新型コロナウイルス感染症に対応する各国の医療提供体制の国際比較研究

文献情報

文献番号
202106011A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症に対応する各国の医療提供体制の国際比較研究
課題番号
21CA2011
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 武村 雪絵(東京大学 医学部附属病院)
  • 忽那 賢志(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、海外の医療提供体制が新型コロナウイルス感染症の拡大という局面にどのように対応したか、調査、分析し、我が国の今後の医療提供体制の構築に向けた提言を行うことを目的とした。
研究方法
調査対象国はアメリカ合衆国、フランス、ドイツ、イギリスの四か国とし、事前に作成した調査票に基づいて、各国の医療制度に精通した専門家に情報収集を依頼した。
結果と考察
(1) 流行状況: アメリカ合衆国、フランス、ドイツ、イギリスのいずれの国も何回かの流行を繰り返しており、感染者数については後半のピークの方が大きいにもかかわらず、死亡者数は前半よりも少なくなっていた。
(2) 新型コロナウイルス感染に関する情報システム: アメリカはeCR、イギリスはNHS digital、フランスはSI-DEP、ドイツヘッセン州はIVENAというように、臨床現場を起点とする情報システムを構築し、それを行政への報告と連動させることで、臨床的な対応と政策対応の調和を計っていた。
(3) 医療提供体制: いずれの国も検査機関、医療機関を起点として症状の重篤性に応じて患者の流れを制御している。この点は日本と同様である。ただし、日本では入院が必要な患者の入院調整を保健所が行うのに対し、他の国は通常の診療活動と同様、治療内容及び治療場所は、コンセンサスの得られたガイドラインによって臨床現場で決められ、その情報がリアルタイムで行政当局に標準化されたフォーマットで伝わることで国の対策に反映されるというように、臨床の流れと政策決定のための情報の流れがICTを活用して、効率的に統合されていた。我が国ではHER-SYSが電子カルテと連動していないために、医療現場の入力負荷が過大となり、結果として活用が進まないという状況が生じた。広島県で使用されたJ-SPEEDの仕組みを参考に、効率的で漏れのない陽性者のマネジメントシステムを構築すべきであろう。我が国と同様、4か国とも無症状者、軽症者については原則自宅での経過観察で、ITを活用したモニタリングや開業看護職によるモニタリングを行っており、適宜開業プライマリケア医師(一般医や家庭医)が外来や往診で対応する体制となっている。ただし、ドイツの家庭医の90%以上が、新型コロナウイルス感染症患者の対応を行ったというように、我が国に比較するとその対応キャパシティが大きいものになっている。
(4) サージキャパシティ: いずれの国も我が国と比較して、急性期病院の集約及び高機能化が行われており、人的にも病床的にも十分なサージキャパシティが確保されていた。医療者の労働時間にもともと余裕があったために、今回の健康危機管理時には各医療職が労働時間を伸ばすことで、人的資源が確保されていた。また、プライマリケアの対応力が大きいために、病院の負荷を下げることが可能になっていた。加えて、流行拡大時には不要不急の手術や入院を抑制することで、新型コロナ感染患者への対応量を増やしていた。
(5) 一般診療への影響: いずれの国も一般診療は抑制していた。ただし、アメリカ・カリフォルニア州は病床や人員の余裕を活かした入院診療の強化で対応し超過死亡が観察されていないのに対し、病床制約が強く、在宅での管理が多かったイギリスでは在宅での超過死亡が観察された。
結論
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツにおける新型コロナウイルス感染症に対応した医療提供体制について、既存資料及び関係者のインタビューによって調査を行った。
 いずれの国もプライマリケアの活用、ICT環境の整備、サージキャパシティの確保、健康危機管理時の人員配置の工夫等によって、医療崩壊にいたることを防いでいた。これらの国の取り組みは、我が国の今後の健康危機管理及び医療情報整備、救急医療提供体制の在り方を考える上で参考になると思われる。

公開日・更新日

公開日
2022-10-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツにおける新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制の概要を分析した結果から、我が国における健康危機管理の在り方(情報システム、救急医療提供体制、プライマリケア、サージキャパシティなど)を検討することが可能となる。この分析結果は第8次医療計画における感染症対策の立案の参考資料として活用が期待される。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
分析結果の概要は厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部のアドバイザリーボードに資料として提供予定である。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202106011Z