文献情報
文献番号
202107010A
報告書区分
総括
研究課題名
母子健康手帳のグローバルな視点を加味した再評価と切れ目のない母子保健サービスに係る研究
課題番号
20DA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中村 安秀(国立看護大学校 看護学部)
研究分担者(所属機関)
- 川上 浩司(京都大学 大学院医学研究科)
- 杉田 匡聡(NTT東日本関東病院 産婦人科)
- 杉下 智彦(東京女子医科大学 医学部 国際環境・熱帯医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,347,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本の母子健康手帳(以下、母子手帳)は、戦後日本の母子保健水準の向上に大きく寄与したといわれ、近年国際的に高い評価を受けている(Nakamura 2019)。2018年には世界医師会は母子健帳の開発と普及に関する声明を採択し、世界保健機関(WHO)は母子の家庭用記録に関するガイドラインを出版した。
本研究では、日本の母子手帳に対する研究と同時に、海外に広まった母子手帳をも課題対象とすることにより、母子手帳という日本発の画期的な媒体が果たす役割をグローバルな視点を加味して再評価する。
本研究では、日本の母子手帳に対する研究と同時に、海外に広まった母子手帳をも課題対象とすることにより、母子手帳という日本発の画期的な媒体が果たす役割をグローバルな視点を加味して再評価する。
研究方法
令和3年度は、「国内実態調査」(保護者に対する利活用調査、保健医療者へのインタビュー調査)、「歴史分析」(国内文献調査と海外システマティックレビュー調査)、「海外実態調査」(国際ウェビナーの開催)、「デジタル分析」(デジタル母子手帳に関する調査準備)、「多様性分析」(母子健康手帳サブブックに関する文献調査、低出生体重児に関する事例収集)を実施した。
結果と考察
海外システマティックレビュー調査において、2,643名の女性を含む7件のランダム化比較試験(RCT)論文が含まれた。介入群の女性は、妊婦健診(6回以上)を受診する確率が高く、出産時に医療従事者による介助を受ける割合が高かった。早期母乳育児の実践は、介入群の方が有意に多かった。また、介入群の方が、妊婦健診時の妊婦の自律性、医療従事者とのより良いコミュニケーション、家族からの支援がより高い結果となった。
母子健康手帳の利活用に関する保護者を対象とした調査において、母子手帳は子どものものであると認識する人が多く、一番役に立った内容と場面は予防接種の記録であった。スマホでの閲覧や記録を改訂版に要望する人が50%以上であり、ページ検索性や、父親の関与の促しの工夫の要望があった。母子保健専門職によるフォーカスグループインタビューでは、妊娠経過の確認や出産後も継続できる記録などを、情報収集ツールとして活用していた。今後の母子手帳のあり方への要望は、電子化とのハイブリッド、QRコードの掲載などの工夫、父親の育児参加の促しの工夫の意見があげられた。
利用者は、母子手帳は子どものものという認識のもと、世代間で保存され、妊娠期から幼児期までの健康記録として十分利活用されていた。1999年調査との比較から、使いにくいと感じる割合、読まない割合が増えており、またスマホの活用の要望が半数以上にあり、紙媒体から電子化への流れがみられた。専門職は、母子手帳を母子保健サービスの効果的なツールとみなしていた一方、今後の在り方として、多様化への対応、災害時対応が挙げられ、電子化とのハイブリッドを期待していた。
母子健康手帳の利活用に関する保護者を対象とした調査において、母子手帳は子どものものであると認識する人が多く、一番役に立った内容と場面は予防接種の記録であった。スマホでの閲覧や記録を改訂版に要望する人が50%以上であり、ページ検索性や、父親の関与の促しの工夫の要望があった。母子保健専門職によるフォーカスグループインタビューでは、妊娠経過の確認や出産後も継続できる記録などを、情報収集ツールとして活用していた。今後の母子手帳のあり方への要望は、電子化とのハイブリッド、QRコードの掲載などの工夫、父親の育児参加の促しの工夫の意見があげられた。
利用者は、母子手帳は子どものものという認識のもと、世代間で保存され、妊娠期から幼児期までの健康記録として十分利活用されていた。1999年調査との比較から、使いにくいと感じる割合、読まない割合が増えており、またスマホの活用の要望が半数以上にあり、紙媒体から電子化への流れがみられた。専門職は、母子手帳を母子保健サービスの効果的なツールとみなしていた一方、今後の在り方として、多様化への対応、災害時対応が挙げられ、電子化とのハイブリッドを期待していた。
結論
1948年に母子手帳が発行されてから、昭和、平成、令和と3つの時代が過ぎた。いま少子化の時代に、子どもを産み育てようと決意してくれた家庭に届く行政からの最初の贈り物が、母子手帳である。地方分権の時代だからこそ、地域で母子手帳を創ることができる。子どもたちや保護者や行政とともに、地域の実情やニーズに応じた新しい時代にふさわしい母子手帳を創造していくことは、未来を担う子どもたちへの最高の贈りものになるに違いない。
地域の実情やニーズに応じた新しい時代にふさわしい母子手帳を創造することが求められている。期待される成果として、まず、子ども、母親、家族に還元されるべきである。現行の紙ベースの母子手帳だけでなく、電子的サービスや母子手帳アプリなどの形で、利用者への成果の還元が期待される。デジタル母子手帳などの工夫により、障害のある親子に対しても「だれひとり取り残さない」形の母子手帳を提供できることが期待される。
次に、行政的効果として、2022年に予定されている母子手帳の改定を視野に入れたエビデンスの提供が期待される。社会経済状況の進展とともに母子手帳が果たす役割は変化してきた。グローバルな視点から量的調査と質的調査を組み合わせることにより、令和の時代にふさわしい母子手帳の姿を提言できる。
地域の実情やニーズに応じた新しい時代にふさわしい母子手帳を創造することが求められている。期待される成果として、まず、子ども、母親、家族に還元されるべきである。現行の紙ベースの母子手帳だけでなく、電子的サービスや母子手帳アプリなどの形で、利用者への成果の還元が期待される。デジタル母子手帳などの工夫により、障害のある親子に対しても「だれひとり取り残さない」形の母子手帳を提供できることが期待される。
次に、行政的効果として、2022年に予定されている母子手帳の改定を視野に入れたエビデンスの提供が期待される。社会経済状況の進展とともに母子手帳が果たす役割は変化してきた。グローバルな視点から量的調査と質的調査を組み合わせることにより、令和の時代にふさわしい母子手帳の姿を提言できる。
公開日・更新日
公開日
2023-02-16
更新日
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