薬物治療モニタリングによる造血幹細胞移植成績の向上に関する研究

文献情報

文献番号
200832054A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物治療モニタリングによる造血幹細胞移植成績の向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・若手-029
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大島 久美(自治医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豆津 宏二(NTT東日本関東病院 血液内科)
  • 森 有紀(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科)
  • 山本 久史(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物治療モニタリング(TDM)では、薬物による毒性を最小限に抑えより効果的な治療を行うために、個々の患者の血中薬物濃度を含む様々な因子を測定しながら、用量・用法を個別化した薬物投与を行う。造血幹細胞移植では、前治療や前処置関連毒性、合併症による臓器機能障害の併存が多いこと、多数の薬剤を併用するため薬物体内動態が影響を受け易いこと、副作用が重篤な薬剤や有効治療濃度域が狭い薬剤を多く使用することから、TDMを導入することによる利益が特に大きい。本研究では、通常の造血幹細胞移植診療にTDMを取り入れ、免疫抑制剤と抗菌剤を中心により安全で効果的な有効治療濃度の設定と投与量・投与法の検討を行い、移植成績の向上を目指す。
研究方法
免疫抑制剤と抗菌剤を中心にして適切なタイミングで薬物血中濃度測定を行いながら、臨床所見とあわせて評価を行っていく。まず、各研究者の臨床経験をまとめて基礎データとし、これまでの報告を参考として臨床研究計画を立案し、実施計画書を作成する。さらに、症例を蓄積し、十分な症例数が蓄積した研究についてはデータの解析と検討を行う。
結果と考察
これまでの主な研究結果を示す。シクロスポリンについては、高濃度での使用を目指した「目標血中濃度を500 ng/mlに設定したシクロスポリン持続静注の安全性と有効性の検討」の症例を蓄積中である。さらに、投与方法変更時の用量検討を目的とした「持続静注から経口への投与経路変更時のシクロスポリン血中濃度の検討」の研究計画を立案し、倫理委員会の承認後、症例登録を開始した。ガンシクロビルについては、腎機能障害時のガンシクロビル血中濃度のデータに基づき、「投与後4時間値を用いたガンシクロビルの血中濃度下面積とサイトメガロウイルス感染症の予防効果の関係の検討」の実施計画書を作成した。ボリコナゾールについては、臍帯血ミニ移植患者における真菌感染症予防薬としてのボリコナゾールの安全性と有効性を評価し、ボリコナゾール血中濃度が全般的に低い値であったにもかかわらず良好な予防効果を得ることができることを示した。
結論
本研究により、直接的には個々の免疫抑制剤や抗菌剤の投与量・投与法が適正化される。適正化により、GVHD発症率の低下や真菌感染症・ウィルス感染症の発症率の低下と感染症治療成績の改善が期待できるだけでなく、薬剤投与による毒性の軽減が可能になり、移植成績の向上をもたらす。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-