医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究

文献情報

文献番号
202107004A
報告書区分
総括
研究課題名
医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究
課題番号
19DA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 美由紀(東京大学 医学部附属病院)
  • 藤尾 圭志(東京大学医学部附属病院  アレルギーリウマチ内科)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高井 泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)
  • 浜谷 敏生(慶應義塾大学 医学部 産婦人科)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学 医学部 外科学(一般・消化器外科))
  • 山田 満稔(慶應義塾大学医学部産婦人科)
  • 渡邊 知映(昭和大学 保健医療学部)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学 外科学 乳腺・内分泌外科)
  • 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
  • 宮地 充(京都府立医科大学大学院医学研究科小児発達医学)
  • 杉山 一彦(広島大学病院 がん化学療法科)
  • 前田 嘉信(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、①日本の現状に応じた医学的適応による妊孕性維持、不妊治療の制度の構築、②妊よう性温存医療登録システムの運用による支援体制の強化、③がん・生殖医療看護師養成の方法の確立、④AIDに関する海外の制度や取り組みに関する調査、である。
研究方法
①日本産科婦人科学会ART登録施設に対して、2016年~2019年におけるがん患者に対する凍結実施の実態調査、併せて各施設所属生殖治療医に対して、がん生殖治療を行う際の問題点に関する意識調査を行った。② 日本がん・生殖医療登録システム(Japan Oncofertility Registry; JOFR)の運用強化を行い、登録データを用いて解析を行った。③がん・生殖医療看護師OFNN養成のためのe-learning教材の作成を行った。④本邦では2020年12月に成立した民法特例法案の附則三条に則り、「精子、卵子又は胚の提供の規制に関するあり方」や「出自を知る権利」への対応が喫緊の課題である。匿名・非匿名提供の問題点、出自を知る権利の尊重とドナー個人情報の開示、それに必要なカウンセリング等の体制、児とドナーから見た問題点などについて、海外各国の現況を調査した。
結果と考察
①我々の先行研究(2011年~2015年)に比し、症例が倍増し原疾患の多様性が増す一方、治療方法が有意に均質化していた。② 2021年4月から「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」が開始され、JOFR)に登録することが公的助成の条件となった。各都道府県のJOFR登録率は大きな差異があり、最も高い県で人口10万人あたり約12例だったが、多くの都道府県で人口10万人あたり1例未満であり、支援体制の地域差が示唆された。③昨年度収録したがん・生殖医療に関する総論に加えて、がん種別各論8分野(女性生殖器・乳腺・泌尿器・造血器・小児・骨軟部・脳・消化器)、及びがん・生殖医療意思決定支援ロールプレイ(がん医療編・生殖医療編)について教材を作成し、看護職を対象とした本e-learning教材を用いた教育介入を行い、前後でのがん・生殖医療に関する知識・態度・実践の変化について評価し、教育の有効性を確認した。④日本産科婦人科学会「精⼦・卵⼦・胚の提供等による⽣殖補助医療制度の整備に関する提案書」の策定に寄与した。
結論
本研究において、医学的適応のよる妊孕性温存治療における医療提供側の問題点の洗い出し、それに基づく人材育成、登録制度の確立を行うことにより、わが国における若年がん患者に対する妊孕性温存体制の安定的な発展に貢献した。また、これまで着目されてこなかった、がんではなく自己免疫疾患により妊孕性温存を必要とする患者の存在に光を当て、膠原病領域との連携の糸口を作った。また、匿名・非匿名提供の問題点、出自を知る権利の尊重とドナー個人情報の開示、それに必要なカウンセリング等の体制、児とドナーから見た問題点などについて、海外各国の現況を調査し、日本産科婦人科学会「精⼦・卵⼦・胚の提供等による⽣殖補助医療制度の整備に関する提案書」の策定に寄与した。

公開日・更新日

公開日
2022-07-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2022-07-29

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202107004B
報告書区分
総合
研究課題名
医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究
課題番号
19DA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 美由紀(東京大学 医学部附属病院)
  • 藤尾 圭志(東京大学医学部附属病院  アレルギーリウマチ内科)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高井 泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)
  • 浜谷 敏生(慶應義塾大学 医学部 産婦人科)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院 医学系研究科)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学 医学部 外科学(一般・消化器外科))
  • 山田 満稔(慶應義塾大学医学部産婦人科)
  • 渡邊 知映(昭和大学 保健医療学部)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学 外科学 乳腺・内分泌外科)
  • 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
  • 宮地 充(京都府立医科大学大学院医学研究科小児発達医学)
  • 杉山 一彦(広島大学病院 がん化学療法科)
  • 前田 嘉信(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
2年目(2020年)より、④AIDに関する海外の制度や取り組みに関する調査を追加するため、慶應義塾大学 浜谷敏生先生に参画いただいた。また、渡邉知映先生が上智大学より昭和大学に所属機関が変更になったが、看護担当として引き続き参加いただいている。 3年目(2021年)、京都府立医科大学の細井創先生が退官のため、宮地充先生へ研究者が交代となった。

研究報告書(概要版)

研究目的
①日本の現状に応じた医学的適応による妊孕性維持、不妊治療の制度の構築
②妊よう性温存医療登録システムの運用による支援体制の強化
③がん・生殖医療看護師養成の方法の確立
④AIDに関する海外の制度や取り組みに関する調査、である。なお、④は2年目からの追加課題である。
研究方法
①がん・生殖医療において実際に妊孕性温存治療を行う生殖医療専門医のニーズを抽出する。またこの際に、がんに限らず医学的適応にて妊孕性温存を必要とする患者にこの治療を適切に行き渡らせる体制を構築するために、自己免疫疾患患者に対する妊孕性温存の実態の調査も併せて行う。これらの結果に基づき、各学会と協力し生殖治療医のための教育システムの構築へとつなげる。
②我々が所属する日本がん・生殖医療学会(JSFP)が設立した日本がん・生殖医療登録システムへの全例登録を通じて、原疾患治療施設と生殖医療施設の連携の実態や疾患、進行期、治療内容ごとの成績を明らかとする。
③JSFPと連携し看護師向けの教育セミナーを主催し継続することによって、最終的には看護師ががん患者に対するがん・生殖医療に関する支援を行う際の情報提供の手法を構築し、テキストの作成を行い、学会による認定制度を確立する。
④匿名提供の維持の可能性、非匿名提供へ移行する場合の問題点、出自を知る権利の尊重とドナー個人情報の開示の方法、それに必要なカウンセリング等の体制、児とドナーの不満点、ドナーリンキングなどについて、海外各国の現況を調査する。さらに、公的あるいは民間精子バンクの役割と運営方法(ドナーのリクルート、感染症や遺伝子の検査、同じドナーからの妊娠数の管理、ドナー情報の永年追跡など)についても調査し、提供配偶子を用いた生殖医療のあり方についての提言を纏める。
結果と考察
①実施実態については我々の先行研究(2011年~2015年)に比し、症例が倍増し原疾患の多様性が増す一方、治療方法が有意に均質化していた。また、生殖治療医の意識調査からは、生殖医療医が治療の現場において困難を感じる点が3点(治療の適応・方法の選定、長期保存に対する不安、人材確保)。この結果に基づき、生殖治療医対象のe-learningを作成中である。また膠原病患者に対する妊孕性温存の調査を本邦ではじめて行い、この領域にニーズがあるものの、膠原病治療医への情報が行き届いていない状況も明らかとなった。
②各都道府県のJOFR登録率は大きな差異があり、最も高い県で人口10万人あたり約12例だったが、多くの都道府県で人口10万人あたり1例未満であり、支援体制の地域差が示唆された。
③がん・生殖医療看護師OFNN養成のためのe-learning教材の作成を行った。がん・生殖医療に関する総論と、がん種別各論8分野(女性生殖器・乳腺・泌尿器・造血器・小児・骨軟部・脳・消化器)、及びがん・生殖医療意思決定支援ロールプレイ(がん医療編・生殖医療編)について教材を作成は順調に進んでいる。
④AIDに関する海外の制度や取り組みに関する調査 に関しては、海外の実情の調査により出自を知る権利とドナーの個人情報の守秘との間のバランスをどのように取るのか、社会や文化的背景により国ごとに異なり、また経時的にも対応が変化していることがわかった。この結果に基づき、わが国における提言策定につなげた。
結論
本研究において、医学的適応のよる妊孕性温存治療における医療提供側の問題点の洗い出し、それに基づく人材育成、登録制度の確立を行うことにより、わが国における若年がん患者に対する妊孕性温存体制の安定的な発展に貢献した。また、これまで着目されてこなかった、がんではなく自己免疫疾患により妊孕性温存を必要とする患者の存在に光を当て、膠原病領域との連携の糸口を作った。また、匿名・非匿名提供の問題点、出自を知る権利の尊重とドナー個人情報の開示、それに必要なカウンセリング等の体制、児とドナーから見た問題点などについて、海外各国の現況を調査し、日本産科婦人科学会「精⼦・卵⼦・胚の提供等による⽣殖補助医療制度の整備に関する提案書」の策定に寄与した。

公開日・更新日

公開日
2022-07-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202107004C

収支報告書

文献番号
202107004Z