検体検査の外部精度管理調査における組織構築に向けた研究

文献情報

文献番号
202106034A
報告書区分
総括
研究課題名
検体検査の外部精度管理調査における組織構築に向けた研究
課題番号
21CA2034
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
矢冨 裕(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮地 勇人(東海大学医学部)
  • 大西 宏明(杏林大学 医学部臨床検査医学教室)
  • 田澤 裕光(京都大学医学部附属病院 クリニカルバイオリソースセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
検体検査とくに遺伝子関連検査の外部精度管理調査について、まず、最新の状況を情報収集した上で分析・問題点抽出を実施し、その上で、関連する検査室第三者認定、人材育成等にも言及しつつ、あるべき組織構築に関する検討・提案を行うことを目的とした。
研究方法
各委員が、現在の立場、専門性を踏まえ、独自の調査・解析を実施した。並行して、WEB・対面のハイブリッド形式の会議を計9回(年度内は7回)開催し、また、メールも活用しながら、全委員で意見交換を行い、報告書をまとめた。
結果と考察
・わが国の外部精度管理調査の体制、検査室第三者認定、とくに遺伝子関連検査のそれらは欧米に比し脆弱であり、その改善は喫緊の課題であるが、近年、これらを解決に導く素地ができつつあり、その現況をまとめた。おりしも、新型コロナウイルス感染症のPCR法等の核酸検査の精度確保の実態が、厚生労働省委託事業「新型コロナウイルス感染症のPCR法等の核酸増幅検査の外部精度管理調査」(2020年度、2021年度)における集計の詳細な分析と評価に基づき明らかとなり、意義深いものとなった。また、グローバル・パンデミックの緊急時に際しては、新たな病原体に対応するため、その病原体核酸検査に関わる外部精度管理調査を速やかに立ち上げるとともに、即時に対応可能な検査体制を構築することが急務と考えられた。
・今回、遺伝子関連・染色体検査の外部精度管理調査・検査室第三者認定に関わる恒久的組織の役割と機能に関して、欧米の先進事例を参考として議論した。求められる組織においては、外部精度管理調査のための標準物質の開発・調達・供給が受益者負担で恒久的に受注でき、調査の結果・成績がモニターでき、それに基づき、各施設の検査要員(従事する測定者、精度の確保の責任者等)の研修・教育の機会が提供され、継続的質改善(EQAサイクル)を担うことが可能とされるべきとされた。
・その求められる社会実装モデルの核となるべき運用母体として、新たに特定非営利法人(NPO法人)の設立が必要で、その新法人を軸としたコンソーシアムを形成し、設立・基盤構築期の一時的な公的財源の投下による自走可能な外部精度管理調査事業モデルを構築する必要があると考えられた。
・以上のモデルを想定し、遺伝子関連検査外部精度評価の社会実装の実現に必要な費用概要の算定、運用母体設立と提供基盤構築期から事業開始・安定稼働期の受益者負担の仕組みから得られる事業収入による財源設計、自走可能な社会実装モデルを検討し中長期的収支計画概要が算定された。病原体核酸検査、体細胞遺伝子検査、生殖細胞系列遺伝子検査を対象として、社会実装までのロードマップ概要・必要コストをまとめた。公的財源の投下規模について、設立基盤構築期3年間は初年度20億円、2年目15億円、3年目10億円、総額は45億円となるが、それ以降4年目からはモデル検証期として外部精度管理対象項目を毎年新たに拡大して外部精度評価を実施することとし、公的財源のNPO法人への支援出動をゼロとすると同時に、診療報酬の品質コストとして5億円を確保する設計とした。
・今回、具体性をもった遺伝子関連検査外部精度評価の社会実装モデルが初めて提示され、今後の議論に大いに活用されるべきと考える。
・指定難病のみならず小児慢性特定疾病を含む多くの難病の網羅的遺伝学的検査を保険収載するために必要な難病遺伝子パネル検査(案)ならびにその検査の品質・精度の確保について検討を行った。この検査としてlaboratory developed test(LDT)によるエクソームまたは全ゲノム解析のデータを、体外診断用医薬品・医療機器(IVD・MD)で開発した解析プログラムにより処理し、病原性のあるバリアントの候補を出力する案が提示された(難病遺伝子パネル検査(案))。さらには、難病ゲノム医療推進の両輪として、難病の網羅的遺伝学的検査に対応できる外部精度評価体制の構築と難病エキスパートパネルをそなえた難病ゲノム医療拠点病院(仮称)の整備の必要性が提案された。
・保険診療外で、自費で実施されているものの、その結果の意味するところが極めて重大であるNIPTについて、本年2月、「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」が公表され、検査分析機関に対する認証指針において、改正医療法において検体検査として求められる要件が示されたことの意義は大きい。
結論
がんと難病領域における全ゲノム解析等の成果をより早期に患者に還元する新たな個別化医療等の実現、日常診療への導入が目指されている中、外部精度評価体制の拡充、技能試験を含む第三者評価体制の整備は、わが国のゲノム医療の発展の礎になると考えられる。その方向性において、本研究の成果が有効に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106034C

収支報告書

文献番号
202106034Z