HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202107012A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究
課題番号
20DA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
  • 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
  • 宮沢 篤生(昭和大学医学部小児科学講座)
  • 時田 章史(公益社団法人 日本小児科医会 公衆衛生委員会)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高 起良(大阪鉄道病院)
  • 井村 真澄(日本赤十字看護大学 大学院 看護学研究科 国際保健助産学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集と課題整理を行い、自治体と連携した支援体制の構築、および授乳指導の標準化の推進を目的とする。昨年度までにHTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集、課題整理HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集と課題整理、児のフォローアップ体制の検討、HTLV-1 母子感染予防法の科学的エビデンスの収集と標準化した指導法(キャリア妊婦の心理的支援を含むニーズに対応した内容)の確立については一定の結果を得ているので、本年度は、これらを背景に、厚生労働行政推進調査事業板橋班によるHTLV-1母子感染予防マニュアル(板橋家頭夫2017)の改訂を主要な研究課題に据えた。
研究方法
本研究推進のため、以下の5つの大課題を設定した。
1.HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集、課題整理
HTLV-1 キャリア登録ウェブサイト「キャリねっと」を用いた授乳方法、相談支援体制についてのアンケート調査を継続して解析を行った。新たに追加調査すべき項目を検討し、新バージョンによる追加調査を行う。
2.自治体と連携したキャリア妊婦、家族の相談支援体制の検討
2-1)東京地区の実態調査 
2-2)東京ネットワークの運用と問題点の検討 産婦人科、小児科、内科の連携システム東京ネットワーク(産婦人科拠点6施設、小児科16施設、内科拠点1施設)構築を行う。
2-3)事例検討 今年度は鹿児島県、神奈川県、大阪府の現状について調査を行う。
2-4)内科側からの検討 日本HTLV-1学会登録医療機関の年次調査データを元に産婦人科領域との連携の実態を明らかにする。
3.児のフォローアップ体制の検討 昨年度の検討結果を6.の母子感染予防マニュアルの改訂に反映させる。
4.HTLV-1 母子感染予防法の科学的エビデンスの収集と標準化した指導法の確立
板橋班のコホート研究、システマティックレビューなどの結果をもとに、HTLV-1母子感染標準予防法について検討し、板橋班で作成されたHTLV-1母子感染予防マニュアルの改訂第2版を作成することとし、下記課題6.を設定した。
5.HTLV-1 母子感染予防に関する研修会の開催・研修資材の作成
下記マニュアル附随のコンテンツを作成する。
6.改訂版母子感染予防マニュアルの作成
1.~6.の研究結果をもとに母子感染予防対策マニュアルの改訂第2版を作成する。
結果と考察
メタアナリシスを含む板橋班の研究結果をもとに、研究班内で新しいHTLV-1母子感染予防対策の標準についての検討を重ね、90日以内の短期授乳でも完全人工乳と比べて母子感染率の上昇は見られないという結果であったこと、そのエビデンスレベル、短期授乳を選択肢として許容するために必要な条件などを明かにした。板橋班研究により、適切な授乳支援が行われなければ20%程度が短期授乳を選択してもその完遂が困難であると推定されることから、支援体制の整備が必須条件であり、その整備と並行して短期授乳を選択肢として許容していく方針で一致した。この方針に従ってHTLV-1母子感染予防対策マニュアルの改訂版を作成した。完全人工乳が理論的に最も確実な母乳感染予防法であるが、ウェブ調査の結果では、感染率が変わらないのであれば短期間の母乳授乳をしたいという意見が40%以上見られ、感染防止のみではなく、母乳授乳の母子にとってのメリットという視点も考慮に入れるべきだと考えられた。
結論
HTLV-1母乳感染を防ぐ最も確実な方法は、完全人工乳で哺乳することであるが、先行研究班の研究の結果、90日以下の短期授乳により完全人工乳の場合に比べて、母児感染率が上昇しないことが明らかになった。現状でも20~30%のキャリア妊婦が短期授乳を選択しており、特別の支援がなければ20%程度が4か月以上の授乳に移行していると推定される現状も踏まえ、確実に短期授乳を遂行できる支援体制を整備して、その条件が整っている条件で短期授乳を選択肢として容認することが適切と考えられ、2017年版の母子感染予防対策マニュアルの改訂を行った。母児双方の支援、授乳法の如何に寄らないキャリアマザーの支援体制が必要であり、小児科と連携体制、日本TLV-1学会登録医療機関をはじめとする内科との連繋体制の構築など連繋体制の構築、強化が重要であり、地域ごとに都道府県母子感染対策協議会など行政による連繋の促進が重要と考えられる。他県における都道府県母子感染対策協議会の運営事例の共有なども有用と考えられ、子育て支援包括支援などの既存の体制に組み込んでいくことも検討に値すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-12-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202107012Z