今般の感染症対応や将来の医療需要を踏まえた DPCデータ等を活用した急性期医療の確保のための研究

文献情報

文献番号
202106035A
報告書区分
総括
研究課題名
今般の感染症対応や将来の医療需要を踏まえた DPCデータ等を活用した急性期医療の確保のための研究
課題番号
21CA2035
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 健佑(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
  • 小林 大介(神戸大学 大学院医学研究科 医療システム学分野 医療経済・病院経営学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,114,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、急性期病院が有するDPCデータおよびデータ提出加算を算定している医療機関の診療情報等を活用して、医療圏毎に診療領域別の症例数等を可視化するとともに、将来の医療需要を踏まえた想定される症例数等を推計し、急性期医療の機能連携・集約のために必要となる体制確保の手法を地域で検討するためのデータ分析基盤を構築する。
研究方法
 データソース
2019年10月1日から2021年9月30日までのDPCデータおよびデータ提供加算を算定している医療機関の診療情報データを用いる。DPC調査データの様式1、様式3、様式4、入院と外来のEファイル、Fファイル(またはEF統合ファイル)、Dファイル、Hファイルを用いる。これらのファイルから得られるデータのうち、下記の情報を分析に用いる。
・患者情報:性別、生年月日、居住区郵便番号、傷病名、入退院年月日、死亡年月日等
・診断情報:診療行為名(検査、手術、処置等)・数量・実施日、医薬品名・数量・実施日等
 また、DPC調査データおよびデータ提出加算を算定している急性期一般入院料や回復期リハビリテーション入院料、療養病棟入院料等を算定する出来高算定を行っている医療機関の診療情報は、千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センターおよび名古屋大学医学部附属病院が、それぞれの県内医療機関から直接データを収集する基盤を構築する。

分析方法
構想区域別の主要診断群分類ごとの必要医師数を算出する。必要医師数は、外保連試案の「外科医師数」を用いることとし、外保連試案マスタと診断群分類(DPC)電子点数表(手術)を連結する。
また、令和2年1月17日に各都道府県に対して、「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」(厚生労働省医政局長通知)にて「地域医療構想の実現に向けたさらなる取組」として診療実績等から定めた「診療実績が特に少ない」および「類似した診療実績を有する医療機関が近接している」指標で用いた診療領域ごとの手術および診療行為を用いて、外保連試案マスタと診断群分類(DPC)電子点数表(手術)を連結し、領域毎の必要医師数を算出する解析計画を策定する。
結果と考察
本研究では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた医療体制に関する分析基盤を構築した。これにより、厚生労働省が保有する全国データの第三者提供を待たず、構築が急がれる医療計画や地域医療構想における医療体制の在り方に関する分析を、都道府県が主体となって実施することが可能となることが示唆された。
 特に新興感染症等は感染の流行が変動するだけでなく、変異体等の特性によって一般診療への影響も大きく変動する。このような状況においては即時的な分析体制が求められることが、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により明らかとなったことを踏まえると、急性期病院だけでなく回復期や慢性期の機能を担う医療機関も重要な役割を果たす。したがってデータ分析に基づく政策決定プロセスにおいても、急性期病院のDPCデータだけでは不十分であることから、データ提出加算を算定している医療機関の診療情報を含めた、即時性のある大規模診療情報データ分析基盤の構築の重要性が示唆された。本研究では、個人情報およびセキュリティに配慮した安全で具体的なデータ収集システムおよびその運用方法の構築が達成されたことから、全国都道府県への展開が期待される。
 しかしながらいっぽうで、データ提出加算を算定している医療機関が保有する診療情報データは、診療報酬制度の理由により詳細な診療行為が含まれていない可能性がある。たとえば療養病床や回復期リハビリテーション病床においては入院基本料に含まれる診療行為の明細が算定されないことから判断が難しい場合がある。本研究は手術行為を対象とすることで、すべての診療行為明細を把握することとしたが、内科系診療行為の評価を実施する場合は留意が必要である。
結論
本研究により、将来の医療需要推計および新興感染症等の感染拡大時の体制の在り方について、実際に感染拡大時における地域の急性期医療お期間が保有する診療情報を活用した医療体制に関する分析方法を確立することにより、全国における将来の医療需要推計および新興感染症等の感染拡大時の体制の在り方に関するデータ分析への見通しが明らかとなった。また、本研究は急性期病院以外の医療機関の診療情報も包含していることから、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大時におけるICUやHCU、急性期病棟ではなく、回復期病棟を利用することも想定した新興感染症等と一般診療の両立を実現するための具体的な医療体制の在り方に関するデータ分析基盤を確立した。

公開日・更新日

公開日
2023-05-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により、将来の医療需要推計および新興感染症等の感染拡大時の体制の在り方について、実際に感染拡大時における地域の急性期医療お期間が保有する診療情報を活用した医療体制に関する分析方法を確立することにより、全国における将来の医療需要推計および新興感染症等の感染拡大時の体制の在り方に関するデータ分析への見通しが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床に関わる研究ではないが、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大時におけるICUやHCU、急性期病棟ではなく、回復期病棟を利用することも想定した新興感染症等と一般診療の両立を実現するための具体的な医療体制の在り方に関するデータ分析基盤を確立した。
ガイドライン等の開発
特にない
その他行政的観点からの成果
本研究では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた医療体制に関する分析基盤を構築した。これにより、厚生労働省が保有する全国データの第三者提供を待たず、構築が急がれる医療計画や地域医療構想における医療体制の在り方に関する分析を、都道府県が主体となって実施することが可能となることが示唆された。
その他のインパクト
特にない

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202106035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,448,000円
(2)補助金確定額
1,448,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,088,024円
人件費・謝金 0円
旅費 22,976円
その他 5,180円
間接経費 334,000円
合計 1,450,180円

備考

備考
自己資金額2180円

公開日・更新日

公開日
2022-12-15
更新日
-