文献情報
文献番号
202107013A
報告書区分
総括
研究課題名
ドナーミルクを安定供給できる母乳バンクを整備するための研究
課題番号
20DA1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
水野 克己(昭和大学 医学部小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 櫻井 基一郎(千葉市立海浜病院 新生児科)
- 和田 友香(佐野 友香)(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科)
- 谷 有貴(辻本 有貴)(奈良県立医科大学 医学部)
- 新藤 潤(東京都立小児総合医療センター 新生児科)
- 西巻 滋(横浜市立大学附属病院 臨床研修センター)
- 田 啓樹(昭和大学 医学部)
- 宮田 昌史(藤田医科大学 医学部小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は以下の3点にある。
A)NICU入院中の早産児でドナーミルク(以下、DHM)を必要とする児には安定して幅広く提供できるシステムを整備すること。
B)より広くDHMを利用できるために現状の問題を把握し、解決するための方策を立てること。
C)NICU入院中の児に対するDHM利用のエビデンスを構築すること。
A)NICU入院中の早産児でドナーミルク(以下、DHM)を必要とする児には安定して幅広く提供できるシステムを整備すること。
B)より広くDHMを利用できるために現状の問題を把握し、解決するための方策を立てること。
C)NICU入院中の児に対するDHM利用のエビデンスを構築すること。
研究方法
日本橋母乳バンク(以下、日本橋バンク)開設により2021年度はすべてのドナーミルク利用施設に360人を超える児に提供できた。現在の2022年に入ってからも利用施設は増えてはいるものの、全国の総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センター総数からみると、まだドナーミルク利用が十分に広がったとは言い難い。今回、母乳バンクを利用しやすくするためにドナーミルク利用開始マニュアルを作成した。また、実際に母乳バンクを利用している施設に具体的なドナーミルク利用方法やドナーミルク利用における問題点をアンケート調査を行い、母乳バンクの改善すべき点を明らかにする。また、ドナー登録を円滑に進めるためにドナー登録マニュアルを作成した。令和3年度末時点で、日本橋バンクのキャパシティーでは限界を迎えており、今後、ドナーミルクを安定して供給できる母乳バンクを整備するために、母乳バンク教育ツールも作成し、母乳バンクでの衛生管理を統一できるよう取り組むこととした。
結果と考察
A) 日本橋バンクを設立したことで月間90ℓの低温殺菌処理を行っている(最大で1か月に150ℓの処理が可能)(ただし、15%程度は細菌検査結果や破損のため廃棄されるため、提供可能なDHM量は約75ℓ(最大で125ℓ))。
B)母乳バンクを利用する施設は毎年増加してはいるものの、早産・極低出生体重児を診療する日本すべてのNICU施設からみれば、1割程度にすぎない。超早産児の生後早期の経腸栄養において、人工乳を使用する施設が少なくないことがわかった。母乳バンクが必要であると答えた施設の割合は9割以上であり、今後、利用したいと答えた施設が6割近くあった。利用に際して問題となっていることは正会員となるための資金、倫理審査、両親への説明などがあげられた。東海ネオフォーラムは全21施設が正会員登録しているが、実際に利用している施設は2施設のみであり、資金の問題だけではないことがわかる。
C) データ登録には、各DHM使用施設における倫理審査で承認されることが必要なため、登録までに時間を要する施設も散見される。ADVANCEについては進行中であり令和3年度には経過を報告できると思われる。
B)母乳バンクを利用する施設は毎年増加してはいるものの、早産・極低出生体重児を診療する日本すべてのNICU施設からみれば、1割程度にすぎない。超早産児の生後早期の経腸栄養において、人工乳を使用する施設が少なくないことがわかった。母乳バンクが必要であると答えた施設の割合は9割以上であり、今後、利用したいと答えた施設が6割近くあった。利用に際して問題となっていることは正会員となるための資金、倫理審査、両親への説明などがあげられた。東海ネオフォーラムは全21施設が正会員登録しているが、実際に利用している施設は2施設のみであり、資金の問題だけではないことがわかる。
C) データ登録には、各DHM使用施設における倫理審査で承認されることが必要なため、登録までに時間を要する施設も散見される。ADVANCEについては進行中であり令和3年度には経過を報告できると思われる。
結論
母乳バンクを利用する施設は増加しているが、2019年に日本小児科学会から出された”早産・極低出生体重児の経腸栄養に関する提言”に従いドナーミルクを利用すべき超早産児もいまだに人工乳が与えられている。本研究班での大きな課題として、データベース登録からエビデンスの構築がある。ドナーミルクを利用することでどのような利点があるのかエビデンスを構築することで、早産・極低出生体重児の栄養としてドナーミルクが標準となっていくと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2022-07-04
更新日
2022-08-02