークの構築において出生前遺伝学的検査の提供者、対象となる疾患の罹患者に対する医療提供者、そして遺伝学的検査や遺伝カウンセリングといった遺伝医療の提供者などのステークホルダーの協働が重要である。現在、厚生労働省が主導して出生前検査の体制整備が進んでいるが、そこで必要とされる妊婦への説明書である「NIPT 非侵襲性出生前遺伝学的検査」を完成させた。本説明書は概ね中立的であるとの評価を受けていた。また、「出生前検査認証制度等運営委員会」の情報提供ワーキンググループと連携して作成した産科医療機関で使用するリーフレットを完成させた。今後、両文書は「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」によって構築されるNIPTの実施体制の中で使用される予定である。(2) 出生前診断の体制構築において、一般産婦人科における適切な一次対応が重要となる。本研究班では、その前身段階から、出生前診断の一次対応を担う医療者に対する教育資材の開発を行ってきた。出生前診断に関する遺伝カウンセリング研修プログラムを改訂し、評価を行った。講義に関しては、知識のアップデートと全体の統一感を保つことの難しさがあった。ロールプレイ研修についても、座学だけでは学べない部分を補完していた。これまでの検討で目標到達が難しい学習者が一定数存在していたが、学習者にあわせた運用を改善させ、学習効率を上げることができた。(3) 各国のELSI対応体制を評価するために、前年度までに設定したリプロダクティブ・ヘルス/ライツおよび障害児・者支援それぞれの領域のQuality Indicator(QI)について、海外諸国の調査を実施した。その結果、日本における出生前検査に関するELSI対応体制について、その基盤となるgender equity、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、そして障害者権利について、立法をふくめた制度設計の推進、一般社会における文化・リテラシーの涵養が喫緊の課題であることが明らかとなった。
結論
結論として、(1)各学会や厚生労働省などによりNIPTの実施方法が検討されるのに並行して、新しいシステムで活用しうる患者への説明書である「NIPT 非侵襲性出生前遺伝学的検査」を完成させた。また、「出生前検査認証制度等運営委員会」の情報提供ワーキンググループと連携して作成した産科医療機関で使用するリーフレットを完成させた。(2)産科医療の一次対応としての出生前診断に対応した遺伝カウンセリング教材の改訂を行った。(3) 諸外国との比較から、日本における出生前検査に関するELSI対応体制についての課題が明らかとなった。
 NIPTの一般診療化に向け、現時点で確立された研修システムについて、持続的な運営を今後どのように行うかが大きな課題である。これらの課題はあっても人材育成は国民に対して責務を果たすために重要な課題であり、持続可能なシステムの構築が必要では無いかと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-12-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202107018Z