出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究

文献情報

文献番号
202107015A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究
課題番号
20DA1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
白土 なほ子(内野 なほ子)(昭和大学 医学部産婦人科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 病院 臨床検査部)
  • 左合 治彦(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 柘植 あづみ(明治学院大学 社会学部)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
  • 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産科婦人科学講座)
  • 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
  • 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科 産科婦人科)
  • 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科総合女性医療システム学講座)
  • 山田 重人(京都大学大学院 医学研究科)
  • 清野 仁美(兵庫医科大学 精神科神経科学講座)
  • 田中 慶子(慶應義塾大学 経済学部)
  • 池本 舞(昭和大学藤が丘病院 産婦人科)
  • 廣瀬 達子(昭和大学 医学部産婦人科学講座)
  • 菅野 摂子(明治学院大学 社会学部)
  • 和泉 美希子(昭和大学 昭和大学病院 臨床遺伝医療センター)
  • 宮上 景子(昭和大学 産婦人科)
  • 坂本 美和(昭和大学 医学部産婦人科)
  • 水谷 あかね(昭和大学 医学部 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生前遺伝学的検査について(1)社会的に理解される検査体制と(2)充実した妊産婦への支援体制を構築することを目的に研究①-⑤を行っている。
研究方法
研究① 2021年2月に一般女性のうち出生前検査・不妊治療経験者の思いに対する設問を追加検討した。 研究② 2021年12月に研究①と同様にWeb調査を20-44歳の一般妊産婦、妊婦2000名、褥婦1000名を目標に施行した。調査内容は出生前検査に対する認識や医療/行政機関への期待、分娩方法の選択に関する考え、COVID-19流行禍の妊娠・出産への影響についてである。 研究④ 2021年10月に出生前に児に問題点が検出された妊婦やパートナーに対する支援方法や支援体制の充実が重要であるという視点で、出生前検査を実施している590施設に対しWeb調査を行った。 研究⑤ 妊娠についての相談支援体制に関する諸外国の取り組みを海外論文/Web調査した。
結果と考察
研究① 2020年12月一般男女の出生前検査についての知識・意識調査では、出生前検査を希望する女性について、婚姻や妊娠経験、学歴、地域性などの特徴を明らかにし、未婚など妊娠を考える前にある人や、高学歴の人ほど出生前検査を希望している傾向が見いだせた。また、男性の中絶に対する態度に、基本属性を含む社会経済的要因よりも、身近な人の健康上のリスクや出生前検査に対する考えと関連が強いことが示された。2021年2月追加調査では妊娠既往のあるART群では全く知らない出生前検査項目があり、半数は「医療者からすべての妊婦に説明すべき」と考える一方、出生前検査受検対象は「条件に合う人だけ」と慎重に考える傾向が見られた。出生前検査に対し知識や意識に違いがあることも踏まえたGCの必要性が示唆された。また、NIPT経験、ART経験の有無で群分けし両者の出生前検査への意識を検討した。研究② 単純集計の段階ではあるが一般女性も妊産婦も「医療者は出生前検査についての説明を妊婦にしなければならない」と7-8割が回答しており、適切な情報提供が必要であることが示唆された。また一般女性に比し妊産婦では、「胎児について多くのことを早くから知りたい」と考える一方で、「治せる病気でなければ不安になる」との出生前検査に対する複雑な考えが顕著であり、妊産婦という心理社会的背景を踏まえた適切な情報提供の必要性がうかがえた。研究④1次医療施設調査では316件(54%)の回答を経ており、22週未満で「出生前検査陽性」と診断された症例には様々な医療従事者が関わっていたが、遺伝専門職としては産婦人科の遺伝専門医が「必ずかかわる」施設が半数であった。支援体制について出生前検査陽性症例の妊娠を継続した場合より中絶した場合の方が医療機関においても行政機関においても面談、紹介を施行することは少なく、中絶した場合の支援体制が少ないことが示唆された。2021年12月からの2次調査で出生前検査陽性妊婦に対応している医療従事者個人対象の調査を実施し、全国113施設204人の多職種からの回答を得た。出生前検査陽性症例への対応業務は自身の他の業務と比較して「負担、症例によって負担に感じる」と74%が回答しており負担要因についても検討した。研究⑤ 出生前検査後のフォローについて、諸外国の妊娠相談の現状について、妊娠・育児を含めて検討した。
結論
研究①令和2年の調査に追加し、令和3年に重要項目のクロススタディーに加え、自由記述欄への回答の分析を行った。その結果、NIPTを含む出生前検査の実施における妊婦への情報提供がより適切に行われる体制づくりや、遺伝カウンセリング、検査前後の相談・支援のあり方、妊娠・出産、育児へのサポートのために、有意義な資料を報告した。研究②「出生前検査に関する一般妊産婦への意識調査」を行った。出生前検査に対する認識や分娩方法の選択に関する考え、COVID-19流行禍での妊婦の意識について調査した。今後、各項目のクロススタディーを実施し、研究①で調査した一般女性の意識との比較など、実態調査解析を行う。研究④各医療機関における出生前検査陽性症例の対応や取り組みを詳細に把握にするには限界があるが、支援体制について出生前検査陽性症例を継続した場合より中絶した場合の方が医療機関においても行政機関においても面談、紹介を施行することは少なく、支援体制が少ないことが示唆された。また、症例によっては精神科や心療内科の医師が関わることが示唆されたが、具体的にどのような診療が行われているかの実態は把握できなかったため、それら診療科の医師を対象にした調査も計画する。研究⑤出生前診断後のフォローアップ体制の構築が望まれ、アフターケアでは、悲嘆のカウンセリング、亡くなった児の存在を認めること、将来の妊娠の可能性などに注意を払うべきである。

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-12-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202107015Z