児童福祉施設における栄養管理のための研究

文献情報

文献番号
202107005A
報告書区分
総括
研究課題名
児童福祉施設における栄養管理のための研究
課題番号
19DA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-30
更新日
2023-01-10

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202107005B
報告書区分
総合
研究課題名
児童福祉施設における栄養管理のための研究
課題番号
19DA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 裕美(女子栄養大学 給食・栄養管理研究室)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
  • 野末 みほ(常葉大学 健康プロデュース学部)
  • 原 光彦(東京家政学院大学 現代生活学部 健康栄養学科)
  • 阿部 彩(首都大学東京 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室)
  • 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
  • 岡部 哲子(天使大学 看護栄養学部)
  • 吉岡 有紀子(相模女子大学 栄養科学部)
  • 高橋 孝子(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 坂本 達昭(熊本県立大学 環境共生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児期は、心身の発育、発達が著しく、人格の基礎が形成される時期であり、特に社会経済的に困難な子どもでは、保育所をはじめとする児童福祉施設での給食が、必要な栄養の確保に重要であることが考えられるが実態が十分に把握されていない。さらに、児童福祉施設の食事の提供にあたっては、必要な各種栄養素等の量が1日単位で示されている「日本人の食事摂取基準」を参考に、各施設が提供する給食等の給与栄養量の目標を設定することになっている。しかし、実際の給与量、提供量、栄養管理の実態は不明である。共働き世帯の増加に伴い、児童福祉施設の利用者は増加しており、国全体が推進する子育て支援の観点からも、児童福祉施設の給食等の栄養管理の質の保障は社会的ニーズが高い課題である。また実態把握に基づいた児童福祉施設の栄養管理に関するガイド(手引き)の改訂が直近の課題となっている。以上の背景より、本研究は以下を目的とする。
1)児童福祉施設に通う子どもの発育、食事とその中での給食の役割を、家庭の社会経済的条件との関連をふまえて、明らかにすること(研究1)
2)児童福祉施設の栄養管理の質の向上のために、給食の提供基準、栄養管理の課題を検討すること(研究2)
3)児童福祉施設の栄養管理の好事例の収集・評価をすること(研究3)
研究方法
研究1:令和元年度~2年度に実施した全国7市の児童福祉施設(保育所等)の園児の食事内容について、家庭と児童福祉施設での1人4日間(平日2日、休日2日)の食事記録のデータを統合してデータベースを作成し解析した。
研究2:令和元年度の児童福祉施設(保育所)の栄養管理の実態調査、及び令和元年度、令和2年度の保育園児の食事調査の結果から、保育所での給与栄養目標量(給食の提供基準)について検討した(研究2-1)。また保育所の栄養管理の課題の検討を行った(研究2-2)。令和3年度に全国の児童養護施設(研究2-3)、乳児院(研究2-4)の栄養管理の実態調査を実施した。
研究3:令和元年度の児童福祉施設(保育所)の栄養管理の実態調査からPDCAを実施している好事例を抽出し、統一した様式で施設へのヒアリングを実施し、事例としてまとめた。
結果と考察
研究1:給食がある平日は給食が無い休日と比べて、園児の多くの栄養素摂取量が少なく、不足者の割合も高かった。世帯年収が低い世帯の園児は高い世帯の園児に比べ、多くの栄養素摂取量が少なく、不足者の割合も多かった。給食からの栄養素等摂取量は40%前後であり、1日の栄養素の不足者でこの割合が高かった。以上より、保育園児の食事に対する給食の役割が示された。
研究2:保育所の給与栄養目標量(昼食+おやつ)として、1日の食事摂取基準に対して昼食で1/3(33%)、おやつで10%、合わせて約43%とし、1日の食事で不足者が多い栄養素としてカルシウム、鉄は約50%を目指し、過剰者が多い食塩は2g未満を目指す、飽和脂肪酸は少なく設定することを提案した。また、保育所における栄養管理の課題として、給与栄養目標量の設定、園児の身体計測データの活用、食べる場面での個別支援に施設格差があること、自治体の支援の格差があることが示された。児童養護施設、乳児院の給食を通した栄養管理の実態について全数調査を実施し、栄養管理の課題として、ユニットやグループ単位での乳幼児を対象とした給食の品質と食数に適した、設備や給食運営の方法を含めた栄養管理の在り方を検討する必要があることが示された。
研究3:児童福祉施設(保育所)の栄養管理の好事例9例について収集した。
結論
研究1より保育園に通う幼児の1日の食事量とその中での保育所給食の割合が明らかになった。また、不足者が多い栄養素が明らかになった。研究2では、この結果と令和元年度に実施した保育所での提供量の実際を合わせて、保育所の給与栄養目標量について提案した。
また、児童養護施設、乳児院の全数調査より、家庭的な養育のための小規模化に対応した給食のあり方の課題が明らかとなった。研究3では保育所の栄養管理の好事例を収集し整理した。研究1~3は「保育所における食事の提供ガイドライン」(厚生労働省保育課 平成24年)及び「児童福祉施設における食事の提供ガイド」(厚生労働省母子保健課 平成22年)改定にあたっての資料となる。研究1の保育園児の食事摂取データは、食事摂取基準の次期改定(2025年版)時の基礎資料となる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-30
更新日
2023-01-10

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202107005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで明らかになっていなかった、保育園児の1日の食事の中での保育所給食(昼食+おやつ)からの摂取割合の実態を明らかにした。保育園児の食事について食事摂取基準を用いた評価で不足者が多い栄養素の種類、不足者は平日より休日に多く、年収が低い人で多いことを明らかにした。全国7ブロックの779名の非連続4日間(平日2日、休日2日)のデータベースを作成したことで、今後保育園児の食事についての実態と影響要因解明の研究が進むことが期待される。
臨床的観点からの成果
現在提示されていない保育所給食の栄養提供基準について、園児の食事摂取状況および保育所の給食提供の実態の両面から検討し暫定案を提示した。児童福祉施設(保育所、児童養護施設、乳児院)の栄養管理の実態と課題を示した。保育所では施設間差が大きいこと、栄養管理が良好な要因として管理栄養士・栄養士の配置等、促進要因を把握でき、現場の改善に役立つ。児童養護施設や乳児院は全国の全数調査を実施し高い回収率が得られ、栄養管理の課題についての自由回答が多く記載されたことから、現場の実態に即したガイド作成に役立つ。
ガイドライン等の開発
令和2年度に横山班と共同し「乳幼児身体発育曲線の活用・実践ガイド」を作成した。「第4章保育所等での発育曲線の活用」を担当した。国立保健医療科学院のHPに掲載され自治体や保育所で活用できるようになっている。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果である保育所の栄養提供基準、児童福祉施設の栄養管理の実態と課題、栄養管理の好事例は、「保育所における食事の提供ガイドライン」(厚生労働省保育課 平成24年)及び「児童福祉施設における食事の提供ガイド」(厚生労働省母子保健課 平成22年)改定にあたっての資料となる。保育園児の食事摂取データは、食事摂取基準の次期改定(2025年版)時の基礎資料となる。
その他のインパクト
本研究成果は、栄養士会や自治体等の研修会で現場の管理栄養士・栄養士等の専門職のスキルアップに活用される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
乳幼児身体発育曲線の活用・実践ガイド第4章保育所等での発育曲線の活用
その他成果(普及・啓発活動)
1件
研修会1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
坂本達昭、野末みほ、岡部哲子他
世帯収入と新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言期間における幼児の食事内容の変化との関連
日本健康教育学会誌 , 30 (1) , 14-25  (2022)
https://doi.org/10.11260/kenkokyoiku.30.14
原著論文2
酒井亜月、由田克士、高橋孝子他
保育所に通る幼児における習慣的なエネルギー及び栄養素摂取量の評価
日本栄養・食糧学会誌 , 76 (1) , 33-41  (2023)
https://doi.org/10.4327/jsnfs.76.33

公開日・更新日

公開日
2023-01-10
更新日
2023-05-23

収支報告書

文献番号
202107005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,927,341円
人件費・謝金 1,716,441円
旅費 150,161円
その他 1,906,062円
間接経費 2,300,000円
合計 10,000,005円

備考

備考
その他収入1円は利息。支出額の内4円は自己資金。

公開日・更新日

公開日
2023-03-12
更新日
-