治験・臨床研究データベース等の患者・国民のユーザビリティ向上に向けた研究

文献情報

文献番号
202106026A
報告書区分
総括
研究課題名
治験・臨床研究データベース等の患者・国民のユーザビリティ向上に向けた研究
課題番号
21CA2026
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
湯川 慶子(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 木内 貴弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 町田 宗仁(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 土井 麻理子(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 伊藤 真由美(公益社団法人日本医師会 治験促進センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,896,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 冨尾淳 東京大学(令和3年9月1日~3年9月30日) → 国立保健医療科学院(令和3年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研究情報ポータルサイトは国民・患者目線で臨床研究・治験に関する分かりやすい情報を提供してきた。しかし、わが国の治験・臨床研究情報データベース利便性や検索性能が不充分であるという指摘や、米国のClinicalTrials.gov等に比べ、ポータルサイトや臨床研究実施計画・研究概要公開システムJapan Registry of Clinical Trials(jRCT)の検索機能の精度、一般国民の治験情報へのアクセス性、網羅性が問題点として明らかになった。患者にとって治験情報へのアクセスの改善やユーザビリティ向上は喫緊のニーズであり、そのニーズやデータベースの課題、海外の主要データベースの備える機能を改めて調査する必要がある。本研究では、治験・臨床研究における検索機能の向上を図り、国民に治験等の十分な情報提供を行い、理解を深め参加を促進するために、患者、研究者、国民のニーズや利便性に合う検索機能を確立することを目的とした。
研究方法
本研究では、有識者ヒアリングで、医療関係者、製薬会社、患者団体計11団体から、jRCTおよび臨床研究情報ポータルサイトの検索性に関する意見を伺った。次に、各レジストリ(JMACCT、UMIN、JapicCTI)の検索性向上の工夫と課題を整理し、jRCTの検索機能への要望・課題と対応策を分析した。また、ClinicalTrials.gov等の国内外の臨床試験レジストリの検索性の検討や、民間の治験マッチングサイトのシステム構成や特徴を分析し、システム改善への示唆を得た。最後に、難治性疾患患者を対象としたWebユーザビリティ調査を行い、患者の両データベースに対するユーザビリティや改善が必要な点を把握した。
結果と考察
医療関係者からは検索項目の整備、絞り込みの工夫、医療従事者や患者への啓発、治験情報取得をサポートする体制整備、データの網羅性の徹底、ゲノム情報項目の追加、データの利活用の整備、AI による合理化、除外基準と適格基準の正確な登録、機械判読可能な形式のデータとする、API(Application Programming Interface)の整備などが挙げられた。患者からは検索項目について、試験実施施設、あいまい検索の性能向上、遺伝子情報、フリーワード検索と詳細検索の併用、ステータスの改善、適格基準と除外基準、対象疾患、ClinicalTrials.gov の検索ワード候補の実装が、検索方法の説明として、検索方法マニュアルや動画掲載、フリーワード検索と詳細検索の併用、インターフェースに関して、jRCT の検索画面の上部に表示、トップ画面や結果表示画面の変更が挙げられた。製薬会社からは、表示項目として、治験と臨床研究の区別、治験実施医療機関名、絞り込みの改善、検索の方法のマニュアル、スマートフォン等への対応、認知度向上の為の啓発として、製薬会社や病院等へのリンクや案内、治験情報データベースの情報から治験に参加できる仕組み、コールセンター的な機能、Researchmatch.org のお知らせ機能、検索方法の動画やポスター作成が提案された。各機関からは、登録試験の質の維持、SEO対策(Search Engine Optimization)等が報告された。また、患者調査からは広報の必要性や高齢者・障碍者へ配慮したシステム、検索方法の説明、あいまい検索の精度向上等が課題として明らかになった。
結論
データベースの普及啓発により国民・患者・医療従事者の認知度を高めるとともに、検索のしやすさ、障害者や高齢者にも配慮した画面構成とシステム構成が必要である。また、検索方法の説明は検索性向上に資するため、検索マニュアルや動画作成等の資料の充実が望まれるのに加え、特にjRCT は、専門家向けの印象の緩和や検索画面を上部の目立つ位置に移動することが喫緊の課題である。また、システム改修を視野に入れると、ClinicalTrials.govを参考にした検索項目の検討と改善が望まれる。具体的には、フリーワード検索と詳細検索の併用、試験実施施設、遺伝子情報、ステータス、適格基準、除外基準、対象疾患などの項目で検索可能または絞り込み可能とすること、あいまい検索の性能向上などである。さらに、現在の jRCTの検索結果画面では試験名称が途中までの表示であるが、試験対象や介入内容を示す重要な情報であるため全文表示へ改善すること、検索後の結果表示内容や結果の並び替え機能追加等が望まれる。以上のとおり、両データベースに共通して、臨床試験情報の臨床現場での利活用を考慮し、患者が治験に入れるかを判断できるか形で利用できる情報基盤として整備することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は国内の治験登録データベースの検索性の現状を明らかにし、国民の治験情報アクセスの向上のための望ましい情報提供のあり方を探るする研究である。本研究には臨床試験・治験の知識に限らず、患者、家族、医療従事者、研究者等様々なユーザーの使途に応じた意見を取りまとめる必要があり、高い専門性が要求される。また、治験情報へのアクセス向上のための改善点を具体化し、解決にむけたロードマップを作成した学術的意義は高い。
臨床的観点からの成果
本研究は、直接臨床研究にかかわる内容ではないが、臨床試験・治験推進に大きく寄与する内容を含み、間接的にその推進に資するものである。現在の臨床試験情報登録制度および情報公開の課題を明らかにし、特に、患者を中心とした情報の入手のためのユーザビリティ、および臨床現場でのデータの利活用の観点からデータベース改善のための具体的課題(遺伝子情報、治験への組入れの判断など)を整理したことは臨床研究の環境整備に該当し、臨床的観点からも一定程度の成果がある。
ガイドライン等の開発
本研究はガイドラインに関連する内容を含まないが、国民の治験情報アクセスの向上の観点から、国の臨床試験・治験推進に関する情報提供の望ましい指針を提示したことは、ガイドライン作成に準じる意味を持つものである。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は臨床試験・治験に関するデータベースのユーザビリティ向上のための改善案として具体化され、厚生労働省の情報提供事業として実施される予定である。研究班のメンバーは当該事業に携わっており、徐々にその実用化を計画している。すなわち、本研究は行政の一事業の基礎資料を提供するもので、行政的な観点からも成果を残したと考えられる。
その他のインパクト
本研究はまだ終了後間もないが、論文化や学会等での発表、講演等が予定されている。また、jRCTおよび臨床研究情報ポータルサイトでの情報提供の改善に関する議論が開始され、患者会、製薬協、大学関係者、一般への普及啓発活動(パンフレット・検索方法の説明に関する資料の作成等)も予定されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202106026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,896,000円
(2)補助金確定額
1,896,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 410,657円
人件費・謝金 158,071円
旅費 23,554円
その他 1,304,173円
間接経費 0円
合計 1,896,455円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-06-29
更新日
-