組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究

文献情報

文献番号
200832039A
報告書区分
総括
研究課題名
組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部 分子生命科学)
  • 笹月 健彦(国立国際医療センター)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 村田 誠(名古屋大学医学部付属病院)
  • 屋部 登志雄(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本骨髄バンク(JMDP)からの非血縁者間骨髄移植が16年間に10000例、日本さい帯血ネットワークからの移植が9年間に5000例実施されているが、長期生存率はそれぞれ約60%と40%に留まり満足すべきものではない。成績を悪化させる主な原因は同種移植に伴う重症移植片対宿主病(GVHD)の発症、移植片の拒絶と移植後の造血器腫瘍の再発であり、ドナーと患者の組織適合性抗原の違いがこれら免疫反応と生存に大きく関与することが本研究代表者と分担研究者のJMDP症例を用いた解析で次第に明らかになってきた。
本研究では、HLAとHLA以外の組織適合性抗原とその多型が移植免疫反応に与える影響を明らかにし、これら患者とドナーの組織学的な情報と臨床情報に基づき、適切なドナー選択の個別化アルゴリズム(基準)を構築する)。同時に、骨髄バンクと臍帯血バンクに適したドナースクリーニング法を検証し、正確で効率的なドナー選択手順を構築し、ドナーコーディネートの迅速化を計る。
研究方法
患者とドナーの同意が得られた検体を保存し、より精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)、In vitro解析)を用いるとともに、臨床データを用いた解析ではCox regression model等を用いた多変量解析を実施した。
結果と考察
患者とドナー検体を保存し、そのHLA遺伝子型の同定を行うとともに、H20年度には1)HLA座の違い、HLA遺伝子型の組み合わせの違いが白血病の再発に及ぼす影響(移植片対白血病効果:GVL)、2)HLAハプロタイプ自身が急性GVHDに及ぼす影響、3)日本人以外の非血縁者間造血細胞移植と日本人間の骨髄移植の成績を同一な国際データベースを用いて解析することにより、日本人間移植がより低率な急性GVHD頻度と良好な移植後生存を示すことを明らかにした。
結論
非血縁者間骨髄移植を受けた患者とドナーのHLA遺伝子型とその他の組織適合性抗原を精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)、In vitro解析)で解析することにより、GVHD、GVLに関与する組織適合性抗原を同定できた。これら知見はわが国における非血縁者間移植成績の向上をはかる上での基礎データとなっている。

公開日・更新日

公開日
2009-03-30
更新日
-