新興感染症の感染拡大時に必要な在宅医療提供体制についての研究

文献情報

文献番号
202106017A
報告書区分
総括
研究課題名
新興感染症の感染拡大時に必要な在宅医療提供体制についての研究
課題番号
21CA2017
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
武田 俊彦((一般社団法人)日本在宅ケアアライアンス)
研究分担者(所属機関)
  • 蘆野 吉和(日本在宅ケア アライアンス)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
  • 英 裕雄(医療法人社団 三育会 新宿ヒロクリニック)
  • 高山 義浩(沖縄県立中部病院感染症内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医療機能の逼迫時においても、自宅療養者等に対する健康観察や医療の提供が適切に行われ、さらに回復した入院患者について、退院後も必要な医療が在宅でも受けることができる体制を検討することにより、新型コロナウイルス感染症、さらには今後起こりうる 新興感染症に対する保健医療全体の対応能力を底上げすることを目的とする。
研究方法
以下の方法で、研究 を行った。
1. 第 6波までの対応の振り返り
1) インタビュー調査
2. 保健所調査
1)Web 調査
2) インタビュー調査
3. 在宅医療・ケア提供機関調査
1) Web 調査
2) インタビュー調査
4. 入院医療機関調査
1) Web 調査
2) インタビュー調査
(倫理面への配慮)
慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認を受けた (承認番
号 2021011220210112)
結果と考察
1)新興感染症拡大時の課題
○多岐にわたる保健所業務に伴うひっ迫が課題
コロナ感染拡大の初期から、保健所に求められる役割は多岐にわたった(積極的疫学調査、検査、入院・ 入所に係る調整等)一方、検査の目詰まりや発生届事務の停滞、自宅待機者の増加に伴う保健所からの自宅療養者への連絡の遅滞等の問題が顕在化した。
〇地域包括ケアシステムに立脚する有事対応の在り方の検討
‐病床は有限であり、感染が急拡大する局面では、自宅療養者の急増は避けられない。新興感染症拡大時に向けて、平時から自宅療養者のサポート体制について、検討や準備をしておく必要がある。
‐その地域で主に在宅医療を担っている機関が医師会等、職能団体に入会していない地域もあり、自治体・保健所・DMATなどが、在宅医療・ケアの窓口をどこにしたらいいのか定まらず困ったという声も多く挙がった。
‐自宅療養者の医療はもとより、生活支援も必要である。
〇医療と保健の役割分担
‐保健所職員による自宅療養者の健康観察、入院判断、入院調整は、質の担保、判断の妥当性、交渉の効率の点に課題があるという声が多く挙がった。
○都道府県と保健所設置市等の連携における課題
‐感染拡大時に迅速な情報共有、対応ができないなど、現状では保健所設置市(特に県庁所在地)と都道府県との間の連携、基礎自治体と都道府県の連携が十分でないことも課題である。また都道府県と県型保健所間における連携や市町村保健センターとの連携の実態や在り方についても改めて整理することが必要である。
○都道府県と保健所設置市、職能団体と連携した体制整備と人材育成
‐有事に強い組織を作るための人材育成・組織づくりが必要である。具体的には、保健所における保健師の確実な人材確保のみならず、保健所職員、自治体職員の中で、感染症の知識のみならず、健康危機発生時におけるマネジメントスキルや受援体制構築が可能なリーダーを養成するとともに、有事においてリーダーが指揮・命令できる組織づくりが必要である。
〇有事の組織体制確保
‐円滑な情報連携等が行われるよう、保健所設置市とも連携した都道府県を中心とする有事に向けた体制を平時から整備し、有事の際には即応体制が直ちに取れるようにしておく必要がある。
‐施行状況を見つつ必要に応じて、円滑な対応に向けて、都道府県知事から保健所設置市長・特別区長への指示・調整等の規定の必要性についても検討すべきである。
○ICT 環境整備と活用による即時的な感染情報共有が必要
‐保健所内のデータ収集に係るデジタル化を推進(同一県内や近隣保健所間での情報連携の推進を促す環境整備を含む)する必要がある。また、これらのデータ分析を行い、戦略に活用するための体制を、他部門からの応援も含め、整える必要がある。
〇自宅療養者の健康観察等アウトソーシングにあたっての課題
‐保健所長が考える自宅療養者の健康観察等アウトソーシングにあたってのバリアについては、「アウトソーシングする先がない」、「委託にあたっての関連業務が膨大」、「完全に委託できず、業務軽減・効率化に繋がらない」、「急変時対応などのルールや体制を整備することが先
決」、「感染者数・業務量の予測が困難」、「職能団体とのコミュニケーションが困難」の6点に集約された。

2)Good Practice 例
保健所、DMAT、県対策本部、医師会、医療機関や診療チームで中心的な役割を担われた方々に第6 波までの対応を振り返ってもらうことにより、各波における詳細の課題や実際の対応が整理された。
結論
この最新の動向調査において、これまでの取り組みの歴史的経過も含めて状況と課題の全体像をある程度明らかにすることができた。また、感染拡大の渦中にあって、保健健所と医療機関がどのような課題を感じ、どう行動していたかの状況把握は、今後、新興感染症拡大時の自宅療養者フォローアップ体制の構築に資する資料となると考える。

公開日・更新日

公開日
2023-04-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-04-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和3年夏時点の全国の保健所の対応状況や課題を把握するとともに、全国の新型コロナウイルス感染症に対する在宅医療および入院医療機関における最前線の医療提供の取り組みを把握した。また各地の先進的取り組みがさらに進化したことを踏まえ、改めて、令和3年度末における保健所、職能団体、DMAT、在宅医療最前線の最新の取り組み状況、また第1波からの対応および課題の変遷に関する把握を行った。この最新の動向調査において、これまでの取り組みの歴史的経過も含め状況と課題の全体像を明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
該当せず
ガイドライン等の開発
該当せず
その他行政的観点からの成果
感染拡大の渦中にあって保健所と医療機関がどのような課題を感じ、どう行動していたかの状況把握は、今後、新興感染症拡大時の自宅療養者フォローアップ体制の構築に資する資料となると考える。
その他のインパクト
 本研究で取得した質的・量的データを科学的手法を用い詳細に解析し、以下2本の論文にまとめた上、近日中に公衆衛生学会学術、および在宅医療連合学会学術誌に投稿予定である。
 1.「新興感染症の感染拡大時に必要な在宅医療提供体制確保のための要件~保健所長たちの見解と提言~」
 2.「有事における地域総力戦にするための提言~Covid19への対応から得た経験と知見による危機管理や平時からの備えの具体~」 

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-04-13
更新日
2023-06-06

収支報告書

文献番号
202106017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 172,587円
人件費・謝金 2,000,000円
旅費 74,926円
その他 4,152,487円
間接経費 1,600,000円
合計 8,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-04-13
更新日
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