新型コロナ感染症流行による糖尿病患者の生活様式・受診行動の変化が重症化に及ぼす影響の解析と今後の診療体制構築のための研究

文献情報

文献番号
202106015A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナ感染症流行による糖尿病患者の生活様式・受診行動の変化が重症化に及ぼす影響の解析と今後の診療体制構築のための研究
課題番号
21CA2015
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
植木 浩二郎(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大杉 満(国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
  • 杉山 雄大(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター医療政策研究室)
  • 坊内 良太郎(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 臨床情報研究室)
  • 後藤 温(横浜市立大学・学術院医学群大学院データサイエンス研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病のコントロール不良患者では新型コロナウイルス感染症死亡率が11%にも及ぶとされており(Cell Metab.2020)、本邦でも糖尿病は重症化のリスク因子とされている(厚労省ホームページ)。
本研究では、新型コロナウイルス感染症拡大下の糖尿病患者の行動変化と病勢の連関を明らかにすることで、新型コロナウイルス感染症のみならず新興感染症蔓延による有事の至適診療体制の基盤となる知見を集積し、来る医療崩壊のリスクを軽減する方策を提言するとともに、エビデンスに基づく国民への情報発信も目指す。患者の受診行動実態調査や、オンライン診療現況把握、将来への要望調査を含むため、疫病流行下または直後に調査を行うことが情報の鮮度を保つために重要であり、速やかな調査が必要であることから研究を行った。
研究方法
【コロナ禍における糖尿病患者の状況把握】
診療録直結型糖尿病データベースJ-DREAMSを用い2017年度、2018年度、2019年度、2020年度のデータより受診頻度、血糖コントロール、合併症、併発症の発症の推移を観察する
【受診控え・健診受診控えの影響把握】
2018年7月から2020年5月までのJMDCレセプトデータベースに登録された月次のレセプト情報を使用して、4595人(1型糖尿病)および123,686人(2型糖尿病)の糖尿病患者を対象として分析を行った。
【With Corona / Post Corona時代の適切な診療体制構築】
本研究は研究協力を承諾したJ-DREAMS参加施設および糖尿病専門クリニックに通院中の糖尿病患者のうち、同意取得後に新型コロナウィルス感染症流行前2019年、流行1年目の2020年、2年目の2021年における生活様式と流行期におけるオンライン診療に対する認識に関するアンケートを実施、被験者背景、身体所見、臨床情報(血液・尿検査)を取得した。
結果と考察
【1.コロナ禍における糖尿病患者の状況把握】
2020年の診療間隔は、2017から2019年の55日間に比べて、62日間と約7日間延長している。HbA1c、BMI、血圧に関しては、臨床的に意義があるか不明である小さな変化(HbA1cで0.1%の年間差、BMIも0.1 kg/m2の年間差、血圧で1 mmHg)が認められた。
【2. 受診控え・健診受診控えの影響把握】
2020年4月から5月にかけて、糖尿病患者における受診抑制と遠隔医療の利用がわずかな増加と関連していた。受診抑制数は、遠隔医療の利用数を上回っており、現状の保険診療体制では、糖尿病診療に関しては今回の疫病流行・緊急事態宣言などの行動抑制が課される状況下では、遠隔医療が十分には活用されていないことが推測された。
【3. With Corona / Post Corona時代の適切な診療体制構築】
新型コロナウィルス感染症流行前後(2019年と2020年の比較)において糖尿病患者2346名のHbA1cには有意な変化を認めなかった。体重、血圧、脂質代謝指標においても臨床的意義のある変化は認めなかった。飲酒や喫煙習慣のある患者の割合は漸減し、食習慣においては外食が激減、身体活動量の漸減傾向を認めた。オンライン診療の実施率は2.8%と低かったが、医療者においては、オンライン診療の経験の有無にかかわらず、今後の活用を希望するものが約6割を占めた。一方、患者においては、オンライン診療の経験の有無でその利用希望者の割合に大きな違いが見られた。オンライン診療への期待要因として、利便性の向上や感染リスクの低減が、不安要因としては診察や検査が実施できないこと、医療者・患者間の対話不足などが医療者、患者双方の上位を占めた。
結論
本研究により、糖尿病患者のコロナ禍における血糖マネージメントの実態およびWith Corona/Post Corona時代におけるオンライン診療の患者・医療者双方のニーズ、期待や不安の要因が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2023-02-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-02-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106015C

収支報告書

文献番号
202106015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,560,000円
(2)補助金確定額
14,560,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 399,687円
人件費・謝金 600,000円
旅費 1,332円
その他 10,198,981円
間接経費 3,360,000円
合計 14,560,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-02-08
更新日
-