間葉系幹細胞を利用した新しい造血幹細胞移植技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200832045A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉系幹細胞を利用した新しい造血幹細胞移植技術の開発に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 勝俊(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間葉系幹細胞(MSC: mesenchymal stem cell)には免疫抑制作用があることが明らかにされ、その臨床応用(MSCを用いた細胞治療)として、同種造血幹細胞移植後のステロイド不応性の重症急性移植片対宿主病(GVHD)に対する治療効果が期待されている。本研究ではMSCの免疫抑制能に関する基礎研究を行い、造血幹細胞移植へのMSCの臨床応用を推進する。
研究方法
1)MSCによるT細胞増殖抑制にはNOが重要であることをマウスの系で確認しており、今年度はMSCによるヒアルロン酸産生と、T細胞のヒアルロニダーゼ発現を調べた。さらにMSCにヒアルロン酸試薬とIFN-γを加えてNO産生を測定した。2)IL-21のデコイ受容体を発現するベクターを構築した。3)ヒトMSCバンク:様々な患者からMSCを樹立し、NO産生を調べた。4)難治性急性GVHDに対するMSC治療の臨床研究:対象患者の血縁者から骨髄の提供を受け、臨床用細胞プロセシング室にてMSCの分離と培養を無菌的に行い、品質検査を実施した。
結果と考察
1)MSCによるヒアルロン酸産生、T細胞によるヒアルロニダーゼの発現、低分子ヒアルロン酸試薬とIFN-γ存在下でのMSCによるNO産生を見出した。但し、このNO産生にはヒアルロン酸試薬に混入していたエンドトキシンの関与が判明した。2)IL-21のデコイ受容体をコードするcDNAを作製した。レトロウイルスベクターではMSCに十分な発現が得られず、アデノウイルスベクターの構築を進めた。3)ヒトMSCバンクとNO産生: 31症例分のMSC(内訳:正常骨髄10例、造血不全4例、急性白血病7例、骨髄増殖性疾患5例、その他5例)を集積した。ヒトMSCによるNO産生は極めて低かった。ヒトの場合の免疫抑制機序を解明する必要がある。4)2症例でMSCを準備したが、ステロイド抵抗性とはならず、投与されるに至らなかった。
結論
1)MSCによるNO産生とヒアルロン酸との関係は否定的であった。2)レトロウイルスベクターではMSCにIL-21デコイ受容体の高発現を得られず、アデノウイルスベクターを作製中である。3)31症例分のヒトMSCバンクを構築した。ヒトMSCではNOが中心的役割を果たしていないことが示唆された。4)急性GVHD2症例でMSCを準備したが、投与までには至らなかった。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-