助産所におけるBCPの策定の実態把握と作成指針の策定のための研究

文献情報

文献番号
202106013A
報告書区分
総括
研究課題名
助産所におけるBCPの策定の実態把握と作成指針の策定のための研究
課題番号
21CA2013
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
島田 真理恵(上智大学 総合人間科学部看護学科)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 久美子(東京都立大学大学院 人間健康科学研究科)
  • 岡本 美和子(日本体育大学 児童スポーツ教育学部)
  • 佐山 理絵(上智大学 総合人間科学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,208,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
助産所は、地域において不安を抱える妊産婦等への支援の担い手として、その役割の重要性が見直されている。今般のパンデミックの中でも妊産婦や乳幼児等に対して切れ目のない支援を提供しており、有事においても妊産婦の希望に応えるケアを安定的に継続して提供することが期待される。助産所の公益的役割を果たすためには、被災をしても重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)の策定が効果的とされ、各助産所においてその策定が必要であると考えられる。
しかし、助産所におけるBCPの策定についてどのような実態であるかが把握されていないこと、作成指針を作成するにあたって、助産所BCPが打ち出すべき基本方針、リスク要因の分析、優先業務に対する考え方などの情報は得られておらず、BCP作成指針を作成する際に検討すべき情報が得られていない状況であった。
このため本研究の目的は、助産所のBCP策定に関する実態調査を行い、その結果を基にした課題の整理と、各助産所のBCP策定にむけた策定指針の提案を行うことである。
研究方法
本研究は目的達成のため、以下3段階のステップを踏んだ。
研究1:助産所管理者を対象としたBCPに関する実態調査
助産所管理者を対象とした無記名自記式質問票を用いたオンライン調査を実施した  
研究2:助産所におけるBCP策定指針(ガイドライン)案妥当性検討のためのヒヤリング調査
上記実態調査の結果と既存の他職種のBCP等を参考に助産所におけるBCP策定のためのガイドライン(案)とBCPひな形(ガイドラインをもとに自助産所の状況に応じて記入すればBCP策定ができるもの)を作成した。そしてそれらを有識者6名に提示したうえで2回のヒヤリングを実施し、内容の修正・充実を図った。
研究3:助産所におけるBCP策定指針(ガイドライン)の作成
  研究1,2の結果をもとに研究班での討議によりBCP策定指針(ガイドライン)案を検討した。

結果と考察
研究1では、292件の助産所管理者から回答が得られた。その結果、約8割助産所でBCPが認知されておらず、BCPが策定されていなかった。しかし、何らかの災害対策は実施していること、新型コロナウィルス感染防止対応は十分実施されていることが明らかとなった。
 研究2においては、有識者への2回のヒヤリングで、ガイドライン案については概ね妥当との意見が得られた。しかし、BCPの重要性や目的および基本的考え方などをより明確に提示する必要性があることが明らかとなった。
研究3では、1,2の結果を活かしたBCP策定指針(ガイドライン)を作成することができた。
実態調査により、助産所は業務継続を図るために災害対策を講じ、活動していることが明らかとなった。しかし、管理者自身が自施設の計画を明確化することや従業員等と共有する状況には至っていないと考えられた。本研究で作成したBCP策定ガイドラインを参考に自施設のBCP策定することを推進していくことは、上記明らかとなった課題を解決し、助産所が地域で有事においてもその公益的役割を継続していくことに寄与すると考えられた。BCP策定指針(ガイドライン)は有識者ヒヤリングによって、より充実した指針を作成することができたと考える。
結論
 助産所のBCP策定に関する実態調査を行い、その結果を基にした課題の整理と、各助産所のBCP策定にむけた策定指針の提案を行うことを目的に研究を実施した。
・実態調査では、約8割%の助産所でBCPは認知されておらず、BCP策定がなされていなかった。しかし、何らかの災害対策は実施していた。
・助産所の実態に対応し、BCP策定の意義やBCP策定の手順や考え方を示した策定指針を作成した。
 今後、作成した策定指針を活用し、助産所がBCPを策定できるよう、研修会等を開催し、BCP策定を推進していくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
助産所のBCP策定状況および防災対策等の実態を明らかにし、それを踏まえた作成指針案を策定、さらに識者へのヒアリングで活用しやすい作成指針(ガイドライン)を策定できた。公共性の高い事業を展開している助産所が事業継続管理をし、有事に際しても事業継続を可能にするためにはBCP策定は不可欠であり、その策定を支援する指針を策定できたことは大きな意義があると考える。
臨床的観点からの成果
助産所のBCP作成指針を策定した。
この策定指針(ガイドライン)を参考に、各助産所が自施設のBCP策定することを容易にできるようにした。
ガイドライン等の開発
助産所のBCP作成指針(ガイドライン)を策定した。
冊子体は全国の助産所管理者に配布され、日本助産師会ホームページにも提示した。日本助産師会では、2022年度に
このガイドラインを活用して、各助産所が自施設のBCPを策定できるよう、研修会を開催した。
その他行政的観点からの成果
特記事項はない
その他のインパクト
日本助産師会ホームページに助産所のBCP作成指針(ガイドライン)とひな形(自施設の状況に応じて書き込みをすればBCPを作成することができる)を提示した。
また、日本助産師会機関紙(2022年11月)に本研究の概要を掲載、開業助産師を対象とした集会での講演(2022年11月)及び日本助産師学会(2023.5)での発表など周知活動を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ガイドライン、BCP作成のひな型のホームページ掲載1件、研修会の開催1件、助産所のBCP紹介講演1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
2023-06-06

収支報告書

文献番号
202106013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,760,000円
(2)補助金確定額
7,760,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 775,892円
人件費・謝金 1,413,590円
旅費 6,280円
その他 4,013,473円
間接経費 1,552,000円
合計 7,761,235円

備考

備考
消耗品等の購入は1235円を自己資金で賄った

公開日・更新日

公開日
2022-12-09
更新日
-