死亡診断書の電子的交付を推進する基盤整備に係る研究

文献情報

文献番号
202106028A
報告書区分
総括
研究課題名
死亡診断書の電子的交付を推進する基盤整備に係る研究
課題番号
21CA2028
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 一博(公益社団法人日本医師会 総合政策研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 聡(公益社団法人 日本医師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,076,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
死亡診断書(死体検案書)は、医師による医学的な死因等の証明文書であり、死亡の届出を経て、人口動態統計に反映される極めて重要かつ高度に真正性、正確性を求められるものである。令和3年6月1日に閣議決定された「死因究明等推進計画」においても、死因等に関する情報を正確に把握し、効果的に施策に反映することができるよう、死亡診断書(死体検案書)の様式等について、必要な見直しを行うとともに、死亡診断書(死体検案書)の電子的交付について、関係省庁と連携して検討を進め、実現可能な体制等の方向性を示すことが明記されている。
しかしながら、死亡診断書(死体検案書)と対をなす死亡届の電子化が進んでいないこと、電子死亡診断書(死体検案書)を受け付ける体制が市区町村側にないことから、現状では死亡診断書(死体検案書)の電子的交付の基盤は整っていない。
したがって、本研究は、電子的に作成した死亡診断書(死体検案書)を自治体にオンライン提出する枠組みを実証的に研究し、その有用性と必要性を検証することによって、死亡診断書(死体検案書)の電子化の推進につなげていくことを目的として実施する。
研究方法
本研究は、実際に電子化した死亡診断書を実証的に送付し、それに伴う各種課題整理、プロセスの検証を行うことから、以下の手順で進める。
(1)これまでの医療分野における電子化に関するこれまでの実績や意識、環境整備の状況等を鑑みて実証対象自治体を選定して、実証事業のための調整を行う。
(2)医療機関及び市区町村間におけるセキュリティの担保された文書交換システムを選定し、死亡診断書送受信のため必要な機能を検証する。更に、医療機関や介護施設、自治体間をオンラインで接続して連携する地域医療連携システムも対象に加え、既存の地域医療連携システムの更なる活用策の一つとして、その可能性についても模索する。
(3)死亡診断書(死体検案書)の電子的交付における一連のプロセスを自治体で実際に行い、それぞれのプロセスにおける課題や留意点を抽出、整理して有用性と効果的な枠組みを検討する。検討に際しては、現地視察及び医師、自治体職員等に対するヒアリングを実施する。
(4)死亡診断書(死体検案書)の電子的交付、受領を行う際の手順を整理する。
結果と考察
(1)対象自治体と文書交換方式の選定
今回の実証事業の対象地域は、これまでの実績を踏まえて山口県萩市、新たに地域医療連携システムを活用するケースとして長崎県大村市を選定した。
(2)実証地域における状況
萩市においては、これまで医療機関から市役所に対して、介護保険における主治医意見書の送付を行っていたことから、その枠組みを拡張する形で電子的な死亡診断書(死体検案書)の送付を実施した。ただし、機材を設置した際に、場所の制約があり、十分な機材設置場所の確保が難しかったことから、死亡届と死亡診断書(死体検案書)の突合を行うソフトウェアを改良して、省スペースで配置できるハンディースキャナーを用いて突合用コードを読み取る工夫を行った。これによって省スペースでもスムーズな受け入れが可能となった。
大村市においては、先駆的に運用されている地域医療連携システムである、あじさいネットを活用して死亡診断書(死体検案書)の送受を行うこととした。ただし、厳密な運用によって支えられているシステムであることから、市役所の担当者に接続するための運用講習会を受講してもらったり、新たに医療機関側に死亡診断書(死体検案書)作成ソフトを導入してもらうなど、地域医療連携とは異なる文書の送受の追加となったため、準備に相当の時間を要した。
(3)現場からの意見
医療機関側は、主に一連の流れにおいて、死亡診断書(死体検案書)作成から、電子署名、送付という流れが一連の流れとならず、一旦、PCに保管した後、送付用システムを立ち上げることから、医療DXという一気通貫な情報の流れの実現を要望する声が挙げられた。
市役所からは、強固なセキュリティシステムを使っているため、時間外での受付ができない不便さ、また、医療機関と同様に戸籍システムに別途手入力する業務処理の分断について改善の声が挙がった。何より、今回の実証事業ではスコープ外にしてはいるが、死亡届の電子化が強く望まれた。
結論
今回の実証事業点は、単に書類のデジタル化を行い、何らかの方法で相手方に送るという実証を実施したのみであって、いわゆるDXが実現できたかと言われればそうではない。本来であれば、死亡診断書(死体検案書)を電子化して、死亡届も電子的に申請ができ、市役所では紙を意識することなく、戸籍システムへの入力までが繋がって初めてDXであり、特に今回、死亡届の電子の必要性が強く認識された。
また、現場における機器等の設置の準備は、相当手間もかかることから、可能な限り簡易な方法で導入できる仕組みも必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106028C

収支報告書

文献番号
202106028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,998,000円
(2)補助金確定額
3,822,000円
差引額 [(1)-(2)]
176,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,247,200円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,697,670円
間接経費 877,250円
合計 3,822,120円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
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