医療機関における診療情報の提供の実態調査

文献情報

文献番号
202106029A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における診療情報の提供の実態調査
課題番号
21CA2029
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大道 久(一般社団法人 日本病院会 日本診療情報管理学会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,574,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月策定)は、インフォームド・コンセントの理念や個人情報保護の考え方を踏まえ、医療従事者等の役割や責任の内容の明確化・具体化を図るものであり、医療従事者等が診療情報を積極的に提供することにより、医療従事者等と患者等とのより良い信頼関係を構築することを目的とし、「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会」における議論を経て策定された。
 策定後、平成22年に一部改正を行った後は大きな見直しは行われていなかったが、令和3年3月開催の、規制改革会議 第9回 医療・介護WGにおいて「患者の医療情報アクセス円滑化」として取り上げられ、WGにおける議論をうけて、令和3年6月1日に規制改革会議より公表された「規制改革推進に関する答申~デジタル社会に向けた規制改革の「実現」~」において、「患者が診療情報の開示を請求する際の手続について、医療機関における診療情報の開示請求処理の実態を把握した上で、本人確認の在り方等を整理するとともに、オンラインでの請求申立てが可能であることを明確化し、「診療情報の提供等に関する指針」において記載すること」や「診療情報の開示について、医療機関における診療情報の開示請求処理の実態を把握した上で、開示に一定期間を要する場合には請求者に一定の応答を行うのが望ましいことを指針において記載するなど、開示を迅速化するための方策」を検討することについて、「令和3年検討開始、結論を得次第速やかに措置」するとされたところである。
 これを受け、今後、医療機関における診療情報の開示請求処理の実態の調査を行った上で、医療機関における開示請求の方法や本人確認の方法等について、厚生労働省において整理を進めることとしている。
 このため、本研究においては、当該整理の基礎資料として、診療情報の開示のオンライン化への対応状況や対応可能性、診療情報の開示にかかる平均的な日数等について、あらゆる規模の医療機関の実態を把握し、医療機関の規模や診療科を問わず、一律に適用される指針の改定に当たっての課題を提案することを目的とした。
研究方法
 調査対象は、全国の診療所・病院から、病床の有無、規模、地域区分、診療科目に区分して無作為抽出し、それぞれ1,500件を標本とした。調査項目は、カルテ等の診療情報の開示申請受付件数と開示・不開示状況、オンライン申請対応状況と運用に向けた懸念や課題等である。
結果と考察
診療所から324件、病院から570件、合計894件の回答を得た。過去1年間の開示受付件数は、診療所で平均4.25件、病院で平均22.73件、開示申請受付件数が「0件」の割合は診療所で82.7%、病院では13.3%となっている。診療所、病院ともに「全部開示」が最も多くなっており、診療所で78.8%、病院で平均94.5%となっている。開示申し立てのオンライン化が可能かどうかについては、「対応は困難である」が、診療所82.7%、病院が89.5%となっている。開示情報のオンライン提供についても、概ね同様の状況である。開示に要する期間については、診療所では「1週間未満」の割合が最も高く38.0%、病院では「1週間以上2週間未満」の割合が最も高く、54.4%となっている。
オンライン化に向けて、ウィルス感染のリスク、設備・機器の運用のノウハウ不足、セキュリティ不備による個人情報の漏洩、成りすまし等による本人確認の困難等が、導入の懸念や課題として少なからず指摘されている。既にオンライン開示の受付・提供を行っている医療機関もあるが、多くの医療機関ではオンライン化に消極的である。デジタル化に向けたインフラ整備を推進し、オンライン化に伴う諸課題について、現実に即した検討が行われることが望まれる。
結論
医療機関は、開示に係る各種手続きの合理化を図るとともに、積極的にオンライン化に取り組むことが望まれる。この点、医療機関は個人情報保護の観点から、インターネット上での診療情報の取り扱いには慎重にならざるを得ない面もある。また、診療記録の保存期間、紙カルテの電子データ化の作業負担、電子カルテの印刷問題など、医療機関の主体的な意志によらない諸問題が存在する。医療機関が情報漏洩のリスクや大きな作業負担を負うようでは、オンライン化の普及は困難である。今後、電子カルテの更なる普及等の社会情勢を鑑みオンライン化を実現する場合には、開示時の具体的な本人確認方法、患者本人に代わって開示申請できる者の範囲、オンライン開示受付・定時における責任、オンライン環境の整備方法などが現実に即して検討され、指針の改定が行われることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2022-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106029C

収支報告書

文献番号
202106029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,574,000円
(2)補助金確定額
3,574,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 388円
その他 3,456,660円
間接経費 0円
合計 3,457,048円

備考

備考
残金116,952円

公開日・更新日

公開日
2022-06-17
更新日
-