新たな移植細胞療法に向けた造血幹細胞のex vivo増幅技術の開発と応用

文献情報

文献番号
200832043A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな移植細胞療法に向けた造血幹細胞のex vivo増幅技術の開発と応用
課題番号
H20-免疫・一般-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中畑 龍俊(京都大学大学院医学研究科発達小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 前川 平(京都大学医学部付属病院 輸血細胞治療部)
  • 平家 俊男(京都大学大学院医学研究科 発達小児科学 )
  • 伊藤 仁也(先端医療センター 細胞治療科)
  • 田中 宏和(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 永井 謙一(先端医療センター診療開発部)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臍帯血移植の問題点は必要な数の造血幹細胞が得られないこと、及び他の移植細胞ソースを用いた場合より移植後の造血回復が遅延することである。後方視的臨床試験において、臍帯血移植後の生着率、造血回復までの期間のいずれも移植されたCD34陽性細胞数との間での相関が報告されていることから、本研究では臍帯血CD34陽性細胞を4種類のサイトカインを用いて増幅し、白血病および類縁疾患の臍帯血移植に応用し、細胞治療製剤の安全性の確認と効果(生着促進)の検証を目的とする。
研究方法
急性白血病を対象に、ex vivo増幅臍帯血移植を実施し有害事象、生着促進への貢献につき評価する臨床研究を遂行している。さらに発展させ、複数ユニットにおける増幅臍帯血移植の臨床研究を開始し、増幅臍帯血の意義を明確にするPhse II臨床研究を行う計画である。またこれに伴い、完全無血清培地の開発など、ヒトに投与するより安全な培養キットおよび培養周辺デバイスの開発を行う。品質管理法に関しては、安全性に基づいた迅速検査法の開発およびバリデーションを行う。
結果と考察
平成20年度は1例の体外増幅臍帯血移植を行ったが、生着不全を起こした。原因究明を行った結果、体外増幅した臍帯血そのものに起因するものではなく、敗血症により、残存レシピエントT細胞が活性化し、拒絶に至ったと推測された。デバイスの開発では、リコンビナントアルブミンで脂質をミセル化した完全無血清培地を開発し、臍帯血のCD34陽性細胞を未分化なまま、100倍に増やせることに成功した。分子基盤に基づいた新規増幅法、分化誘導法の開発研究においては、二次造血の発生に必須の転写因子AML1/RUNX1が、転写のコリプレッサーmSin3Aとともにc-mplプロモーターに直接結合し、造血幹/前駆細胞におけるc-Mplの発現を抑制的に制御していることを明らかにした。
結論
本研究は、体外増幅させたCD34陽性細胞を大量に移植することは、臍帯血移植の成績を向上させることができるか立証する良いモデルであり、前臨床試験の動物実験においては、生着促進が確認された。ヒトへの臨床試験で立証する段階にきている。また本臨床研究は造血幹細胞移植分野に留まらず、広く治療用細胞製剤の臨床応用における先駆け的な研究として位置づけられ、GMPに則った細胞製造法の確立、品質管理法の確立、環境整備を実践することにより、今後の医療の発展に大きく貢献できるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-