生活環境中の発がん物質のリスク評価と低減化に関する研究

文献情報

文献番号
199700524A
報告書区分
総括
研究課題名
生活環境中の発がん物質のリスク評価と低減化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
福原 守雄(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤純雄(国立公衆衛生院)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 安藤剛(大阪府公衆衛生研究所)
  • 伊藤善道(仙台市衛生研究所)
  • 長谷川修司(千葉市環境保健研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 がん克服戦略研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
16,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の日常生活で、一般都市住民がどの位の発がん性物質を摂取しているかを調査し、摂取量、吸収率と発がん性の強さからそのリスクを評価し、リスクの高いものに対して優先的にその低減化対策をとることによりがん予防に役立てることを目的とした。対象物質として、生活環境汚染物で発がん性をもつと思われる低沸点有機ハロゲン化合物、芳香族有機化合物、アルデヒド類などを取り上げ、その試料採取法や分析法の確立を行った。また 新規発がん性マイコトキシン、フモニシンについて農作物についてその産生菌の有無を調べた。
研究方法
現在の生活環境で汚染の恐れと発がんの リスクがあると思われるクロロホルムなどの低沸点有機ハロゲン化合物、ベンゼン等の芳香族有機化合物、また室内汚染が問題となっているアルデヒド類、揮発性脂肪族炭化水素などについて、生活環境空気からの個人暴露量を個人用エアーサンプラーやパッシブチューブを用いて、仙台市、大阪市、千葉市住民で調査した。まず空気試料採取法の検討を行った後、多種類の物質を一斉分析する方法としてキャニスターGC/MS法による測定や、アルデヒド類の簡易測定法の確立を行った。またヒトにおける吸入による吸収率を予備的に調べた。さらに 発がん性マイコトキシン、フモニシンについて国産、外国産の農作物からその産生菌を単離すると共に、新たな関連化合物の検出を行った。
結果と考察
生活空気環境からの個人暴露量の高い物質は、p-ジクロロベンゼンであり、その過剰発がんリスクは340人/100万人であった。次いでベンゼン、クロロホルム等のリスクが高かった。アルデヒド類は室内空気汚染による暴露量が極度に高い家庭があった。多くの物質で室内汚染が室外空気汚染量より高く、発生源が室内にあることが示唆された。ヒトにおけるp-ジクロロベンゼンの吸入による吸収はかなりあった。以上より現時点でリスクが最も高い物質であるp-ジクロロベンゼンやアルデヒド類に対し、優先的に規制や対策をとることの必要性が示唆された。また新規発がん性マイコトキシン、フモニシンの産生菌が国産、外国産の農作物から単離され、日本産食品にも汚染の可能性が示唆された。近年、生活様式の変遷に伴い、人が日常摂取する生活環境中発がん物質の種類と量は質的に変化し、新しい発がん性物質の問題が常に起きている。生活環境中化学物質による発がんの低減化を目指して環境規制や使用規制がなされているが、本研究のような最もリスクの高い発がん物質は何かを同定し、優先的に対策を取ることが最も効率的であろう。一方、新しい発がん物質のリスクを事前に知るために、新たに問題となりそうな物質の分析法やモニタリング体制を確立しておくことも重要である。
結論
現時点で生活環境空気から一般都市住民が摂取して物質で、そのリスクが最も高い物質はp-ジクロロベンゼンであり、優先的に規制や対策をとる必要がある。また新規マイコトキシンのフモニシンの産生菌は国内農作物にも存在していた。

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